2003-01-01から1年間の記事一覧

彼女のダイビング(映画におけるヒロインの死と再生)          

序 映画は大衆娯楽として視覚文化の中で大きな位置を占め、そこで生産されるイメージや物語は様々なメディアにとり上げられ複製されることによって、大衆の視覚と記憶に繰り返し焼きつけられている。ことにハリウッド映画は、広範な観客のニーズに応えねばな…

「怪物」あるいはイバラの道

早く観に行かなくてはと思っていた『めぐりあう時間たち』を、ようやく観て来た。 清田さんには、ヴァージニア・ウルフの「ダロウェイ夫人」を読んでから行くといいと言われていたのだが、読み終わる前に上映期間が終わってしまいそうなので、小説は後にして…

擬装からの撤退 -アーティストをやめること-

20年余り現代アート作品を発表しアーティストと名乗ってきたのを、今年以降やめることにした。 作品のネタが尽きてしまったから、あるいは継続できない物理的要因が生じたからではない。もうアートでやれることはない、アートはお終いだと思ったからだ。 そ…

微笑みかける死体

ベネトンの広告写真で有名なカメラマン、オリビエーロ・トスカーニは、自らの広告哲学を本に書いている。タイトルは「広告は私達に微笑みかける死体」。 政治的で挑発的でセンシティヴな写真表現のできる人は、言語表現のセンスも高いのだろうか。素晴らしい…

世界の一つの音

名鉄犬山線徳重駅の踏み切りの、のどかな音が聞こえている。それに、巡航ミサイル・トマホークの轟音がかぶった。 この時間多くの人が、テレビの画像を見、音声を聞いているだろう。私はたまたま踏み切り待ちの車の中で、その戦争の音を聞いている。3月の薄…

「穴」の向こう

それは毛のない女性性器に見えた。しかもぽっかりあいている。それが、愛知芸術文化センターの8階にあった。 名古屋芸術大学の卒業制作展の、絵画科(洋画)の森下美緒さんの「セルフポートレート」という写真の作品。 名芸の洋画もようやくここまで‥‥と思…