「ねぇ、どうして?」の子ども

娘にある言葉を教えた話 - 深く考えないで捨てるように書く


子どもというのはどこで覚えてくるのか、「あっそれ人前で言わないでー」って言葉を平気で大声で口にして、大人をハラハラさせるという話。コメント欄も含めて面白い。
ただ私には子どもがいないので、そういうハラハラは体験していない。


母の話によれば、私が初めて男性の性器を「発見」したのは、幼稚園年少の時だという。父とお風呂に入っていた時、3歳の私は突然父の股間を指さして叫んだ。
「おいもちゃん! パパ、おいもちゃんがある!」
ちょうど、園外保育で芋掘りに行った後のことだった。
「どうしてパパにはおいもちゃんがあるの? どうしてチャキちゃん(自分のこと)にはないの?」
ちょうど「どうして病」も始まった頃だった。
「サキちゃんは女の子だからないの。こらこら、おもちゃにしてはいかん」
風呂の外で私の着替えの用意をしながら、母は笑いをこらえるのに必死だったという。
まあ3歳からおちんちんをおもちゃにするようでは、先が思いやられますわな。


これは"無邪気な話"で済むのだが、自分の記憶としてはちっとも無邪気じゃない話もある。小学校4年くらいの時のことだった。
何かの親戚の集まりで、たくさんの人が居間で談笑しており、その輪の中に私もいた。そこでどういう話がきっかけだったか忘れたが、私は従兄弟の一人(といっても一回り以上年上)に、「男の人ってどうしておちんちんがついてるの?」と聞いた。従兄弟は「いやぁ、弱ったなあ」と笑った。周囲の大人も笑った。
私は自分の質問がウケたことに気を良くして、「ねぇ、どうして? 教えてよ。知ってるでしょ?」とまた訊いた。伯母の一人が「マーちゃん(従兄弟のこと)赤くなってるわ」とからかい、伯父の一人が「サキちゃん、なかなかのもんだね」と言い、また皆がどっと笑った。私は気分が高揚していた。


なぜ男の人におちんちんがあるのか。それは何に使うものなのか(排泄以外で)。そういうことを、当時の私は既になんとなく知っていた。セックスという言葉も知っていた。そして、それはあまり人前で堂々と話すことではないらしいということも、わかっていた。それを訊くと、オトナはちょっと困るものなんだ‥‥。
私は大人達の前で「大人を困らせる率直な質問をする子ども」を演じていた。みんなが子どもの私に注目している。私の質問に誰も答えられず、笑ってごまかしている。お父さんまで顔を真っ赤にして笑っている。ああいい気分。
まだしつこく食い下がる私に、父がとうとう「サキコ、まあそのくらいにしとけ」と言った。
そうか、これ以上言うと場がシラけるんだ。じゃやめよう。
「あー、まいったまいった。サキちゃんには負けた」と従兄弟は言った。私は勝ち誇った気分になっていた。


今思い出しても、顔から火が出るほど恥ずかしい。


子どもというのは、無邪気を装いながら大人を試し、勝手に勝った気分になるものなんですね。