プライドと理想が高く愛想と口が悪く世渡りの下手な一匹狼のすべての職業人に(連載更新されました)

映画から現代女性の姿をpickupする連載「シネマの女は最後に微笑む」第47回がアップされています。今回取り上げたのは、『ある女流作家の罪と罰』(マリエル・ヘラー監督、2018)。

 様々な賞にノミネートされた佳作ですが、日本では劇場公開されてない模様。自伝を元にした、文書偽造を巡る苦味とユーモアの効いたドラマです。

 

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中年の主人公は、かつてはヒットを飛ばしたものの今は不遇の孤独な伝記作家。共感できるかも‥‥と一瞬思うこちらの出鼻を挫く性格の悪さ、見てくれのダサさにドン引きしつつも、ブラック風味な展開に引き込まれ、気づいたら彼女の犯罪を応援したい気分になってしまっています。ヤバい。

 

コメディエンヌとして有名なメリッサ・マッカーシー、シリアスとコメディ半々の演技が素晴らしいですが、それにも増して、リチャード・E・グラントが演じる能天気なゲイのイカサマ師のキャラが最高です。この二人の、喧嘩しながらも通じ合っていく感じがまたいい!

 

わがままでプライドと理想が高く、迎合も妥協も一切したくないが、愛想と口が悪く世渡りの下手なすべての1匹狼の職業人にオススメします。

 

 

 

 

 

彼女はレイプ犯と何を「共有」したのか‥‥ 『エル ELLE』(連載更新されています)

映画から現代女性の姿をpickupする「シネマの女は最後に微笑む」第46回は、イザベル・ユペールが被害者然としないレイプ被害者を演じて話題になった『エル ELLE』(ポール・バーホーベン監督、2016)を取り上げています。

 

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バーホーベンらしいコッテリ風味にスピード感が加わった、ミステリー仕立てのドラマ。登場する男たちが皆それぞれ問題を抱えていたりして、いわゆる「普通」の人が出てこない捻くれた設定ではあるものの、犯人は割と早い段階でわかります。

激しい暴行場面が何度もありますが、レイプ犯罪を告発していくといった内容ではなく、むしろヒロインとレイプ犯との間に「共有」されるものが問題となります。ヒロインの行動の動機も最初はなかなか読み取るのが難しく、好みは分かれるかもしれません。

 

やはりクールさが魅力的なイザベル・ユペールでなくては‥‥という映画です。還暦過ぎてよくこの役を引き受けたなと、チャレンジングな姿勢に感嘆。自分を陥れた若い部下への対応などゾクゾクします。

拙書『あなたたちはあちら、わたしはこちら』では、ユペール主演の傑作『ピアニスト』について、彼女の魅力とともにたっぷりと書いてます。イラストも。どうぞよろしく。

 

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あなたたちはあちら、わたしはこちら

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カジノに集まるアメリカ富豪の闇が興味深い『モリーズ・ゲーム』(連載更新されています)

映画から現代女性の姿をpickupする「シネマの女は最後に微笑む」第45回は、横浜市のカジノ誘致の件を枕に、ジェシカ・チャステインがカジノの経営者を演じた『モリーズ・ゲーム』(アーロン・ソーキン監督、2017)を取り上げています。

 

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実話(自伝)が元になっています。

ジェシカ・チャステインは、去年取り上げた『女神の見えざる手』の敏腕ロビイストと、かなりキャラがかぶっています。決定的なダメージを相手に与えず、罪は罪として受け止めるという清々しい姿勢も共通項。

こういう頭が切れて鋼のような女の役が、非常に良く似合う女優ですね。顔が濃くないところが逆に怜悧で抑制された雰囲気が醸し出されていると思います。

 

ヒロインの行動に影響を与える父親との関係性が通奏低音のようにあり、同じく「父の娘」である私には、とりわけ前半で刺さる場面が結構ありました。

後半は、夜な夜なカジノに集まるアメリカの富裕層の病み(闇)っぷりが見どころです。

 

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これまで連載で取り上げた映画一覧はこちら。

大野 左紀子 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

「錆と骨」の方がずっといいタイトルだが邦題は「君と歩く世界」(連載更新されています)

先月下旬はお盆でお休みだったわけではないです。バタバタしておりまして、告知をすっかり忘れてました。

このブログ、連載のお知らせだけになったとは言え、また読んでいる方も少ないとは言え、一ヶ月も放置はよくないですね。すみません。

 

映画から現代女性の姿をpickupする「シネマの女は最後に微笑む」第44回は『君と歩く世界』(ジャック・オーディアール監督、2012)を取り上げています。

 

 

原題はDe rouille et d'os。英題はRust and bone。この「錆と骨」の方が、「君と歩く世界」よりこの作品の世界観を正確に表していると思うのですが、どうして邦題はこういうフンワリ系になってしまうのか。

 

ところで今回は例外的に、男性が主人公です。シングルファーザーの失業者を演じるマティアス・スーナールツの、繊細な演技が見所。幾分粗野で優しいところもあるが愛を知らない男の、徐々に哀しみを醸し出してくるあたり、非常にいいです。

