『私をくいとめて』、『ポルトガル、夏の終わり』(連載更新されています)

どっか行っちゃってた夏が戻ってきて、ちょっとお暑うございますね。
「シネマの女は最後に微笑む」第91回、92回のお知らせです。


◆『私をくいとめて』(大九明子監督、2020)

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同じ原作者(綿矢りさ)と監督の『勝手にふるえてろ』と同様、独身女性の自意識との戦いを描いたドラマですが、エピソードは若干盛り込みすぎかなとも感じるものの、より冒険的でポップな味に仕上がっています。
主演ののんの素晴らしさを満喫できます。相手役の林遣都も初々しいし、配役は隅々までばっちり。のんの恋を示すものとして、「揚げ物」に注目してみました。

ネタばれですが、ラストに大瀧詠一の『君が天然色』が使われています。よくぞこの曲使ってくれたという感じがします。みずみずしく多幸感溢れる楽曲の効果と相まって、実に鮮やかなエンディング。


勝手にふるえてろ』については以前書きました。

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◆『ポルトガル、夏の終わり』(アイラ・サックス監督、2019)

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イザベル・ユペール主演。さまざまな人間模様を描く、淡々として滋味に満ちた大人の映画。
ポルトガルのシントラという遺跡の多い古い避暑地が舞台で、映像が非常に美しいです。マリサ・トメイブレンダン・グリーソンなど脇の人々も安定の良さ。

主役の「大物女優」の役は、イザベル・ユペール以外の誰がやっても重さやアクが出てしまうのではないかと思います。あまり貫禄がある人はダメでしょう。まさにユペールのような、痩身でクールな威厳の中に微かな棘を潜ませることのできる女優に相応しい役。
なんだかんだ言ってイザベル・ユペール大好きです。

 

本連載内で扱った他のイザベル・ユペール主演作品は、以下の二作。エキセントリックな、あるいは病んだ役で輝く彼女ですが、中でも私の一番好きな『ピアニスト』は、著書『あなたたちはあちら、わたしはこちら』で気合い入れて書いてます。どうぞよろしく。

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※書籍のご紹介

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