日常

凡人の文章は長く、才人の文章は短い

ラインの着信音で目が覚めた。新潟に単身赴任二年目の夫から。 「お前のブログも書くことが無くなってペースが落ちたな。内容も偏ってきたし、やっぱり俺がおらんとネタがないか?」 イラッ! このイラッ!は二つあって、一つは「そんなことわざわざ言うため…

きものと頭痛

きものを買い過ぎてお金がなくなり頭が痛い、という話ではないです。涼しくなってきものを着やすい季節になってきたのは嬉しいが、頭痛に悩まされているという日常雑記。 昨秋、偏頭痛と肩凝りが酷くなり、神経内科で頸椎の椎間板ヘルニアと診断されたので、…

「福山ショック」から思い出した「泥足にがえもん」への恋

「福山雅治が結婚したので、帰ります」 女性たちの福山ショック【20選】 人気の凄まじさを再認識しつつ、16、7年前、仕事先の大学の男子学生と話していて「ところで福山雅治ってそんなに人気あるの?」(←世間知らず)と言ったら即座に、「何言ってんですか…

きもの男子

久しぶりに行った仕事先の名古屋芸大で、きものを着ている男子を見かけた。 (駐車場から出る時にちらっと見ただけなので、足元はよく覚えてない。‥‥あ、皮は革と書くべきでした) 数年前も、いつもきものを着ている男子を、美術・デザイン学部の方で時々見…

岩下志麻漬けの日

たまには日記を書いてみる。 7時に起きると雨だった。「散歩は雨が止んでからね」と犬に話しかける。ゆで卵とトマトとチリメンジャコのチーズトーストとコーヒーの朝食。 昨日一旦書き終えた原稿に手を入れていると、履物屋さんから電話。頼んでおいた下駄…

夏にぴったりの薬膳カレー

一頃ほどではないがまだまだ暑くて、キッチンであまり長時間火を使いたくないので稲庭饂飩ばかり食べていて、さすがに飽きたなぁと思っていたら、親切な友人が自家製のカレーを冷凍してクール宅急便で送ってくれた。ありがたいことです。 本人の了解を得て、…

40年後の三人

台風が来て、ムシムシ暑くて、かと思えば今日は雨‥‥という変わりやすい天候の中で奇跡的に清々しく晴れた先日、高校時代の友人二人と日帰りで篠島に行った。 名鉄のフリー切符で「夏の篠島 はも&あわび(日帰り昼食8900円)」というのを利用。名鉄の最寄り…

スーパーで買い物するおじさん

一昔前、平日昼間のスーパーの買い物客と言えば、主婦だけだった。伊丹十三の映画『スーパーの女』(1996)に登場する客も、ほとんどそういうおばさんたち。新聞のチラシを見て、午前中に買い物に行く専業主婦だ。 今では、スーパーの買い物客は多種多様。私…

44年目の『鳥の歌』

クラシック音楽の愛好家だった生前の父は、若い頃にバイオリンを齧っていたが、それより好きな楽器はどうやらチェロであったらしい。女の子が生まれたらピアノ、男の子が生まれたらチェロを習わせたかったと(私が女の子だったのでピアノになった)。 もちろ…

私生活の記述が入試問題になる

昨年度の北海道大学に続いて、今年は中央大学の入試で拙文が問題文に採用されたらしく、日本著作権教育研究会というところから「著作物利用許諾のお願い」が来た。 昨年春に出た共著本『高学歴女子の貧困』(光文社新書)の中の、私の書いた章「「アート系高…

楽しいキモノ地獄

この一ヶ月余り、私のはてなブックマークの数はぐっと減っていた。以前はほとんど毎日していたのが数日に一回、それも少しだけ。ネットをやっていないのかというと、やっていた。毎日毎日3時間以上、キモノ中古市場に釘付けになっていた。 とうとう‥‥という…

竹島ファンタジー館、リニューアル後の印象

日中の気温が20度を越えた昨日、友人と3人で蒲郡に行ってきた。『天の丸』という温泉旅館の露天風呂に入り、そこで昼食を食べてから向かったのは、竹島ファンタジー館。 何千万個という貝で作られた変テコな造形物がずらずら並ぶこのマイナーな施設は、前は…

『風立ちぬ』と『小さいおうち』を観た母が語る戦中と戦後

今年78歳になる母が一人で暮らしている実家に、先日泊まってきた。いつも名古屋に用事で来たついでに寄ってバタバタと帰るので、たまにはゆっくりしていこうということで。 先月下旬にテレビ放映された、『風立ちぬ』と『小さいおうち』の話になった。 アニ…

おいしいものを作って食べる

昨年末、夫が赴任先の新潟から送ってくれた村上の塩引き鮭を輪切りにして冷凍しておいたのを、この正月に一人暮らしの母のところにも持っていった。だいぶ経ってから母と電話で喋っている時、その鮭をどうやって食べたかという話になった。 「最後の一切れは…

