「シネマの女は最後に微笑む」第64回は、ポーランドの監督パヴェウ・パヴリコフスキの『COLD WAR あの歌、2つの心』(2018)を取り上げています。
冷戦下の欧州を舞台に描かれる、音楽家と歌手の宿命的な恋。芸術と政治を巡る映画としても非常に興味深い作品。
モノクロームの美しい画面。冗長なシーンは一つとしてなく、すべてが濃密にしてパーフェクト。
ネタばれに配慮してませんが、読んだ後でも観る価値は十二分にあります。傑作です。
奔放で純粋なズーラを演じるヨアンナ・クリークは、レア・セドゥを彷彿とさせるところもあり魅力的。童顔の素顔とメークした時の妖艶さの落差がいいです。歌が上手いなぁと思ったら、本国で歌手としても活動している人でした。
後半は二つの芸術家のタイプを比較しています。
中心になっているのはヴィクトルとズーラですが、男性でもう一人重要な役回りのカチマレクと、前半で姿を消す女性イレーナがいます。ズーラとイレーナは自分の筋を通そうとする芸術家ですが、男性の二人はそれぞれ西側、東側での生きやすさに流れていく。女性たちに一つの理想像を、男性たちに現実の相を担わせているようです。
ポーランド現代史をざっとおさらいしておくといいかもしれません。
日本語の予告編は、女性ナレーターの喋りが作品の雰囲気を甘々にして伝えていて好きではないので、こちらを。