アート

藤城清治の影絵

この間の日曜日、NHK「日曜美術館」で影絵作家の藤城清治を特集していた。『「光と影の”又三郎”」藤城清治 89歳の挑戦・完結編』(前編の方は見ていない)。 昭和30年代生まれの私にとって、藤城清治の絵は幼少の頃の記憶と強く結び付いている。NHKの「みん…

インベカヲリ★さんとの対談がWEBスナイパーに掲載されました

写真集『やっぱ月帰るわ、私。』(赤々舎)発売記念 インベカヲリ★×大野左紀子 特別対談!! - WEBスナイパー 12月に行われた写真家・インベカヲリ★さんとの対談が、ようやく記事になりました。 内容は、昨年出たデビュー写真集『やっぱ月帰るわ、私。』(拙ブ…

イージーリスニングの虜、アーティストの麻薬

佐村河内騒動で考える:松浦晋也のL/D 例の「交響曲第1番」の感想、NHKの「お涙頂戴」番組作り、新垣隆氏の仕事など論じられていることが幾つかのテーマに渡る長いエントリだが、終わりの方に書かれていたことについて思ったことをメモ。 現代音楽の売れな…

『やっぱ月帰るわ、私。』 - インベカヲリ★写真集 -

若い女性が自分の写真を撮られたい時とは、どんな時だろうか。どんなふうに撮ってほしいと思うのだろうか。 自分が一番「輝いている」と思う時? 今の若さを記録しておきたいと思った時? 普段の自分より3割増くらいは美人に撮られたい? 女優のように撮ら…

”スピリチュアル”な日本の美術教育

日本の学校教育の中にも、スピリチュアル的な考え方は根深くある。宗教色は払拭されているとは言え、90年代後半からゆとり教育の中で言われた「生きる力」といった文科省の掲げるテーマの中には、「心」や「感性」を重視する精神が強く見られた。 ゆとり教育…

「やり方」を教えること

上のトークイベント告知記事を挙げてネットを巡回していたら、とても関連する内容の記事がブックマークを集めていた。 「好きに書きなさい」はタイミングによっては最悪。:島国大和のド畜生 読書感想文で、絵画で、自由研究で、基本的なやり方を教えず『自…

トークイベントのお知らせ

まだ3週間ほど先ですが‥‥。 大野左紀子 | トークイベント 「図工の時間は楽しかったですか?」 - 日本の美術教育 - 「自由」と「個性」から漏れるもの - 開催日付:2013年11月19日(火) 開催時間:19:00〜21:00 開催場所:川口市立映像・情報メディアセンタ…

アートとイラストの違いがないとしたら、アートをイラストと呼んでいいのだろうか?

それだと怒る人がいるんじゃないかな。主にアート方面に。 逆にイラストをアートと呼んで、「何でもアートです」ということにした方が”丸く”収まるのかもしれない。 でもその”丸さ”って何だろう。 アート、デザイン、イラスト(80年代の話) - Togetter 少し…

「公募展」をめぐって

茂木健一郎による「国立新美術館」と「公募展」批判 - Togetter 公募展をめぐるツイートあれこれ - Togetter 会田誠とパルコキノシタの公募団体に対するやりとり - Togetter 脳科学者の茂木健一郎氏が国立新美術館で開催されていた『アメリカン・ポップアー…

好きなアーティスト、嫌いなアーティスト

前の記事のUst発言起こしの部分で持ち出されている「美大生の好きなアーティスト、嫌いなアーティスト」というのを、自分の講義(名古屋芸術大学での「ジェンダー入門」)を受けている学生対象でやってみた。 講義本題に入る前に、出席票の裏に書いてもらう…

奈良美智とラッセンについてのUstream発言起こし

有名なアーティストが反応したことでまた「ラッセン」が賑わって‥‥と思ったらニュースになっていた。「ラッセンとファンが同じ」 奈良美智が関係者発言に怒りまくる:j-CASTニュース 「ラッセン」で検索して上位に出てきた記事を適当に繋ぎ合わせたような内…

粘土と言葉

学校で人体彫刻を学んでいた期間だから、だいたい16歳から20歳くらいの頃。塑像の心棒を作るのが好きじゃなかった。 小割り(3、4センチ角の角材)と番線をシュロ縄で括りながら組み立てるのだが、これで大丈夫と思って粘土をつけていくと、中の心棒に対し…

ラッセンは「宗教画家」であり「インサイダーアーティスト」

またラッセンかと言われそうだが、一つ前の記事「美術史は歴史修正主義のカタマリ」に、ブックマークコメントでツボにはまる補足説明が入ったので書いておきたい。 Midas ↓美術史家としての立場から補っくと「ラッセンが正統文脈の美術史見直しに入らなかっ…

美術史は歴史修正主義のカタマリ

ヤンキー、ニューエイジ、ラッセン(そしてアート‥‥) だんだん記憶が蘇ってきたので、トークイベント実況Togetterに拾われてない自分発言を、若干言葉を補いながらメモしておきます。 「歴史修正主義*1と言うと政治の論争になるのだけど、アートはむしろ歴…

ヤンキー、ニューエイジ、ラッセン(そしてアート‥‥)

8/29下北沢B&Bでのトークイベントにお越し下さった皆様、どうもありがとうございました。 満員のお客さん&著名な論者とのトークという緊張で、自分の喋りが時間に追われた時の講義のように早口(そしてところどころ日本語崩壊?)になっていた点を含め…

