黒人差別と白人の同調圧力が同時に描かれる『ヘルプ』(連載、更新されました)

「シネマの女は最後に微笑む」第63回は、先月ミネアポリスで起きたジョージ・フロイド氏暴行死の事件を枕に、メイドとして働く60年代の黒人女性を描いた『ヘルプ~心がつなぐストーリー~』を取り上げています。

 

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主人公は一応エマ・ストーンが演じる作家志望の女性ですが、冒頭もラストもヴィオラ・デイヴィスの演じるメイドのモノローグであり、下層黒人女性から見た白人女性コミュニティが描かれていると言えます。

 

最初は、NASAの黒人女性を描いてヒットした『ドリーム』(2016)を取り上げようかとも思いましたが、人間関係が『ヘルプ』に比べてやや単調なのと、ケビン・コスナーが演じた白人上司の描き方がカッコ良すぎるのと、黒人でもわずかな成功者ではなく名もなき庶民を描いたものを取り上げたいと思い、こちらに。

設定年代が同じだけに、どちらの作品にも「トイレ問題」が登場します。

 

エマ・ストーンは、この手の映画で理想化された「理解ある良い白人」に陥りそうなところを、彼女の鬱屈や成長を描くことで回避できていると思います。

また、『女神の見えざる手』や『モーリーズ・ゲーム』でキレ者を演じたジェシカ・チャステインが、ちょっとおバカだけど気のいい奥様を演じています。白人の同調圧力からはじき出された存在として重要な役どころ。

 

『ドリーム』にも出演しているオクタヴィア・スペンサーが、勝気なベテランメイドの役で出ています。彼女の密かな復讐が後半の山になっていますが、これはネタばれすると、『カラー・パープル』(1986)でウーピー・ゴールドバーグがやった行為と同じです。強烈さは『ヘルプ』の方が100倍くらいですかね。

 

それにしても、「心をつなぐストーリー」という邦題サブタイトルは何とかならなかったんでしょうか。「ドリーム」(原題:Hidden Figures)もそうですが、妙にフンワリしたイメージを付与するのはやめにしてほしいものです。私なら『ヘルプ~メイドは語る~』にしますね。

 

 

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  • 発売日: 2013/07/03
  • メディア: DVD