撒いてしまった種をどのように引き受けるか ‥‥『よこがお』(「シネマの女は最後に微笑む」更新)

いつものように、お知らせ遅くなりました‥‥。

 

連載「シネマの女は最後に微笑む」第55回は、筒井真理子主演『よこがお』(深田晃司監督、2019)を取り上げてます。

観た後いつまでも胸がざわざわする傑作ですね。映画の途中でわかるネタバレについては直接触れないように書いていますが、普通に読んでいくと何となくわかります。でもわかっても、観る価値はあります。ストーリーは大切ですが、それは映画の一要素に過ぎないということを改めて感じる作品です。

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タイトルの「「無実の加害者」にされた女の絶望と復讐、そして昇華」はあまり捻りがないですが、判りやすさ優先でつけました。「昇華」はかなり踏み込んだ解釈なので、意見が分かれるかもしれません。

同監督の『淵に立つ』(2016)も似たモチーフを扱っており、テーマは「撒いてしまった種をどのように引き受けるか」です。

 

共演は市川実日子。『シン・ゴジラ』を彷彿とさせる化粧気のなさで、難しい役を演じています。

池松壮亮は、中年女の誘惑に易々と乗る内面の見えにくい青年を好演して、宮沢りえと共演した『紙の月』の役柄を思い出させます。

しかし何と言っても主演の筒井真理子がいい。素晴らしいの一言。

 

人生を奪われたという重すぎる事実と比べると、市子(筒井)の復讐があまりにもささやかではないか?という印象もあります。

しかし考えてみれば、彼女の立場ではこれくらいしかやりようがないのですよね。そういう意味ではむしろ悲しいものがあって、そのあたりが狙いなのかもしれないとも。

 

一点気になったところは、最後の方で市子が甥の辰夫と共に大石家を訪ねる場面。これは相手方の心情を考えると、いきなり行ってはいけないですね。もちろん会えないことは前提の上で、辰夫の気持ちを慮ってのことだったのかもしれません。それは市子の優しさなのでしょう。

 

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