正月の会話

「久しぶりにおばさんの顔見たいって言って、昨日Sちゃんが来たの」 と、電話で母は言った。 Sちゃんは母の姪。東京の外資系企業のバリキャリ、35歳。私は彼女が子どもの頃に会ったっきりである。 弟のK君はとても大人しい子で、Sちゃんは逆に子どもの頃から…

タロと猫

散歩の途中で猫と目が合った。 逃げられた。 興味しんしん。 怒られた。 いたよ!猫、いたよ! また逃げられた。 タロ、もう諦めよう。 猫はおまえのこと、好きじゃない。

冬の蝶

新潟に単身赴任中の夫が先週の頭から、「ずっと強風で氷とみぞれが降ってる」「めちゃくちゃ寒い」「雪降ってる」「積もりそう」「とにかく寒い」と、何度もメールや電話をしてくるので、「そりゃ寒い地方に行ったんだから寒いのは当たり前でしょ」と思いつ…

中年女性の嵌っているもの

40〜50代の女性の嵌りやすい趣味と心理について少しまとめて書く必要があって、小手調べに大学の講義でアンケートを取ってみた。「皆さんのお母さんが今嵌っていること、夢中になっていることは何か、教えて下さい」と(回答は自由)。母親ではなくても親戚…

病院で

一晩ぐっすり寝ると大抵スッキリする軽めの頭痛が、この半月ずっと尾を引いていたので病院に行った。その時に少し気になったことを書く。 いつも行く病院ではなく、頭痛外来のある初めてのところ。受付で、症状についての細かい項目の並んだアンケート用紙に…

喫茶店の朝

数日の休みを取って単身赴任先から帰ってきていた夫を早朝、小牧空港まで送っていく途中。ちょっと早く出過ぎたので、どこか喫茶店に寄ってコーヒーでも飲もうということになった。 繊維が栄えていた頃に全国から女工さんが集まっていたせいで、昔から喫茶店…

河童と猪口

父は歳を取ってから骨董に嵌り、一時期ずいぶんたくさんの皿やガラス器などが家にあったと、後で母から聞いた。 ガレやドームの小品がいくつかあるのは見ていたが、実家に行ってもそんなコレクションの話は出なかったので、私は父の骨董狂いを長い間知らなか…

高架下

夕方、高架下の道を走っていたら、ゴシック教会の入り口があったので車を停めてスマホで撮った。 グレゴリオ聖歌が聴こえてきそう。 斜めから見たところ。東海北陸自動車道。愛知県一宮市の北あたり。

秋の日、消えていくもの

休みの日の朝、犬を車に乗せていつもの川辺に行った。川沿いに細長く延びる緑地公園。先週は満開だった彼岸花も終わり、木陰に入ると空気がひんやり冷たい。一人二人、散歩の人がいる。 川辺の砂地に降りた。10ヶ月になったこの犬にとっては、初めて踏む水辺…

彷徨う着物

6月末に他界した義母の大量の着物を、一ヶ月後に形見分けした話を以前書いた。 形見分け 最初、そんなに早く整理しなくても、少しずつゆっくりやっていけばいいのに‥‥とは思った。しかし義父はその時、一刻も早く義母の持ち物を片付けたがっており、私が衣…

母と「タキさん」

夢見られた親密圏・・・『小さいおうち』感想 DVDを観てから原作も読みたくなって、遅ればせながら文庫で読んだ。引き込まれて一気に読了。映画で省略されていた戦前の東京の風景、当時の市井の人々の意識や感情。生活の細部描写もさすがに映画より詳細。 こ…

「50過ぎたら楽になるわよ」の真実

40歳前後の頃、50代の女性に「50過ぎたら楽になるわよ」と言われたことがある。 彼女たちは私が持っていた一般人対象の美術系講座の生徒さんで、当時53〜54歳くらい。皆さんとても明るく楽しそうでエネルギッシュで、「私より全然元気だな〜」といつも感心し…

初盆

亡き父が葬式仏教が嫌いだったせいで、私は子供の頃からお盆の行事とほとんど無縁に過ごしてきた。祖父たちの墓に参ったのも何十年か前。家に仏壇もない。 今年は6月末に義母が亡くなり、初盆となった。朝から夫と義父宅に行く。買ったばかりの仏壇の横に、…

形見分け

「形見分け」というと思い浮ぶのは、小津安二郎監督『東京物語』の有名なシーンである。 年老いた母の葬儀が終わって、家族が食事をしている。長男と共に東京から来た長女志げが突然、実家暮らしの次女京子に形見分けの話を振る。 「ねえ京子、お母さんの夏…

葬式ビジネス

6月末に義母が急死し、仏式の葬儀を上げた。初七日を葬儀の日に行い、翌週から七日ごとにお坊さんが来てお経を上げている。夫の実家にいるのは義父一人なので、いつも私が同席する。 毎回、お経の本を手渡され、「はい、では11ページを開いて下さい。3回繰…

家族全員、一人暮らしになった

窓から首を出し、「じゃあね。また週末来るね」と努めて明るく言って車を出した。バックミラーに映った、チワワを抱いた泣きそうな顔の義父の姿。 先週の月曜日、義母が突然亡くなってから、バタバタのうちに9日が過ぎようとしている。 その日の明け方、い…