サバイバル犬とエスパー猫

災害時にペットをどうやって守るか、どんな形で一緒に避難するか、はぐれたらどうするか。
全国の愛犬家や愛猫家の人々と同じく、この震災で私もそのことを何度か考えた。
と言っても、首輪に名札をつける(名前と私の連絡先)とか、5日分くらいの餌と水と猫のトイレ代わりに新聞紙(細かく割いてほぐしてダンボール箱に敷く)を避難所生活用に用意しておく、くらいしか思いつくことはない。できる限り、犬猫と離ればなれにならないようにしたいと思う。


避難所でペットと一緒にいる人々の写真を見ると、人間がペットを守っているのと同時に、ペットも何らかのかたちで人間を守っているのだろうと思える。
ペットと共に No1 - こだわり写真館 - MSN産経フォト
ペットと共に No2 - こだわり写真館 - MSN産経フォト


ちょっと気になるのは、犬の写真が多くて猫が少ないこと。
ニュースでも、避難した飼い主が来るまで待ち続けたワンコとか、津波に呑まれたが病院で保護され飼い主に再会できたワンコとか、三週間も漂流しているところを救助されついに飼い主と奇跡的に再会したワンコとか*1飼い主は亡くなったが生き延びて親戚にもらわれたワンコとか、ワンコの話題ばかり。
「犬は人につく。猫に家につく」と言うように、犬は飼い主への帰属意識が強いので行動的になるが、猫は家のどこかに隠れたまま出てこないケースが多いのだろうか。ニャンコも生き延びたという話を読まなくては、ニャンコ飼いとしては寂しい。
そう思い探してみたら、25日目で飼い主と再会したニャンコと、津波被害に遭った「猫の島」のニャンコ達が出てきて、少し救われたような気になった。怖いもの知らずの人に拾われて一部で有名になった猫は、福島第二原発のある富岡町の「富岡タマ」。(http://www.snsi.jp/tops/kouhou/1492*2


人命救助が第一なだけに、「その次」で待っている犬や猫がようやく助け出されたり、サバイバルして飼い主に逢えたというニュースには、どうしても涙腺が刺激される。よかったねよかったね、ほんとうによかったね‥‥(涙)。
テレビニュースやネットのニュースを見ながら「よかったねぇ」と鼻をすすり上げている私を見て夫は、「おまえ大丈夫か」と言った。ここのところずっとあまりにもそういう言葉を言える場面がないので、言えるところで思い切り言いたいのだよ。傍観者の感傷だと言われるかもしれないけど、犠牲になった犬や猫がどれだけいるのかわからない(たぶん正確な数字も出ないだろう)中で、助かって飼い主に逢えたペット達、はぐれたペットに逢えた飼い主達の僥倖を喜びたい。
しかし連日の震災、原発のニュースに接して鬱々とした気分が蓄積されてくる中で、犬猫生還再会感動物語を拾っている自分を顧みると、感情のプリミティブな落ち着きどころを求めているなとつくづく思う。


一方、避難指示が出ている区域に当る福島県浪江町に居残っている人が写した、取り残されたどこかの犬。(http://mamesoku.com/archives/2512561.html
飼い主が諦めてリードを外して置いていったのか、後で来るつもりで来れないのか事情はわからないが、たまたま通りかかった人間に、人恋しさに寄ってきたようなこの犬の目は、自分を取り巻くこの不可解な状況について教えてくれと尋ねているようだ。*3


ところで、天変地異が起きる前、猫はどういう反応をするのだろうか? 
『猫はほんとうに化けるのか』(花輪莞爾、徳間文庫、2002)には、1960年のチリ地震津波が北海道と三陸を来襲した時、屋根ごとにたくさんの猫が敵同士のイタチと一緒に瓦にしがみついているのを避難する人が見たという話がある。危険を感じると縁の下に逃げ込む習性の猫が屋根に登っていたということは、津波が襲来すると予知していたと。
猫は大地の微動と静電気の変化、地球の磁場の変化に敏感で、地震多発地でその予知能力が研究されているというので、試しに「地震 予知 猫」でググってみたら確かにたくさんの例が報告されていた。
だが少なくとも今回の地震では、個体差があった模様。
Togetter - 「東北地方太平洋沖地震前後の猫たちの反応まとめ」
ちなみに私の住む地域は震度3〜4だったが、飼い猫は特に目立った事前行動はしていない。
‥‥‥タマや。おまえがエスパーだったらな。



●参照
東日本大震災 犬猫関連ニュース

*1:生還した飼い犬と逢えた女性は、インタビューに答えて幾分抑えめに再会の喜びを口にしていた。肉親やペットを失った人がいる中では、あまりおおっぴらに感激を表に出すのは躊躇われるだろうと思う。でも犬をぎゅっと抱きしめて頬擦りしている姿に、嬉しさと絆の強さが滲み出ていて、関係ないけど思わず玄関先のコロをヨシヨシしに行った。

*2:「富岡タマ」ってなんか大正時代の文士と駆け落ちした芸者みたいな名前でいいです。/追記:飼い主の元に帰ることができた。http://www.snsi.jp/tops/kouhou/1495

*3:追記:仙台から浪江町に犬の餌を持って行った人がいた!http://hamusoku.com/archives/4420271.html