育ちのいい小金持ちマダムをベタだが爽快に演じて成功(「シネマの女は最後に微笑む」更新されました)

現代女性の姿を映画からピックアップする連載「シネマの女は最後に微笑む」第22回は、『しあわせの隠れ場所』(2009、原題はThe Blind Side)を取り上げてます。


困った人がいたら助けること 行動派セレブマダムの自信と誇り| ForbesJAPAN


しあわせの隠れ場所 [DVD]

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アメフト選手マイケル・オアーのノンフィクションに登場する、彼の里親になった女性にスポットをあてた良作ですが、前回に続いて「背中が痒くなる邦題のついた洋画」です。安易に「しあわせの〜」で始まるの、多過ぎると思いませんか。



お金持ちで、夫は物わかりが良く、子供はいい子たちで、共和党支持者で、全米ライフル協会の会員‥‥。個人的には一つも共感要素がない女性リー・アン・テューイを、厭味なく演じたサンドラ・ブロックがなかなか良いです。ちょっと大味なところが苦手な女優でしたが、これは彼女の持ち味が活かされている、というかサンドラ・ブロックのための映画と言ってもいい。
こんな「善行」など白人の贖罪意識からじゃないか?とか強者だの弱者だのごちゃごちゃ言ってる間に、目の前の困った子供を助けるべきよ!(私たち金持ちは!)‥‥というメッセージもシンプルです。一見鼻につく偽善が本物になっていくところが、まあすごいですね。


細かいカットで書きそびれたことを一つ。
マイケルがテューイ家に来た夜、リビングテーブルの上に、ノーマン・ロックウェルの画集がいかにも!な感じで置いてある。表紙は、感謝祭のダイニングテーブルに揃った幸せそうな白人家族。 かつて「The Saturday Evening Post」の表紙を飾ったものと思われます。
奇しくも翌日は感謝祭。昔の慣習とは違い、テレビでアメフトの試合を見ながらそれぞれ好きなポジションで料理をパクつくテューイ一家と、一人ダイニングテーブルについたマイケル。それを見たリー・アンは家族を同じテーブルに呼び、手をつないで感謝の祈りを捧げるよう促す。登場人物がロックウェルの絵とよく似た構図になる。もう、いかにも!です。
この映画が今ひとつ「軽い」感じがするとしたら、細部の回収がベタでわかりやす過ぎるというところかもしれません。でもサンドラ・ブロックの演技を見るだけでも楽しいです。