映画から現代女性の姿をpickupする連載「シネマの女は最後に微笑む」第27回は、アメリカ移民の格差問題を枕に、2010年の『ウィンターズ・ボーン』を取り上げてます。ジェニファー・ローレンスがヒルビリー(スコッチ・アイリッシュ系移民)の少女を演じて注目を集めたサスペンスドラマ。
アメリカの「知られざる移民」 掟に抗う少女のサバイバル | ForbesJAPAN
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本文では触れていませんが、ヒルビリーの生活のひとこまとして、人々がカントリーミュージックを楽しむシーンが挿入されており、全編を覆う殺伐としたトーンの中でそこだけが人間臭さと温かみを感じさせ、印象に残りました。
しかし音楽に流れる血は、主人公のリーが殴られて流した血でもあります。
暴力と救済が、表裏一体のものとして描かれています。
ヒロインの窮状を救った金は、彼女への制裁を帳消しにするものであり、一種の口止め料の役割も果たす。一応はハッピーエンドになっていますが、諸手を上げて喜んでいいのかどうかわからない微かな息苦しさも孕んでいます。
途中まではどことなくアンティゴネーっぽい構図。しかし最終的に、無力なヒロインは共同体の残酷さを受容するかたちになります。むしろそれを自身も次第に身につけて大人になっていくのだろう、彼女がここにいる限りは‥‥などと考えさせれます。
ジェニファー・ローレンスの骨太感がとてもいいです。ハスキー犬のような瞳と、田舎のタフな女の子を演じられる鼻柱の太さが魅力的。