「私って猫系?」

猫というセルフイメージ

このブログにコメントを下さった人のハンドルネームを、これまで見ていて気がついたことだが、猫(ネコ、ねこ、neko)のつく人の割合が比較的多い。それもみんな女性だ。
猫はもっとも身近な動物だから、猫好きも多いということなんだろうか。


犬も身近な動物だが、ハンドルネームに使っている人は猫よりずっと少ないように思う。「犬畜生」という言葉があったり、「管理職の犬」「権力の犬」などあまりいいイメージで使われないので、避けられがちなのかもしれない。
一方、猫は昔から高貴な動物とされている。化けると怖いけど。
ブログの自己紹介の枠に、猫の写真とかイラストを載せている人もよくいる。それも相対的に女性が多いように思う。
写真の場合は、たぶん飼い猫だろう。猫好きな人の猫への愛情の深さというのは相当なものらしいので、ブログに愛猫の写真を載せたいという気持ちはわからないでもない。
それに、可愛い猫の写真やイラストがトップにあると、来た人が和める気がするし。猫好きなこのブログ主は悪い人じゃないという印象も作れるし。ブログ主が若い女性なら、この子猫みたいな感じの可愛い女の子かな?と錯覚してくれる人もいるかもしれないし。
いかん、意地悪な見方になってきた。


私が特別猫という動物に執着がないからかもしれないが、自分を猫になぞらえるのは、いやなぞらえていると思われるのは抵抗がある。
第一猫には、しなやかで気まぐれで自由でわがままでミステリアスで‥‥という魅力的なイメージがつきまとっている。それと自分を何の屈託もなく結びつけることができない。
そういう自意識過剰な性格のせいか、自己イメージに猫キャラを使う人の多さに、その深層心理をいろいろ深読みしたくなったのであった。
ただ猫キャラじゃなくて犬だったらいいかと言うとそうでもないので、猫をHNに使っている方に嫌みを言いたいのではないことは、了解して頂きたい。


単に猫好きで、HNやブログの写真に猫を使うのは別にいい。というか私が文句つけられるようなことではない。
しかし、「私って猫っぽいってよく言われるの」と言う女は嫌いである。そういうセリフ、時々耳にしませんか。特に若い女子が猫撫で声で言うのだが。
「私、猫系だねって言われる」
「猫みたいな女だって言われたことがある」
「私って動物にたとえると、やっぱり猫?」
うるさいな、それがどうした。このサンマの食べさしやるからあっち行け、シッシッ。


もっとも私が直接言われたことはほとんどない。喫茶店の隣のテーブルなどから耳に入ってくるだけだ。
猫に似てるったって、ヒゲが生えてるとか塀から飛び降りられるとかいうことではもちろんない。猫のようにしなやかで気まぐれで自由でわがままでミステリアス、つまり小悪魔的なイメージが自分にはある、ということを言いたいのである。
つまり「私って猫っぽいってよく言われるの」=「私って小悪魔系」。
態度が小悪魔なだけでなく、「猫系」の顔=美人顔ということも含意している。


だが自分で「私は猫系(小悪魔)」と言うのはやや躊躇いがあるので、必ず人に「言われる」という間接的な言い方になる。そして相手(多くは男)に暗に同意を求める。そこで、
「いや、君はどっちかと言うと犬系なんじゃない?」
と正直に所感を述べれば、たちまち不機嫌になる。
「猫って、猫ひろしのことか」
なんて言おうものなら、口を訊いてくれなくなる。


犬という動物は、活動的で人なつっこく単純で飼い主に忠実なイメージだ。猫に比べて「ニュアンス」とか「湿度」というものがない。野球部のマネージャーとかだったらいいかもしれないが、「女」として考えるとサバサバし過ぎな感じ。
「君は犬系」と言われることは、「女として見れない」ということじゃん‥‥猫系を自認する女はそう解釈する。
人間と言われるより、猫と言われた方がいい。そのあたりまで思っている。

猫を売って犬を生きる

猫系を自認する女が、猫好きかというとそういうわけでもないと思う。
だが、ノラの子猫を見かけたりすると「きゃーかわいいー」と人一倍デカい声を出し、駆け寄って抱き上げる。そして「ミイちゃんのママはどこでちゅか?」と赤ちゃん言葉で語りかける(勝手に名前をつけて)。
可愛い子猫を抱きしめた自分は、可愛く見えるであろうことを計算しているので、男の前以外ではやらない。


その他、猫系を自認する女の特徴を思いつくままあげてみる。
●自分の名前をひらがなで書く。
●浴衣を着た時は必要以上に後れ毛を出す。
●唇は常にグロスたっぷり。
●質問に答えず微笑むのをセクシーだと思っている。
●寝る時は男用のYシャツを着る。
●いまだに長袖から指先だけ出すファッション。
●いまだに髪を掻きあげるのが「いい女」だと思っている。
●チラ見せ下着をコレクションしている。
●約束の時間には必ず20分以上遅れる(ことにしている)。
●困った顔と怒った顔が得意(毎日鏡の前で練習)。
●眼鏡を鼻までずらして上目遣い。
●テーブルの下で足で悪戯。
●「ちょっと旅に出るかも」が口癖。
●年下男の前ではいきなり大人の女を気取り出す。
●年上男の前では「優香」になる。
●食べ物の好き嫌いが多い。
●携帯にはすぐ出ない。
●男の前では異常に酔いが早い。
●男の前で意味不明の独り言を言う。
●突然男の家を訪問し「来ちゃった」と言う。
●忙しい時に突然「海が見たい」と言い出す。
●デート中に断りもなくかくれんぼをする。
●読みもしないのに谷崎潤一郎の文庫本を持ち歩く。


つまり自分が猫系だと思っている女とは、勘違いした媚び女。私の勝手なイメージであるが。
この手のキャラクターを自覚的にやって笑いをとるまでになったのがさとう珠緒で、まだ自覚の足りないのが優香だ。
元祖はもちろん裕木奈江。と言うか裕木奈江の演じた女性。ほわんとした大人しそうな顔にストレートロングヘアで、いつも長袖から指だけ出して、ある種の男性の庇護欲を掻き立てるタイプだ。裕木奈江は、女から見ると彼氏を寝取られそうな油断ならないというイメージを付与されてしまい、これでもかというほど女性週刊誌で叩かれていた。そういう記事を読者が読みたがったのだろう。
こういうちょっと古臭い「子猫ちゃん」はもはやおじさん好みであって、若い男はあまり興味を持たないのではないかと思う。なんか世話が焼けそうだし疲れそうだし。
見かけは猫っぽくて可愛く、中身はわりとサッパリしてそうというのが、エビちゃんみたいな女にも男にもモテる女子。どこから見ても子猫タイプに惹かれるようになったら、おじさんということだ。


中身が子猫のままで歳を食った女となると、これまた厄介である。もうどこの産廃処理場に持ってっても引き取ってくれないくらい、厄介。
‥‥‥しかしここで、具体的な事例が思いつかないので困った。
芸能人で考えるとたとえば、黒木瞳松田聖子杉本彩叶姉妹も、それぞれの位相で猫っぽいイメージを持ってはいるが、中身は犬に思える。猫は芸として使っているだけで、言わば猫を売って犬を生きている。仕事している以上そうならざるを得ないだろう。


そういうわけで、中身が子猫のまま歳を食った産廃女とは、ずっと親元にいて花嫁修業もう13年目くらいの、老けた名古屋嬢あたりが相応しいと思う。
子猫をやるのも20歳までだ。