「シネマの男」第5回は、フレンチトーストを作りたくなる『クレイマー、クレイマー』

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43年も前の作品ですが、あまり古くなっていないのに驚きます。家事育児をすべて押し付けられ悶々としている妻、それに気づかない夫、とんでもなく大変なワンオペ育児と仕事の両立、シングルファーザーの苦悩‥‥。
私は子供がいませんが、シングルのお父さんお母さんにとっては、突き刺さる場面が一杯でしょうね。

 

メリル・ストリープの演じる母について「子供を置いて出ていくなんて酷い」という感想をたまに見ます。
しかしあの生活を続けていたらいずれは精神を病んだか爆発しただろうし、仕事もないのに子連れ家出は無茶ですし。
やっと経済力をつけ、息子を引き取りたいと言い出した彼女の気持ちが、裁判シーンを通じてわかるように描かれていると思います。

 

久しぶりに見直して、やっぱりよくできてるなぁと細かいところに感心しましたが、公開当時は大学生だった私にとって、テーマが自分から遠いものだったせいか、フレンチトーストのシーンがやたらと印象に残りました。そういう人、わりと多いんじゃないでしょうか。
当時、フレンチトーストは今ほどポピュラーな食べ物ではなかったので、一応、本屋で料理本を立ち読みしてから作った覚えがあります。

作品中で、フレンチトースト大失敗の後、二人だけの朝の食卓に既製品のドーナツが出ているシーンが印象的です。朝から子供にお砂糖たっぷり油たっぷりのドーナツは、栄養が偏ってあまり良くないと思われますが、テッドは余裕がないし、息子のビリーは(ドーナツも美味しいから)文句を言わない。

母がいなくなって父子二人の生活が乱れていく象徴としての、朝飯ドーナツでした。

 

イラストは、苦戦しました。ダスティン・ホフマンの顔が、なぜかどんどん役所広司になっていくのです‥‥描いても描いても‥‥。何度も消してやり直しましたが、まだ今ひとつ。鼻をもっと強調すべきだったんだよなー。。。

 

次回は、1999年の話題作『アメリカン・ビューティ』(サム・メンデス監督)を取り上げます。不幸な巡り合わせとなった二人の父親を比較してみます。どうぞお楽しみに。