雑誌と取材観察記

文春記事とファン

明治書院の宣伝部の人から送られてきたファクスを見たら、池袋リブロ本店ジャンル別週間ベストセラー(アート)で、11位(2/21~27)から3位(2/28~3/7)に昇格してました。
マジですか。
本の中で自分の大学時代について、(池袋に住んでいて)「西武美術館とアールヴィヴァンとリブロが参考書だった」と書きましたが、それが微妙に関係しているとかないですか。*1
ちなみに1位は『太王四神記公式メイキングBOOKvol.3』、2位は『永遠の故郷 夜』でした。


さて、右サイドの「最近のコメント」を見ていらした人は気づいたと思いますが、こちらの記事、及び先日取材を受けた週刊文春(昨日発売の3月20日号)の記事が、「嵐」の大野君のファンのはてなダイアリーで言及されたことで、おそらくそこ経由でファンの方々からのコメントが相次いでおります。はてなは広いですね。「村」なんてほんの一部。


文春の記事は「THIS WEEK」の中の「アート」の項目で、「嵐・大野智のアートはどこまで通用するか? 専門家はこう見た」というタイトルです。
やはりここまで話題になりますと、「実際アート作品としてはどういう評価になるんだろ?」と思う人は巷に少なからずいるでしょうし、記者さんもそう思った人の一人だと思われます。
私は大野君の作品は直接は見てませんので、『アーティスト症候群』の中の「芸能人アーティスト」の章に書いたようなことをかいつまんで話したのですが、あとのお二人(ギャラリストの小山登美夫氏と現代美術ジャーナリストの山口裕美氏)は個展を見たらしく、アートプロパーの意見としては無難な感じのコメントでした。
記事では個展を見たファンの声を紹介しつつ、「ジャニーズという宿命の中で生きる彼にとってはこれでいいのだ。」と、これまたそれが妥当な落としどころでしょうねというまとめ方でした。


しかし前述のファンの方の記事とコメント欄自分のところのコメント欄を読んでいて、正直なところ私はなんだかうらやましくなりました。いいなあ、ここまで夢中になって応援できる対象があって。熱いなあ。ピュアだなあ。これが「ファン」というものだよなあ‥‥。皮肉でも何でもありません。
芸能人の情報に関して私達は、ほとんどメディアを通して知るのであり、かりに本人から直接メッセージを聞いたとしても、それが本心なのか何らかのフィルターがかかっているのか100%知ることは、少なくともその時点ではできないでしょう。本人を「信じる」ことはできますが、それは「知る」のとは違います。
でもファンの立場としては、誰が何と言おうと「信じる」で良いのです。「信じる者」は強いです。


それにしてもこちらのさゆりさんのコメントの中の
>本人はストレス発散でやっていた事みたいで、注目されて(事務所が商売にしはじめて)からは釣りに気持ちが移っているようですし。
を読んだ時、一瞬「釣り」が「フィッシング」だとは気づかず、「個展は釣りだったということにしようってふうに、気持ちが移っているのか。恐ろしい子!」と思った私は、相当心が汚れています。

「プ、プレジデント」ですか?

話は変わって、昨日受けた二つの取材について。雑誌に取材されるという体験自体が、自分としてはもの珍しい(アーティストの頃は新聞しかありません)ので、記録しておきます。
だらだらと長いので、本を読まれた方でそういうことに興味のある方しか面白くないかもしれないことを、前もってお断りして。


一つは『プレジデントFamily』という、あのプレジデント社の「お父さんのための子育て応援雑誌」です。今出ている4月号の特集は、「灘、桜蔭、筑駒、開成 --- 合格者の愛読書 頭のいい子の本棚拝見!学ぶ意欲に目覚める150冊」。
えーと‥‥非常に身も蓋もなく言うと、子どもを勝ち組エリートに押し込みたい教育パパ(とママ)のための雑誌でしょうか。何と言ってもあのプレジデント社ですから。結構売れているらしいです。
「子供を一人前にする旅行計画」「東大合格の基礎が身につく小学生にいい教材」「中学入学準備で見落としがちなこと」etc。「休日遊び場ガイド」で秋葉原が特集されていました(読者の中にはオタク親子もいるでしょう)。135ページオールカラー。金がかかってる感じです。


で、「子どもがアーティストになりたいと言った時、親はどう対応したらいいのか?」という、私にとっては思いがけない観点で何か喋らなくてはならないことになってしまいました(思いがけないと言えば、「プレジデント」からの取材申し込み自体思いがけなさ過ぎます)。
こういう取材が来たのは、本で、自分がローティーンの頃に美術を志して以降、受験やアーティストの生活、やめるまでの経緯を書いたためです。
まあ美術なんか志すということはとりあえず貧乏を覚悟するということなんですが‥‥、そんなことを勝ち組エリート志向の親が易々と容認するのかどうか疑問ではあるものの‥‥、どんなに反対してもやる奴はやりますし‥‥、かといって過剰に期待をかけるのも禁物で‥‥。
4月18日発売の雑誌の「新刊紹介 著者からの手紙」という後ろの方のページに載りますので、興味のある方はご覧下さい。


