ネットの悪口が恐いクリエイター

ネットに悪口を書き込むヤツらに反応することはいかに不毛な行為なのか?|オモコロ特集


この中で少し驚いたのは「最後に」のところ。

今回、このようなブーメラン記事を書こうと思ったのは、最近、立て続けに「創作活動がしたいけど、悪口を言われるのが怖いから何もできない」という若手クリエイター達に会ったからです。


正直、驚きました。


僕自身は、ネットの悪口なんて便所の落書きみたいなもんだし、野良犬がキャンキャン吠えているようなもんだと思えばいいじゃんという考えなのですが、そのことを伝えると、「いや、便所に悪口書かれていたら傷つきますよ。それに、野良犬に吠えられたら怖いし」と言われて、たしかにそうかもしれないと妙に納得してしまいました。


「批判を恐れているようなやつは創作する資格などない!」という意見もありますが、その考え方自体、古いのかもしれません。


これだけ社会にインターネットが浸透していれば、昔よりもはるかに飛んでくる誹謗中傷の数が多いことでしょう。


そんな「ネットの悪口」が少なからず、彼らの創作活動の妨げになっているなら、それはとてももったいないことだと思い、ネットの悪口を相手にすることが、いかに不毛なことなのか、いかにバカらしいことなのか、彼らに伝えたくて、この記事を書くことにしました。


「ネットの悪口を相手にしても不毛だ」という内容なのだが、「若手クリエイター達」はそういうものを「相手にする」以前に、読んだ時点で傷ついたり恐くなるから創作活動ができない、ということなのではないだろうか。そもそもの話として。*1
他人が悪口を言われているのをあれこれ見てしまって、何もしないうちから不安に囚われて何もできなくなる‥‥。そりゃハナから無理だわと思った。


ただ、創作にしろ何にしろ何かを発表する人の不安と緊張が、ネットが普及する前よりずっと高まっているということは、確かに言えると思う。
一昔前なら批評は紙媒体にしか載らず(しかも対象は非常に限られている)、そのほとんどが好評価を与えるものだった。業界人向けの批評誌には批判も載っただろうが、それは言い捨ての「悪口」ではないし、また一般人はあまり手に取らないので、世間的には自分の作品についての良い評価の方が流通する。*2
従って「これ、つまんない」「駄作だ」と思った一般人の感想はあまり公にならず、作者の耳にも届きにくかった。だがネットであらゆる人がカジュアルに感想を述べるようになって、すべてが剥き出しになってきた。


上の記事のはてなブックマークでは、エゴサーチについていろいろな意見があった。村上隆のように、自分への悪口tweetを探してわざわざ自分のところで晒すという剛の者もいる。私はtwitterをしていないが、本が出た後などは時々エゴサーチをかけて反応を知ろうとしている。恐る恐るだけど。そういうことは結構誰でもやっているんじゃないかと思う。
さきほどたまたまラジオで聞いた阪本順治監督のインタビューで、これと同ような話題が取り上げられていた。途中からだったが、ちょっと面白かったところを覚えている範囲でメモ。


▶自分の作品の評判は気にしますか。
「それはまあ気にはなります。今はネットでいろいろ言われているのを、見ることができてしまうので。ああいうのは、全部見るか全然見ないか、どっちかにした方がいいですね。全部見ると、中には評価してくれてたり、(悪口に)言い返してくれてたりするのも目に入りますから。そして結局、こんな時間は無駄だなとわかる」
「でも、家で酒を飲んだりしている時、つい何か勇気が出てきた気分になって、見てしまうこともある」(笑)
▶悪口に対して言いたいことは?
「文章力をきちんとしろ、と」(これはインタビューの中で2回言っていた)
▶お酒は外で飲むことが多いですか、それとも家ですか。
「どちらも。家でも結構飲みます。酷い時は夕方5時から翌朝9時まで延々飲み続けたことがあった。冷蔵庫にあるウィスキー、テキーラ、バーボン‥‥次々と」
▶お酒飲みながら何しているんですか?DVDを見たりとか?
「自分の作品のDVDを。失敗したところは全部飛ばして、成功したところだけ見て、俺って天才じゃないか!とか思ったり」(笑)


正直な方ですね。自分にも身に覚えがある部分があって笑った。阪本監督のように既に評価されている人でさえこうなんだと知れば、これからと言う人は少しは気持ちが軽くなるのではないだろうか。

*1:何らかの創作活動をしている人を「クリエイター」と言うのだから、創作活動はしているけれどもネット上に紹介できない、あるいはリアルでしているのとは別にネット上の創作活動ができない、ということだろうか。それとも今は、「創作活動がしたい」と思っている人を「若手クリエイター」って言うの? ちょっとよく意味がわからなかった。‥‥「若手」は「卵」ということか。

*2:有名批評家の署名で大々的に批判が出るような創作物があるとしたら、それは「問題作」としてある意味重要なものだと言える。創作ではないが、月刊誌「論座」2007月1月号に掲載された赤木智弘の論考「『丸山眞男』をひっぱたきたい----31歳、フリーター。希望は、戦争。」は、新聞紙上で複数の識者が意見するほど反響があった。