アートをめぐる権力関係と搾取‥‥『ビッグ・アイズ』(「シネマの女は最後に微笑む」更新されました)

映画から現代女性の姿をピックアップする連載「シネマの女は最後に微笑む」、第12回がアップされています。今回取り上げた映画は、実話を描いたティム・バートン監督『ビッグ・アイズ』(2014)。アラーキーのモデルだったKaoRiさんの告発の件を枕に書き起こしています。


芸術の「共犯」によって失った誇りを、彼女はいかに取り戻したか|ForbesJAPAN


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アラーキーの件は写真家とモデル、この作品は偽画家と画家という大きな相違はありますが、芸術の場における歪な関係性が生み出す問題に、共通したものを感じました。
絵を描くのが好きな世間知らずで天然の子持ち女性を、エイミー・アダムスが好演しています。この作品で、第72回ゴールデングローブ賞の主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞。彼女を騙す承認欲に飢えた滑稽なペテン師を、クリストフ・ヴァルツが嫌らしいほど巧く演じていて、イライラしつつも半笑いを禁じ得ません。
そして、毒の効いた独特のコメディタッチで風刺されるアートに群がる人々、芸術とビジネスの関係。映像はカラフルで、50年代末〜60年代半ばのポップでキッチュな雰囲気も楽しめます。


ヒロインのモデルとなっている当時一世を風靡したらしいマーガレット・キーンの大きな瞳の子どもの絵を、映画を観るまで私は知りませんでした。ウォーホルの賛辞が冒頭にありますが、ポップアートの文脈でも評価されたのでしょうか。アートとイラストの垣根を壊して出てきたような感じに見えました。今だと、奈良美智のような存在だったのかもしれません。バートン監督も彼女の絵のファンとのこと。