ちなみに「アーティストやクリエイターに憧れる若者が増えているとすると、その原因は何でしょうか?」とか「アーティストと職人の違いって、一言で言うと何ですか?」とか「アーティストをやめた理由を、もう一度わかりやすく説明してもらえますか?」というような質問もあり、なかなか面白いやりとりをさせて頂きました。「プレジデント」と聞いて身構えてましたが、取材の雰囲気は思っていた以上に良かったです。
主にツッコミを担当されたのは編集部の方ではなくフリーライター(たぶん)の方でしたが、「30代後半でも売れない劇団活動をやっている人などが身近にいる。仕事をやめたいという人も。自分もこの歳になると、いろいろ思うところはある」といったお話が印象的でした。
出張先の関西方面から名古屋に来て私の取材を済まされたカメラマンを含む取材班のお三方は、その足で能登へと出発されました。なんでも加賀屋という有名な旅館があって、そこのおかみに「気だてのいい子に育てるには何を気をつけたら良いか?」というインタビューをしに行くのだそうです。ご苦労様です‥‥。

芸能記者の人の芸能記者らしさ

もう一つは『週刊女性』(主婦と生活社)です。「芸能人アーティスト」について。
「またそこかよ!」って、芸能週刊誌としてはそこしかありませんので。本を紹介して下さるのであれば、出ないわけにはいきません(前の本の時、チラシと本をもって名古屋中の書店を著者営業で回ったのに比べれば、取材されるのはずっとラクです)。
「プレジデント」の人達は40歳前後の感じでしたが、こちらの記者さんは比較的若い方でした。しかし普段芸能人にインタビューしている人は、やはりこうした今風のイケメンなのでしょうか。その方が女優さんやアイドルが気持ち良くインタビューに応じてくれるということでしょうか? 私、芸能記者というとワイドショーでコメントしているオッサン達しか知りません。梨元勝とか(古‥‥)。
などとしょうもないことを考えながら、「プレジデント」の取材でお昼前に使ったばかりのホテルのカフェルームにまた行ったら、満員です。しかたなく別のカフェに移動。


記者さんは、最近の芸能人のアート活動の資料持参で、本のページにはいくつも付箋とマーカーが。当然でしょうが準備万端という感じでした。「嵐」の大野君を初め、「芸能人アーティスト」の章で扱った一人一人について細かく意見を訊かれ、いつのまにか軽く一時間半を超えていました。訊かれてないことまであれこれと喋ったので、まとめるのが大変かと思います。
来週火曜発売の号だそうです。見開き2ページの扱い。この記事で他に取材した人はいるのか訊いたら、いなくて少しビビりました。私のような者がいきなり女性週刊誌に単独見開きで出るなどという暴挙は、世間的に許されるものなんでしょうか。非常に不安です。まあ記事の「主役」は芸能人なのでいいですが。


(本のあの章を読んで)「芸能人アーティストについて、みんながなんとなく感じているようなことだと思った」というのが記事をおこす動機だそうですが、『週刊女性』の読者の中にも私がぶった切った芸能人のファンはいるかもしれないです。いやきっといます。
「抗議の電話が来たらどうするんですか」「そこはまぁうまく対応しますので」。そりゃそうだわな。非常にバカバカしい質問をしてしまいました。
というより、抗議は『週刊女性』より本の版元の明治書院に来るのでは。いやそっちよりココに直接来るのでは。怒り狂ったフミヤや鶴太郎のファンとかが。どちらかというとスルーできない体質の私ですが‥‥たぶん放置します。



二誌とも写真が載ります。『プレジデントFamily』は、一目見て「あ、アート関係の話だな」とわかる背景が欲しいということで、急遽近くにあるトライデントデザイン専門学校(仕事で行ってます)のアトリエを使わせてもらいました。最初自宅のアトリエ(今、半分倉庫状態)まで来て下さるということでしたが、それではあまりに「(元)アーティスト然」として写ってしまいそうですし遠いですしお断りしました。
週刊女性』の方は駅ビルの中です。インタビュー記事は相手が喋っているところを撮るのが基本らしいですが、取材が決まったのがぎりぎりだったようで、同行カメラマンはおらず記者さんが代行。さらにその喫茶店では席の関係上、周囲の人が写りこんでしまうので、適当な場所探しに若干苦労しました。
細かいことですが、媒体も発売時期も違うのに、被写体がまったく同じ服というのが個人的にはやや納得いきません。しかも夕方撮られた写真の方は、昼に比べて顔が明らかにヘタっています。芸能人でもない一般人のおばさんのくせに何を気にしているんですか。いや気にします。一般人のおばさんだからこそ。
でも『プレジデントFamily』と『週刊女性』の読者層は、ほとんど重ならないでしょう。根拠はありませんがなんとなくそう思います。


それと、インタビュアーというのは、ただ次々と質問を繰り出すだけかと思っていたのですが、インタビュアー自身の意見やエピソードなども、話題と関連するところでたまに質問に絡めたりするものなんですね。いやよく知りませんしそれぞれのスタイルがあるのでしょうが、今回はどちらもそうでした。
たぶんその方が、一方的に訊くよりざっくばらんな感じになって、私のような素人は喋りやすいだろうということかと思います。こういう時ちゃんと対策を立て決めゼリフも用意していく人もいるのかもしれませんが、私はわりと出たとこ勝負です。それが吉と出たかどうかは、記事を見るまでわかりませんが。

*1:3/21 編集の人の話「池袋リブロの書店員さんから「その当時パルコにあったのは、三省堂では?」とのご質問が」。うわあ、そうだったかもしんない! 大学卒業後も展覧会だ何だかんだで頻繁に上京してたので、その時にリブロに通っていたのが、在学中だったと錯覚していた可能性があります。まあリブロが参考書だったことに変わりはないですが、「時代考証」が間違っていたという。思い込みというのは怖いものですね。