『ラッセンとは何だったのか?』トーク・イベントのお知らせ

※8/19アップの記事ですが、イベント開催日(8/29)までブログのトップに来るようにしておきます。 『ラッセンとは何だったのか? - 消費とアートを越えた「先」』 (フィルムアート社、原田裕規=編著/執筆者=斎藤環、北澤憲昭、大野左紀子、千葉雅也、大…

「現代アート」をめぐる溝(ブコメを眺めて思ったことなど)

先日書いた「うちらの世界」と文化の溝という記事のエントリーページを見たら、現代アートの世界なんて「うちらの世界」とどっこいどっこいかそれ以下ですよね、現代アートってあんなバカやこんな愚行が通る世界ですよね!的なコメントがいくつかあってスタ…

「うちらの世界」と文化の溝

ネットでバカを晒す若者の話から始まって、先週は「低学歴/高学歴」話が盛り上がっていた。バカを晒す行為を学歴の高低で語るのはどうか、そういうことは学歴の高い層の中にもあるという話もあった。つまり「うちらの世界」的なものは学歴を問わずあると。 …

菜穂子の油絵と1920〜30年代の美術 - ジブリ『風立ちぬ』より

前記事のコメント欄のやりとりから。 >私は美術大学なので、友人もみな菜穂子の絵にばっちり注目して「めっちゃフォービズムだった」などと話しているものですから 私も、ちょっとだけ映った菜穂子の絵、かなりアヴァンギャルドで気になりました。ブラマン…

子どもの「美術離れ」と大人の「信仰」

くらしナビ・学ぶ:美術離れ、食い止めたい 武蔵野美大、公立小中の出張授業 - 毎日jp(毎日新聞)より 子供の「美術離れ」が懸念(けねん)されている。学力低下が指摘される中、昨年度から完全実施された中学の学習指導要領で、美術や音楽の選択教科が廃止さ…

ラッセン・メモ - ラッセン以前の"ラッセンなるもの"

昨日「線を引く」話を書いたが、早速自分の鼎談発言と響き合いそうな言葉を見つけたのでメモ。 brainparasite art, 書籍 ラッセンの嘘臭い絵、自分の中では少年誌の未来絵図や軍艦断面図、大河原邦男のガンダムアート等の延長に見てるので、割と好きなんだよ…

ニッポンの夏、ラッセンの夏

タイトルはニッポンとラッセンで韻を踏んでみました(言わなくてもわかる)。 ラッセン論集『ラッセンとは何だったのか? - 消費とアートを越えた「先」』がいくつかのニュースサイトで取り上げられて急に話題になり出したと思っていたら、このタイミングで…

「ラッセン本」に寄稿しました

昨年夏に、東京の現代アートギャラリーCASHIで開催されて話題を呼んだ「ラッセン展」の関連本『ラッセンとは何だったのか? - 消費とアートを越えた「先」』(フィルムアート社)が、6月26日に刊行されます。ラッセンとは何だったのか? ─消費とアートを越え…

八代亜紀の絵を描いたのは「誰」か?

一昨日発売の『週刊文春』5月23日号に、”「『八代亜紀作』の絵は私が描きました」 大物演歌歌手の盗作疑惑を告発”という記事が3ページに渡って掲載されている。 ●リード 演歌の大御所・八代亜紀は「画家」としての顔も持つ。箱根には広大なアトリエがあり、…

藤田直哉さんへのお答え

(※ 長い追記あります。3/5、三つ目の追記加えました) 藤田直哉さんがtwitterで、先日の記事「自意識のセーフティネットを破って」について、疑問を呈しておられました。 大野左紀子さんの「自意識のセーフティネットを破って」、概ね頷くんだけど、やっぱ…

自意識のセーフティネットを破って

Midas 絵画とは「この私には世界はどう見えているか」を他人に知らせ共有するもの。そもそも「こんな私を見て!」の人が上手くなるわけがない(才能以前の問題)。 2013/02/25 http://b.hatena.ne.jp/Midas/20130225#bookmark-134087494 その通りだと思うので…

学歴と絵の才能はあまり関係ない(けど少しはある)

最近一部で話題になっていた件について。 やはり有村悠さんは15年前に東大に現役合格したという頭脳が足枷になっている。やらおんくらいの低知能なら、黙々と絵を描き続け、絵心がないながらも線だけは綺麗に引けただろう。東大に入れたのだからついでに絵…

旭日旗というキッチュと「私を傷つけたものを思い出させるな」

MoMA(ニューヨーク近代美術館)で開催中の『TOKYO 1955−1970:新しい前衛』展で、旭日旗のイメージが使われている横尾忠則の作品が展示され、同展の広告としても使用されていることに、在米韓国人団体が抗議している。 MoMAに展示された横尾忠則氏の作品、…

森美術館の回答についての雑感

会田誠展について - MORI ART MUSEUM 森美術館での会田誠展に抗議が起こった件について、先日、森美術館は美術館の観客である一般の人向けの文面を美術館サイトに出した。現代アート業界で一般向けの言葉としてよく使われている決まり文句に満ちた、可もなく…

退屈で倒錯した話 - 「森美術館・会田誠展への抗議」問題についての雑感

(↓多数のブクマの内容も興味深いので、関連記事のエントリーページを貼っておきます) はてなブックマーク - 森美術館問題|ポルノ被害と性暴力を考える会 はてなブックマーク - 森美術館への団体抗議文|ポルノ被害と性暴力を考える会 はてなブックマーク …