アッパーミドル主婦の性的混迷をシニカルに描く『午後3時の女たち』(連載更新されました)

お知らせ、遅くなりました。

「シネマの女は最後に微笑む」第73回は、アメリカ大統領選の報道で耳タコなほど聞いた「分断」という言葉を枕に、『午後3時の女たち』(ジル・ソロウェイ監督、2013)を取り上げています。

 

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物理的にはほぼ満たされているけれども、平穏な毎日に退屈し、性欲と被承認欲を持て余した専業主婦を主人公に、アメリカのアッパーミドルの市民の日常をシニカルかつユーモアを交えて描いたドラマ。

ここに登場する階層は、日本で言うと世帯年収800万〜1500万、持ち家と車を所有し大都市近郊に住む比較的高学歴でリベラルな層、というイメージです。
ヒロインの属するのはユダヤ人コミュニティですが、ママ友の一人にはアジア系女性もおり、皆既婚で子供は二人目を持とうかという年代。お金持ちというほどではないけれども、生活ぶりには余裕が感じられる。


30代後半で子供もいて、しかし学生気分も少しひきずっていて、夫たちはIT関係のベンチャー企業やクリエイター系の仕事で、休みの日はおじさんバンドで練習したりサーフィンしたり。日本だと湘南や藤沢あたりに住んでいる感じなのかなと。

 

主婦レイチェルを演じるキャスリーン・ハーン、ちょっと脇が甘く、なかなかイタいところも曝け出す役を演じて、しかし下品にはならず好感が持てます。
ダンサーでセックスワーカー若い女マッケナを演じるジュノー・テンプルは、小柄で妖精みたいな雰囲気がチャーミング。妖精が小悪魔に変貌していくところも見所です。
テキストでは言及していませんが、精神分析医の初老の女性のキャラも面白いアクセント。

少しずつ予想を裏切る展開に引き込まれます。おすすめ。