「幸せのかたち」は異性愛者と同じなのか、違うのか(「シネマの女は最後に微笑む」更新されました)

現代女性の姿を映画からピックアップする「シネマの女は最後に微笑む」第19回は、杉田水脈氏のセクマイ差別を含むテキストから広がった波紋を枕に、『キッズ・オールライト』(リサ・チョロデンコ監督、2010)を取り上げています。


異性愛者と変わらない、同性愛者カップルの危機と親子関係 | ForbesJAPAN



子どもたちが精子提供者と出会ったことで、レズビアンカップルの家庭に巻き起こるさまざまな出来事を、コミカルに描いた作品。アネット・ベニングジュリアン・ムーアが子持ちカップルを演じています。
レズビアン」ということを除けば、ここに見られる夫婦関係、親子関係、家族のかたちは普通に伝統的なものであり、異性愛者夫婦間で起こりがちな問題が、そのまま起こっています。
アメリカでの評価は高かったようですが、同性愛者の生き方を異性愛者の規範に従属させたものだとして、批判する向きもあるかもしれません。


精子提供者の中年男はとても感じのいい人ではあるけれど、結果的にはレズビアン家庭の破壊者として登場しています。子どもたちも、ジュリアン・ムーアも魅了されてしまい、”一家の長”然としたアネット・ベニングは彼を警戒し、敵視する。
その姿は「愛する家族を外敵から守る強い父」という、アメリカ映画で繰返し描かれてきた男の姿とダブります。話型としては古典的ですらあります。ここをどう捉えるかで評価は別れるでしょう。
子どもたちの成長をさりげなく描いている点には、個人的に好感がもてました。


連載4回目で扱った『ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気』では、ジュリアン・ムーアエレン・ペイジの歳の差カップルで、経済力はジュリアンの方があるけれど、エレンが男の子っぽくて相手を「私の妻」と呼んでいました。
一方、『キッズ・オールライト』では、二人とも「ママ」と呼ばれるものの、明らかにアネット・ベニングが夫・父の立場を取っていました。
同性愛者カップルも、夫/妻、男/女を踏襲する人は多いのでしょうか。