2009-01-01から1年間の記事一覧

お元気ですか

とても個人的な話だが、10月終わりから11月の半ばにかけて頻繁に咳が出て困ったことがあった。熱はないので風邪ではなさそうで、とりあえず咳止め薬を飲んでいたが、なんとなく胸の方も違和感があるような気がしてきて、ふと「これって‥‥‥‥もしかして肺がん…

父とパセリ

年内に一度、親の顔でも見に行ってと思い名古屋に出たついでに実家に立ち寄ると、84歳の父は早めの昼食の最中だった。 父はコーンポタージュスープが好きで、食卓に置いたパセリの束から少し千切っては、葉を几帳面に鋏でチョキチョキと細かく切って、スープ…

『嗤う伊右衛門』に見る醜女の意地

北原みのりのエッセイが前提にしているであろうことを解説的に書いただけの先日の記事に、思いがけず100もブクマがついてびっくりだ。美人だブスだという話になるとムズムズする人が多いのだなぁと思いました(っておまいさんがその筆頭だがな)。 「男に比…

「ブスなのに何故」問題

北原みのり|よしもとばなな よしもとばななの容姿をめぐる自意識についての、北原みのりと友人のBさんの会話がCさんを"誤爆"してしまい、大変なことになったという話。 以下は、例の居酒屋ワイン事件についての「勘違い」エッセイに驚いたという下りの続き…

獣と檻

そういうことで、「男が獣なら檻に」議論は終わったんですか。 最初からそんな"議論"はなかったの!「予防拘禁」なんて言い出す人がいたからおかしくなっただけ! はい。そうかもね。でもえらいこと揉めたよ。 で、三周くらい遅れてつまらない話を(時間のあ…

ナツ氏と高橋氏のブコメ議論を追ってみた

お答え - シートン俗物記についたブクマタワーが、id:NATSU2007氏とid:NaokiTakahashi氏のやりとりによってどんどん高くなっていくのを見ていたが、収束したようなので改めて最初から順に追い直してみたいと思った。 既に一方の論者であるナツ氏がこの長いや…

育児を教える高校

前の記事の中で「中学、高校で性教育の授業があったという学生に「どんなだった?」と訊くと、「男女差別はいけないとか‥‥」程度である。」と書いたが、先日、ある学生から興味深い話を聞いた。 彼女は沖縄の農業高校を卒業してから就職し、数年働いた後に大…

「ジェンダー入門」とネトウヨ君

また何年か前の話だが、「ジェンダー入門」の授業の単位認定レポートに、こちらの指定した課題(自分で映画を選び分析する)を無視して、攻撃と怒りと恫喝を延々と書き連ねてきた男子学生がいた。 内容を超要約すると、「フェミニズム及びジェンダー論は、フ…

闇から闇に葬らないこと - 性犯罪の特徴と問題

もう何年も前のことだが某学校で、ある女子学生が「以前に教師からセクハラを受けた」という旨のメールをくれたことがあった。 それによると授業後お茶に誘われ、とてもいい先生だと思っていたので応じたら、それから食事などにしつこく誘われるようになり、…

本に書いたこと紹介

これ、結構反対する女性がいるのだが、是非とも拙書『「女」が邪魔をする』を読んで頂きたい。 違います大野さん。こういうときには本の中でどう書いていたかをバンバン開陳すべきなのです。 [中略] このエントリにしたって、綾子なんてどーでもいいからミニ…

曾野綾子とミニスカート

産経新聞に掲載された曾野綾子の「用心するということ」というエッセイが、この数日、ネット上でえらい顰蹙を買っている。産経新聞に謝罪を求める抗議運動まで起こっているようだ。批判記事には多くの反応が集まっている(その一つ、強姦するのが男の性なら…

コペル君と豊田正子 - 1930年代の教養主義と格差

『君たちはどう生きるか』のエリーティズム 最近、4年前に書かれた『グロテスクな教養』(高田理惠子、ちくま新書)の書評のブログ記事をたまたま見かけた。私がこの本を読んだのもやはり4年ほど前だったが、第一章の「教養、あるいは「男の子、いかに生く…

過去ログを読みながら

ブログを書いている人は、自分の過去ログを読み返したりするのだろうか。それとも、書いたら書きっぱなしで読まない人の方が多いのだろうか。 私は時々読み返す。「これはちょっと物足りなかった」とか「この時だから書けたのか」とか「うわぁ‥‥(汗」などと…

固有名詞が出てこない

よく知っているはずの固有名詞、特に人名が出てこなくなるという脳の老化を初めてはっきり自覚したのは、10年くらい前、40前後の頃だった。 今でもよく覚えているが、友人二人とラーメン屋に入って映画の話になり、ある女優の名が思い出せなくなった。私より…

養老の滝の二人

数日前、ふらりと養老公園に行った。高速を使うと、家から40分くらいで行ける。 養老山麓にある公園は広く、荒川修作の「養老天命反転地」*1を初めテニスコートやゴルフ場、子供向けの施設などがあり、25分くらいかけて登っていくと養老の滝に着く。紅葉が盛…

修学旅行

先週、修学旅行らしい学生たちを駅で見かけた。修学旅行を一学期に行う学校も多いようだが、やはり10月から11月にかけてがそのシーズンだ。 子供の頃、幼稚園を休んで、高校教師の父の引率する修学旅行に付いていったことがある。昭和30年代の話。昔のアルバ…

