好きなアーティスト、嫌いなアーティスト

前の記事のUst発言起こしの部分で持ち出されている「美大生の好きなアーティスト、嫌いなアーティスト」というのを、自分の講義(名古屋芸術大学での「ジェンダー入門」)を受けている学生対象でやってみた。
講義本題に入る前に、出席票の裏に書いてもらう。1. 書くのは強制ではない、2. 美術周辺のアーティスト限定、3. 集計してブログで紹介するかもしれない、ということを伝えてある。
133人のうち7割方がデザイン科の学生で、また1年生が7割くらいを占める。*1回答したのは70人。


集計したが「得票数1票」が非常に多いので、見た目にわかりやすくするため、日本人(戦後生まれのアーティスト(画家、美術家として紹介されている人)/戦前生まれのアーティスト/イラストレーター/マンガ家、アニメ作家/デザイナー)、外国人(同じ)の順に並べた。※はそれらに分類できない人。
なかなかカオスです。

●好きなアーティスト
1位 奈良美智(5票)   
2位 ミュシャ(3票)    
3位 会田誠草間彌生、マルミヤン(2票)
4位 村上隆杉戸洋ヤノベケンジ吉村芳生、船越桂、青木野枝、青野文昭、愛まどんな、中澤英明、深堀隆介、渡辺おさむ、永山裕子/尾形光琳朝倉文夫小磯良平上村松園熊谷守一岡本太郎、田淵俊夫/いわさきちひろ宇野亜喜良、中村祐介、天野喜孝山本タカト野村哲也、猫将軍、いのまたむつみ、ミギー、カスヤナガト、浅田弘幸、yocky、たんじあきこ、コイヌマユリ/水木しげる荒木飛呂彦井上雄彦富樫義博、わたなべあじあ、中村明日美子宮崎駿、辻初樹/佐藤可士和佐藤卓、カトウシンジ(Shinzi Katoh)、深沢直人
ボッシュブリューゲルレンブラント、カラヴァッジョ、フェルメール、ブクロー、ガレ、クリムト、シュルレアリズムの画家、ターナー、モネ、ゴッホマチスセザンヌロダン、ロスコ、ジム・ダイン、ウォーホル/キース・ヘリングデミアン・ハーストラッセン、イ・ブル、ウィル・コットン/ノーマン・ロックウェル/ディズニーピクチャーズ/ウィリアム・モリス、パントン、シド・ミード、打開連合
※Yoshi、北方謙三、嵐、perfume
(以上1票)


●嫌いなアーティスト
1位 村上隆(3票)
2位 会田誠草間彌生、カオスラウンジ、ピカソ(2票)
3位 奈良美智Chim↑Pom、愛まどんな/黒田清輝片岡球子新海誠蜷川実花
ダ・ヴィンチシャガールゴッホゴーギャン、ベーコン/キース・ヘリング、ブーンスィ・タントロシン
(以上1票)


全体を見て思ったことは、「10年前ほどではないが奈良美智は強い」「世間一般と同じくミュシャが人気なのか」「美術作家よりイラストレーターやマンガ家の方の人数が多いのは、デザイン科の学生が多いせい?」「好きな方にラッセンの名前が!」「村上隆は「嫌い」で1位だが133人中で書いたのが3人なので、すごく嫌われてるというわけでもない」「草間彌生会田誠がどちらにも同数で入っている(これはアーティストとしてはなかなか良いポジション)」。
好きなアーティストだけ書き、嫌いなアーティストは「特にいない」とする(あるいは書かない)学生が多かった。「嫌い」も、「どちらかというと」「以前はいいと思ったが」「嫌いというよりわからない」などの断り書きがあるのがいくつか。
「好きなアーティストも嫌いなアーティストも特にいない」という学生が5、6人。白紙で出した学生の多くはそれかもしれない。また、デザイナーやマンガ家を「美術周辺」とは言えないのではないかと考えて、書くのを控えた学生もいたと思われる。


地方の芸術大学なので、展覧会の多い東京などと比べると相対的に作品体験は少ないだろう。大学の講義で詳しく紹介されたり、地元で展覧会(開催中のあいちトリエンナーレ出品作家の名がちらほら)があって、たまたま知ったというケースは結構ありそうだ。またこの大学に限らず、直接作品を見ていない状態でネットの画像を見て判断することや、ネット上の評判に評価が影響を受けることも少なくないと思う。
アーティストもマンガ家も同列に扱っている例がいくつもあった。20年くらい前まではあまりなかったことだ。今の美大生、というか若者の間では、現代アートもイラストもマンガもデザインも同じ地平で捉えられているということだろう。


他の美大ではどういう結果になるのだろう。1位2位はそれほどがらりと変わらないとしても、3位以下は相当ばらつきがあるのではないだろうか。
しかし、なぜに北方謙三‥‥。気になる。

*1:追記:女子もやはり7割くらいを占める。「ジェンダー入門」だからではなく全体の割合がそのくらい。今の美大や芸大は、どこでも女子の方がずっと多い。