『酒と泪と男と女』

こないだテレビをつけたら、橋幸夫河島英五を歌っていた。
♪いいか〜男は〜生意気ぐらいが丁度いい
いいか〜男は〜大きい夢を持て〜
「ふん。「男」を「女」にして歌ってみれ」
と、私はどうでもいいツッコミを入れた。そしたら夫が言った。
「俺、男と女、ひっくり返して歌ってるよ」
なんでもカラオケスナックで、河島英五の『酒と泪と男と女』(これ嫌い)を、全部男女逆にして歌っているんだとか。


この歌は有名なので知っている人も多いと思うが、
「忘れてしまいたい事や どうしようもない寂しさに 包まれた時に男は 酒を飲む」のである。
そして同じようなシチュエーションで、
「女は 泪みせる」のである。
それを男女入れ替える。
そうすると、
「飲んで飲んで飲まれて飲んで 飲んで飲みつぶれて眠るまで飲」むのは女で、
「泣いて泣いてひとり泣いて 泣いて泣き疲れて眠るまで泣」くのは男になる。


そうですか‥‥私なんかとずっといたお陰で、そう歌いたくなったんですか。
「で、回りの人は笑ってんの?」
「いや、みんな納得して聴いとる。あの歌はな、反対にしてもきちんと物語ができるんだ」
へー、そう。


だがちょっと待て。それだと三番はどうなる。
男女ひっくり返すと、
「また一つ男の方が偉く思えてきた また一つ女のずるさが見えてきた」
なんだ、そういうことを言いたかったのか。
しかし次の歌詞をひっくり返すと、
「俺は女 泣き通すなんてできないよ」
「俺は女 泪は見せられないもの」
‥‥‥‥へ?     
あんた、「女」だったの。
じゃなくて、歌っているのは一人称に「俺」を使う男らしい女という設定?
じゃあ、それを男が歌うというのはどういうことになるわけ?


といったことを詳しく聞こうと思ったら、夫は既にチャンネルを変えてBSの動物の番組を見ており、
「オスのアフリカ象のちんちんはな、勃起した時後ろから見ると足が3本あるように見えるくらいでかいんだ。俺は見た」
とか
アフリカ象インド象と違ってメスにも牙がある。雌雄をどこで見分けるか知ってるか。横から見た額の角度だ」
とか
「象のおっぱいは前足のすぐ脇にある。人間と同じだ」
とか話し出したので、それきり聞きそびれた。
ややこしいジェンダーの話になるのを察知して話題を即物的な方向にずらしたのか、人にレクチャーしたいほどアフリカ象が好きでたまらないのかは、わからない。