「おまえに理由など説明してやる必要はない」

定期的に話題になるらしい、はてなブックマークコメントの話。
はてブコメで問題なのは「偉そう」ではなくて「正しいと思ってる」ことではないか(追記あり)- しあわせのかたち


コメント欄のsho_taさんの言葉を借りれば、「「(誰かが誰かの書き込みを)偉そうだ、と感じるのは、無根拠な書き込みの無根拠さ具合ではないか?」という話」である。ここで問題にされているのは、もちろんネガコメと呼ばれるようなもの。それも否定的な言葉やネガティブな印象を記しただけの、その理由(根拠)を示していないもの(追記:あるいはそう感じられるもの)
そういうのは確かにあるなあ‥‥私ももらったことがある。


大した理由も示さずネガティブなことを言う人を、人は「偉そうだ」と感じる。
偉そうなことをしても許されるのは、よほどその人が「偉い人」の場合である。
たとえば昔は、家の中ではお父さんが絶対的に「正しく」「偉い人」だったので、お父さんが「ダメだ」と言ったら理由もクソもなくダメだった。「なんで?」なんて問うことすらダメだったりした。確固とした上下関係があったから、それがまかり通っていた。
権力関係の「上」に立つ側は、「下」に対して、「おまえに理由など説明してやる必要はない」という態度を取れるのだ。
今は「なんで数学なんか勉強しなきゃいけないの?」という問いに、親も説得的な答えを求められるが。


私が仕事に行っている大学では、成績評価表と同時に不可の理由をつけて出すことになっている。不可になった学生から「なんで?」という質問があるからだそうだ。「不可」と言われても納得できない、理由が知りたいと(私はレポートを課しているので、こういう分析が足りない、論旨が途中からずれている、などということを書く。一人あたりほぼ100字以内で収まる)。
教師と生徒という権力関係でさえ、今はそうなっているのである。
いわんや、そんなものはないはずのブログとブコメにおいてをや。


つまり、はてブで理由のはっきりしないネガティブな感想(「つまらない」とか「くだらない」とか)で終わらせるということは、本人の意図がどうであれ、一方的に「上」に立って「おまえに理由など説明してやる必要はない」という態度を取っているような印象を与えることになる。
それを「偉そうな。何様のつもりか」と感じるのは、まあ普通だと思う。
こういう人は、コメント欄でもたまにいる。意見や批判は書くが、逆に質問されたりつっこまれたりするとスルーする人。よほど無作法な質問やつっこみでない限り、わからないなら「わからない」「それについては保留」など一言断りを残すのが礼儀だと思うが、この手の人は「おまえに理由など説明してやる必要はない」と思っている「偉い人」なのだろう。



冒頭の記事への、id:feather_angelさんのコメントから引用。

ネガコメイクナイと言っている人は、正直な話「根拠がない」とかそんな小難しいこと考えてネガコメイクナイって言ってないと思います。自分のエントリを否定されたおt思ってむかついてると思いますよ。
根拠まで考える人はネガコメイクナイとは言わないんじゃないでしょうか?


「根拠がない」というのは、(そうした言葉で認識されていなくても)そのネガコメを読んで「なんで?」と感じることの中に既にあるので、別に「小難しいこと」でもないとは思う。せっかく書いた記事につけられたネガティブなブコメを読んで、ただむかつくだけで、「どうしてこんなことを書いたのか?」と少しも思わないようなブロガーというのを、私は想像できない。
ただ、そもそも「否定された」と思った時点で、まずむかつく人は結構いるのでは?という話ならわかる。むかつくから、ネガティブなことは書いてほしくない。根拠のあるなしに関わらず、共感コメントは読みたいが批判は読みたくない。だから「ネガコメイクナイ」と‥‥‥? 
どういう人がどういう理由で「ネガコメイクナイ」と言っているのかよく知らないが、もし上の理由なら、ブクマを一切見ないか記事を公開しなければいい。


ネガコメ対処法については、「スルー力」が大事という意見も時々見る。そうかもしれない。が、その人の他のブコメやブログを読んで、ちゃんと応答してくれそうな人だと判断できたら、IDコールで訊いてみてもいいと思う。
それもやりにくいとかめんどくさいという人は、自尊心を守る方法として、「つまらない」と書かれたら、この面白さがわからんのかバカ(笑)、くらいの尊大な気持ちでいたらどうか。どうせ「つまらない」根拠をきちんと示せないだろバカ(笑)と。「おまえに理由など説明してやる必要はない」という態度の人間に、何と言われようと知ったことかと。
「何が言いたいのかわからない」には、文章読めないのかバカ(笑)。「一面的な見方では?」。だから面白いんじゃないかバカ(笑)。「長過ぎて読めない」。だからバカになるんだよバカ(笑)。


と書くと、まるで私がいつもそう思っているみたいだが、思うことはたまにある。いちいちむかついたり凹んだりするくらいなら、心の中で笑ってやり過ごした方がいくらかマシだ。
自分のスタンスや価値観がある程度はっきりしていれば、耳を傾けるべき批判とそうでないものは、自ずと見えてくる。



●追記
関連記事を見てみると、「ネガコメ」の捉え方に幅があるようだ。
批判、つっこみといったものすべてをネガコメとしている人もいれば、揶揄、中傷的なものをネガコメとしている人もいれば、否定的印象だけを書いて理由がわからないものをネガコメとしている人もいるような(ここでは3番目)。
揶揄、中傷は論外として、私個人は、批判、つっこみのすべてをネガコメとすることには違和感がある。自分がそういうブコメから学ぶこともあるから、それを単に「ネガ」とは言いたくない。ポジな感じに向けた建設的批判も、中にはある。
ただ同じブコメでも「耳が痛い」「なるほど、そうかー」と思える人と、否定されたとしか感じず不快になるだけの人と、受け取り手によって違ってくるのが難しいところかと思う。