なぜ毎晩同じ夢を見るのか?彷徨う二人の『心と体と』(連載更新されました)

映画から現代女性の姿をpickupする連載「シネマの女は最後に微笑む」第48回は、『心と体と』(イルディゴー・エニェディ監督、2017)を取り上げています。

深い森の中で寄り添う二頭の鹿/屠殺場で解体される血塗れの牛肉‥‥という対比的映像の鮮烈なイメージをバックに、毎晩なぜか同じ夢を見る、出会って間もない男女のもどかしい関係を描くハンガリー映画

 

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画像は毎回編集者が調達することになっていますが、おそらく第67ベルリン国際映画祭コンペティション部門で金熊賞を受賞した時のものかと思われます。

ただ、アレクサンドラ・ベルボーイの隣にいるのは、同じく主演のゲーザ・モルチャーニではなく、重要な脇役を演じたエルヴィン・ナジ。彼の役は、食肉工場に後から入ってくる屠殺係で、ある事件の犯人と目されます。どんな職場にも一人くらいいそうな、ちょっとアレな感じの男をうまく演じています。

 

一方、大きな瞳が印象的なアレクサンドラ・ベルボーイの演じるマーリアは、心の内をなかなか明らかにしない、特殊な事情も抱えた難しい役。防御壁を作って閉じこもりがち彼女も、周囲から見たら一種の「困った人」になるでしょう。

マーリアは最後に大胆な行動に出るのですが、その相手役の中年男エンドレを演じるゲーザ・モルチャーニがとてもいいです。出過ぎず、かといって冷淡でもなく、抑制の効いた言動の中に、中年男の葛藤と諦観とちょっとした生々しさを滲ませていて、非常にリアル。

「性」をテーマにして一風変わった設定の、ユーモアの中にデリケートな視点の感じられる佳作です。

 

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