WEB連載、更新されました。イラストは一挙に三人登場。

WEBスナイパー(18禁)に連載中の映画エッセイ「あなたたちはあちら、わたしはこちら」の第七回 闘う女がアップされています。
映画の中では、たくさんの女性が実にいろいろなものと闘っています。その多くは強大な力、端的に言えば「男」なるもの。「男」の世界に半ば守られつつも、やはりそれと闘わざるを得ない局面に否が応でも立たされる‥‥というのが、現代の物語で描かれる女の闘いです。仮に女同士の闘いであっても、その背景には「男」なるものの力が影を落としていたりします。


今回取り上げたのは『女はみんな生きている』(2001、コリーヌ・セロー監督、原題は『Chaos』)。この邦題、もうちょっとスマートな付け方はなかったの?という感じもしますが、フランスで大ヒットし日本でもカトリーヌ・フロという女優の知名度を上げたエンタメ作品。
半分コメディ半分シリアスな物語の展開はスピーディで、男女のさまざまな関係が交錯する上、欧米とイスラム世界の関係も匂わされ、この尺ではやや盛り過ぎかなと思うものの、俳優たちの好演で楽しめます。


カトリーヌ・フロが演じるヒロインのエレーヌは、仕事を持った中年の主婦。チャーミングな丸顔で人はいいけど、ファッションも頭の回転もまあ平凡で、走る時はいかにもそこらのおばさんという感じの女性です。
大抵の冒険は主人公がちょっとした事件に巻き込まれることから始まるように、このヒロインもアルジェリア人の娼婦マリカに偶然関わってしまったことで、知らず知らずのうちに自分の闘いに踏み出していきます。
登場するのは二十歳前後から七十歳過ぎまで、生まれ育ちも世代も異なる女性たち。それぞれ振る舞い方はまったく違いますが、共通しているのは相手が「男」なるものだということ。


また普通は、女たちに共感し陰ながら応援する異性の友人など、おいしい役の男性が登場するものですが、一人もいません。制作、監督ともに女性だからか、その辺徹底しています。
しかし男たちの中で最もリアルな役どころであるエレーヌの夫ポールの滑稽さと、父親に似て女に手の早いイケメン息子の間抜けぶりが、コミカルかつどこか憎めない感じに描かれているせいか、「男を糾弾している」という感じはなく、見終わった後味は爽やかです。


イラストは、ヒロインのエレーヌの横にマリカ、下にポールの母の顔を配しました(出番は限られているポールの母ですが、この物語世界の最大の救いとして登場していたのだということが、最後にじんわり伝わる幕切れとなっています)。テキストと合わせてお楽しみ下さい。


「あなたたちはあちら、わたしはこちら」第七回 闘う女