小津と成瀬の「やれやれ」と結婚詐欺女

去年のことだが内田樹がブログに、小津安二郎の戦後の映画はほとんど「娘を結婚させる話」だと書いていた(こちらの記事で言及)。1950年前後から後のホームドラマは確かに、周囲の大人がよってたかって年頃の娘を何とか結婚させようとする話が多い。 一向に…

人生のピークって何だろう

「大野さんのピークはいつだった?」 少し前のことだが、中年(40代後半)の人達と雑談の最中、いきなり聞かれて言葉に詰まった。私のピーク? いつだったんだろう。そんなものあったんかいな。考えたことがなかったです。 あなたのピークはいつでしたか? …

高峰秀子もL.ディカプリオもK.キンスキーも丸顔ですね

タイトルに特に意味はありません。 映画ばかり観ているのは何の現実逃避でしょうか、暇を見てはDVDを鑑賞している毎日。 「ビデオinアメリカ」が、この週末3日だけ「旧作一週間90円レンタル」という企画をやっていました。7本借りてたったの630円。素晴ら…

「男ってやっぱり朝出て晩帰ってくるようにできてんのね。よその奥さんは旦那さんが留守だと気楽でいいって喜んでるの。私、不思議だったけどわかったわ」

「晩のおかずは何だい?」 「晩は未定です」 「なにかご馳走して頂けますか?」 (間) 「あ、そうだ、薬飲むの忘れた」 (間) 「散歩に行こうか。それとも‥‥‥しかしもう遅いな」 「でも○○(聞き取れず)か井の頭くらいなら」 「子供みたいだな、いい歳して…

ヒーローなき時代の暴力と絶望と「父」の現れ - 『グラン・トリノ』と『ノーカントリー』

この10年くらい劇場で新作映画を観る習慣がほとんどなくなってしまい、もっぱらレンタルDVDのお世話になっている。最近見たDVDの中から、近年の話題作二本。『グラン・トリノ』(2008、監督:クリント・イーストウッド)、『ノーカントリー』(2007、監督:…

「骨」で骨抜きにする話

子供の頃にテレビで観た映画の物語はすっかり忘れているのに、ある場面、ある台詞だけが妙に記憶に残っていることがある。 先日「骨」について書いたので、その「骨」絡みで忘れ難い台詞について。喋ったのは佐久間良子。 佐久間良子と言ってももう御年70歳…

ネズミにはネズミの、ネコにはネコの・・・琵琶湖博物館で『骨の記憶』を見た

この間、滋賀県立琵琶湖博物館で開催されている企画展示『骨の記憶 - あなたに刻まれている五億年の時 - 』を見てきた。実は、それを見に琵琶湖近辺まで行ったのではなく、その近くの温泉に行く(人生には時々温泉が必要であることをこの歳になって実感)途…

たまに見かける「ぼん敵」認定についてのメモ

だいぶ前に「ぼんやりサヨク」という言葉で盛り上がっていたようだが、ぼんやりしていたので完全に話題に乗り遅れた。代わりに「ぼん敵」について書く。 「ぼん敵」とは何か。「自分にとってぼんやりとした敵」のことである。なんとなく気に食わない奴、それ…

ジジェクの『羅生門』分析について(AntiSepticさんへの私信)

※私信の前に:下記リンク先(含コメ欄)を読み黒澤明監督の『羅生門』をご覧になった方(できればジジェクの『ラカンはこう読め!』も)以外には、何が書かれているのかわかりにくい内容であることを最初にお断りしておきます。またジジェクのテキストについ…

『ラカンはこう読め!』の日本語版序文にある『羅生門』解説の一部が疑問な件

ジジェクさん、それ書き間違い‥‥? スラヴォイ・ジジェク著の『ラカンはこう読め!』(鈴木晶訳、紀伊國屋書店、2008)は、ラカンの理論を駆使して映画や小説、時事的話題を分析していくもので、ラカン入門書というよりは「(あらゆる事象を)ラカン*で*こう…

姪のメール

身内というのは灯台元暗しなものである。神奈川方面に住んでいる妹に、自分の本のお知らせをしてなかったことを思い出して一昨日送ったら、今日なんと妹の娘、つまり姪から御礼のメールが来た(↓絵文字省略)。 「本、届きました ありがとうございます!凄い…

「いないいないばあ」と猫

タマはキジトラの雄猫である。今年始めに去勢手術で病院に連れていった時、お医者さんが「ほんとに面白い子ですね」と感心するくらい人懐っこい猫だが、一歳三ヶ月になって、少しは落ち着いてきたような気のする今日この頃。 ある時タマは、タンスの上で四肢…

晶文社が文芸編集部門を閉鎖したというニュース

あちこちで話題になっていたのに今頃気づく。↓こちらに関連記事がまとまっている。 晶文社が文芸編集部門を閉鎖 - 【海難記】Wrecked on the Sea 上の記事でもリンクされている8/30付けの朝日新聞記事では、「文芸一般書の新刊については、今までの半分以下…

芸術家の行く末

この間、ある集まりの後の飲み会で、爆笑問題の番組『爆笑問題のニッポンの教養』に坂本龍一がゲストで出演したという話が出た。誰もその回を見てなかったのだがその人の話によると、太田が好きな音楽としてサザンをかけると坂本はうんざりした顔をし、「歌…