安藤サクラの記念碑的作品『百円の恋』を改めて観る(「シネマの女は最後に微笑む」第29回)

こちらでのお知らせ、数日遅れてしまいましたが。。
映画から現代女性の姿をpickupする「シネマの女は最後に微笑む」第29回は、安藤サクラが数々の主演女優賞に輝いた『百円の恋』(武正晴監督、2014)を取り上げました。話の枕は、この間炎上した西武・そごうの広告の件です。


コミュニケーション不全の女が求めた、言葉を越えた熱いやりとり - ForbesJAPAN


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安藤サクラが演じる一子を筆頭に、登場する人々の中途半端なダメさ加減がさまざまなかたちで描かれます。相手役の新井浩文もダメな男。立派な人が一人も出てこない(笑)。
観ているうちに、そうした緩いダメさで構成された空間が、なんとなく心地よくなってきます。私もダメな人間だからでしょうか。


一子は見ていて結構イライラさせられます。後半は見違えるように挽回していくものの、最後でベソベソ泣くんだなぁ。まあキリッとしたらそれはそれで変ですが。
あのラストに被る歌がかなりベタで私の好みではありませんが、安藤サクラの全然きれいじゃない泣き方があまりにリアルなので良し、です。


引きこもり続けて、全力をかけること、そして勝ち負けをはっきりさせることからずっと逃げてきた女が、勝ち負けがもっともはっきりするゲームにトライして、負けた。そのことをとてつもなく「悔しい」と感じる境地に、初めて立った。つまり人との関係性をそのようなかたちで受け止めることで、自分の生に改めて向き合った。
‥‥‥というのが王道的解釈と思いますが、そういう批評はわりと多そうなので、少しずらした観点から書いています。どうぞよろしくお願いします。