2006年に初めての本を出してから5冊目の単著になる映画エッセイ『あなたたちはあちら、わたしはこちら』が、大洋図書から刊行されます。
30代後半から80歳過ぎまで、中年以上の女性が主人公となっている映画12本を取り上げ、その心情を掘り下げて考察したものです。WEBスナイパーに昨年から今年にかけて連載していたレビュー(現在読めるのは第一回のみです)に全面的に手を加え、さらに一つひとつのテキストに、各女優についての書き下ろしコラムを添えました。
webのほうは18禁サイトということで開くのを躊躇したり、開いてもテキストの両サイドに並んでいる「過激コスプレデリ」とか「四十路妻」のナントカいうのが気になって文章が頭に入らなかったという方も、これで心置きなくじっくりお読み頂けると思います。
連載に載せていた色鉛筆によるイラストは、カラー口絵12枚となって冒頭を飾っています。原画をほぼ忠実に再現した印刷技術のクオリティが素晴らしく、外見は地味ながらさりげなく贅沢な作りの本になりました。
ちなみにタイトルは、ある映画の中の台詞です(独り言の呟きであり、喧嘩を売っているのではありません‥‥)。
(左)シルバーの極細タイトル文字がきれいです。(右)口絵の一枚。
目次をご紹介します。
はじめに
◆ 埋葬する女 /『ルイーサ』
普遍的な顔、普遍的なファッション レオノール・マンソ
◆ 裸になる女 /『カレンダー・ガールズ』
ターコイズ・ブルーの主張 ヘレン・ミレン
◆ 踏み台にされる女 /『イヴの総て』
眼差しと機関銃 ベティ・ディヴィス
◆「異物」と向き合う女 /『少年は残酷な弓を射る』
遠い星から来た女 ティルダ・スウィントン
◆ 恋する女 /『旅情』
骨の魅力 キャサリン・ヘプバーン
◆ 優しい女 /『長屋紳士録』
筒袖の愛嬌 飯田蝶子
◆ 闘う女 /『女はみんな生きている』
ペコちゃん顔の誠実さ カトリーヌ・フロ
◆ 寡黙な女 /『浮き雲』
不調和から始まる美 カティ・オウティネン
◆「承認」を捨てる女 /『めぐりあう時間たち』
子どもたちは見ている
ニコール・キッドマン、ジュリアン・ムーア、メリル・ストリープ
◆ 正しい女 /『疑惑』
ピュアホワイトの殺気 岩下志麻
◆ 病む女 /『ピアニスト』
「逸脱者」の横顔 イザベル・ユペール
◆ わがままな女 /『クロワッサンで朝食を』
パリを着てきた女優 ジャンヌ・モロー
あとがき
※監督は上から順に、ゴンサロ・カルサーダ、ナイジェル・コール、ジョセフ・L・マンキーウィッツ、リン・ラムジー、デビッド・リーン、小津安二郎、コリーヌ・セロー、アキ・カウリスマキ、スティーブン・ダルドリー、野村芳太郎、ミヒャエル・ハネケ、イルマル・ラーグ。
「映画が女をどのように表現しているか」についての多様な細部への注視と同時に、それぞれの映画の主人公の分析を通じて、女性をめぐるさまざまなテーマ––––友情、仕事、若い同性との関係、性や恋愛、子ども、家庭と社会、自意識、老いや孤独や喪失––––について考察するものにもなっています。
女性のみならず男性の方にも、これらの映画を観ていない方にも、是非手に取って頂きたいです。
本文を読みながら口絵を見返し、気になった映画のDVDを観、観た後で再度本を開く、そんなふうにおつきあい頂けたら、著者冥利に尽きます。
そしてご感想も、お待ちしております。もし気に入ったら、親しい方にもおすすめして下さい(あ、クリスマスプレゼントとしても最適だと思います!笑)。
書店に並ぶのは、明日7日。どうぞよろしくお願い致します。
●大洋図書のサイト
http://taiyohgroup.jp/book/book-whole/essay/id001116/
商品紹介他、あとがきからの抜粋があります。