「童貞を殺す服」雑感

この数年、仕事先の地方の芸術大学でよく見かけるファッション。美術学部でも音楽学部でも見られる。
   
(微妙にデッサン狂ってる。左の人が多い印象)
パステルカラーでパフスリーブのシフォンみたいなブラウス、薄くてヒラヒラしたミニスカート、長めフレアスカート、レースのソックス‥‥。少し前のロリータやメイド服の流れから?というかアイドルやアニメの影響?‥‥と思っていたが、こういうのが「童貞を殺す服」なのか?


「童貞を殺す服」のブランドを集めてみた - あめ姫は友達が少ない


大学内では、上の記事に掲載されているのほどコスプレ感のある人はほとんどいないが、そういう雰囲気をうすーく漂わせた甘いレトロな感じのファッションの女子はかなり多い。三人に一人くらいはいそう。


大学生の姪は、MILKが好きだと言っていた。彼女の場合、パンキッシュなスタイルから回り回ってガーリーに来たという感じ。
去年久しぶりに会った時、小公女のような服を着ていた。ミモレ丈のグリーンのベルベットのワンピースで、ヨークの部分は白く、スタンドカラーにフリルがあしらわれている。うちの母は「まあ可愛い! サキコ(私のこと)がちっちゃい時に着てた服みたいねー。色白だからとっても似合うわ。よくそんなの見つけてきたわねー」とベタ褒めしていた。「童貞を殺す服」だとも知らず。
でもまあこの呼称はあくまで「童貞」目線(という設定)であって、着ている人がそれを内面化しているかどうかはわからない。*1


90年代の終わり頃までは若い人のファッションを眺めるのが面白かったが、全体的に大人しくなったように感じるこの十数年。天才デザイナーの創造した世界中に影響を及ぼすようなモードがなくなり、ストリートから生まれる勢いのあるスタイルも途絶えてきて、人気のあるアニメ方面のファッションが前面に出てきたのだろうか。ファッションが過去の流行のリニューアルや再編集で循環し出して久しいが、「童貞を殺す服」の時間の止まった感はちょっと異色。



個人的な話。
童貞‥‥もとい、あの手のロリ服は、私(1959年生まれ)の子どもの頃のよそゆきだった。60年代前半、5歳頃。
   
特別のお出かけの時だけ、こういうおめかしをした。当時の幼女の「正装」である。頭にはでっかい”おリボン”。
いささか古くさい恰好で、洗練されたものが好きな母は洋裁を習い、もっとシンプルな服を縫ってくれるようになった。60年代と言えばツイッギーの時代。ミニマルなAラインのワンピースが大流行していた。
(参照:レトロがトレンドの今だから知りたい60’ファッションの事- NAVER まとめ
ニューモードな子ども服の載っている本を見て、母の作ったワンピース。60年代後半、10歳頃。
   
水色のギンガムチェックの身頃にスカート部分が紺色のサッカー地。ポケットに白い大きなボタン。妹とお揃いでとても気に入っていた。


私服でスカートをよく履いていたのは小学生まで。それ以降は、だいたいパンツスタイルになった。中学時代はベルボトムジーンズにTシャツかカッターシャツ。高校、大学は美術系なので、一日の大半が作業服みたいな恰好だった。下は70年代後半〜80年代初め、10代後半から20代にかけて。
   
トレーナーとジーンズ、足下はバッシュ。あちこちに絵の具や石膏がついている。外出時は、絵の具や石膏がついてないきれいなトレーナーとジーンズに着替える。夏はTシャツ、冬は上にGジャンか革ジャン。
男の子っぽいスタイルが好きだったため、一番モテたい時期を全然モテないファッションで過ごしてしまった。モテファッションだったニュートラハマトラには縁がなかったし、したいとは思わなかったので仕方がない。
   
(口を描くのを忘れた)
20代半ば頃。高校時代と変わりばえしない。以降、DCブランド系(ギャルソンとかニコルとか)のシャツやジャケットなどを頑張って買ったり、アライアのボディコンワンピを真似して作ってみたり、髪を伸ばしてみたり、ややフェミニンなブラウスを着てみたりしたが、自分の好きな基本ラインはおんなじだった。
50代半ばの今も、(時々きものを着る以外は)だいたい似たような恰好をしている。ただし年齢上、シルエットはゆったりめで各部の露出は控えている。

*1:メルヘンな雰囲気ではピンクハウスと近いが、あれは花柄を見せる田園調のオフのドレスで、こっちはビクトリア朝テイストの制服っぽいオンのドレスという感じがする。コルセットなどボンデージファッションとも通じてる。