花を踏む

開催期間も残り少なくなったあいちトリエンナーレ。8月に一度新聞の取材で回っているが、今日は友人たちと。
愛知県美術館10Fに展示の大巻伸嗣のインスタレーション。カラフルな顔料(鉱物の粉末)を用い、ステンシルの方法で作られた万華鏡のような花や鳥などの文様で、フロアが埋め尽くされている。スペクタクルな風景。
ちょうど今日から、作品の上に乗っていいことになっていて、観客が思い思いに歩き回っているせいで、模様の輪郭がぼけたり、白い地に粉末の足跡がついたりしていた。



しかし、粉末がただ乗っているとはいえ、分厚いフェルトのような質感の下地との密着性があるせいか、普通に歩き回っても、模様がすぐに崩れてしまうことはない。手で擦った後があったが、粉末は半分くらいフェルトに染み込んでいるような感じだった。
これがもしツルツルの床だったら、もっと粉末が飛散し、色の混じり合いやかたちの壊れ具合も激しかっただろう。以前の展示ではそういう状態のもあったと思う。たぶん今回は、全体が滲みながらぼやけていくような感じになるのだろう。



「作品を踏む」、それも「花を踏む」という行為は、観客の中に心理的抵抗や葛藤を生み出す。それを体験させることがこの一連の作品のポイントのようだが、破壊している感はそんなになかった。むしろ美しい花模様のカーペットの上を歩いているようだった。私たちが行ったのは2時頃で、もう何十人かの人々が歩き回った後。それで、抵抗が少なかったのだと思う。
誰も汚していないものを汚し、誰も壊していないものを壊すのは、初めの一人。何でも、最初の一歩が一番ためらいが強く、一番恐ろしく、一番興奮する。
観客参加型の作品における、最初の一歩の特権性とは何だろうか?と、少し滲んだ花を踏みながら思った。



中央のなんかへっぴり腰で歩いている人は私です。。