クレジットでは、大女優となったマリオン・コティヤールの方が先になってます。もちろんコティヤールも文句なしに素晴らしい。

 

出会っているのに微妙なところですれ違ってしまう男女の物語を通して、「身体とは?」という問いかけが浮かび上がってきます。

結構ハードな場面もありますが、南仏の光に溢れた映像とダイナミックなカメラワーク、意表を突く展開に引き込まれます。おすすめ。

 

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安全な道より冒険に賭けたら肚を括らねばならぬ(「シネマの女は最後に微笑む」更新されました)

連日お暑うございます。

映画から現代女性の姿をpickupする「シネマの女は最後に微笑む」第43回は、近年相次ぐ重要公文書の改竄、紛失の件を枕に、2017年の話題作『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』を取り上げています。


「継承か革新か」正義を前に揺れた女性ジャーナリストの矜持 - ForbesJAPAN

  

 
トランプ大統領就任後、スティーヴン・スピルバーグが一年で撮り上げたという本作の意図は非常にはっきりしていて、それこそ最近、「あいちトリエンナーレ」内の「表現の不自由展・その後」でクローズアップされた「平和の少女像」と同じくらいメッセージ性は強いと言えるのですが、エンターテイメントとしてよくできた作りなのはさすがです。奇をてらわない安定感と無駄のないドラマ運び。
ダミ声のティム・ロビンスが主役かというくらいカッコいいですが、メリル・ストリープの抑え気味の演技がやはり素晴らしいと思います。

どんなことにしても、表に出したものに対して様々なリアクションがあるのは当然で、最終的にはどれだけの確信を持ってそれを提示できたか、だけが問われるのですね。

スカッとする犯罪コメディで暑気払い(「シネマ〜」更新されました)

あまりの暑さにボンヤリしていて、こちらでの告知を忘れておりました。。


映画から現代女性の姿をpickupする「シネマの女は最後に微笑む」第42回は、2008年の犯罪コメディ『デンジャラスな妻たち』(カーリー・クーリ監督)を取り上げています。原題は『Mad Money』。


棄てる金ならもらってしまえ! 瀬戸際の女たちの横領作戦 | ForbesJAPAN

 

デンジャラスな妻たち [DVD]

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中心的に描かれるのはダイアン・キートンが演じる小金持の主婦ですが、夫のリストラで経済的にピンチとなった時、これまで視界にも入れなかった女達と共闘するところが、この作品の肝だと思います。『Oceans8』ほどカッコ良くなく手口もチープなところが、逆に良い。
なかなか痛快で面白い作品なのに、日本では劇場公開されてないようです。


カーリー・クーリ監督、『テルマ&ルイーズ』の脚本家として有名ですね。連続殺人犯アイリーン・ウォーノスと恋人をモデルにしているけれど大幅に脚色されていて、元の話に近いのはシャーリーズ・セロン主演の『モンスター』。私はどちらの作品も好きです。
テルマ&ルイーズ』は1991年。当時はまだ、男性7人を殺害したシリアルキラーセックスワーカーをヒロインにすることはできなかったのでしょう。『モンスター』は2003年。この12年で何かが少しずつ変わっていったんだと思います。

樹木希林の台詞に隠された深い含蓄を上等なお茶のように味わう『日日是好日』(「シネマの女は最後に微笑む」第41回更新)

映画から現代女性の姿をpickupする「シネマの女は最期に微笑む」第41回は久々の邦画です。

キム・カーダシアンの例のKIMONO騒動を枕に、着物、お茶つながりで樹木希林黒木華が共演した『日日是好日』(大森立嗣監督、2018)。


今わからなくてもいつかわかる。師から教わるお茶と人生の妙味 - ForbesJAPAN

(画像はイメージ)

 

日日是好日 通常版 [DVD]

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原作は、森下典子のエッセイ「日日是好日─『お茶』が教えてくれた15のしあわせ」。一人の女性の約二十年に渡る歳月が、シーンごとの季節の移り変わりの中で、水彩画のようにスケッチされています。
雨など自然の水の描写、水の音が印象に残ります。水(湯)を使う茶道でも、密やかな水の音が。水音の映画と言ってもいいくらいです。
もちろんお茶のシーンもたっぷり。これを観て「お茶やってみたいな」と思う人はいるのではないでしょうか。
比較的地味な小品といった感じですが、お茶の師匠を演じた樹木希林の台詞の端々から覗く深い知見と含蓄に、時折はっとさせられます。

 

主演の黒木華、少し屈託を抱えた役をうまく演じていますが、ずっとロングヘアなのを最後の方、ショートのカツラで出てくるのが残念。明らかにカツラとわかるので。あそこは着物だし、ロングのまま後ろでまとめるヘアにしてほしかったです。それで20代の頃との違いはちゃんと出せると思うんですよね。
あと、従姉妹役の多部未華子がなかなか良いです。

 

樹木希林は役柄らしく、地味目な無地や小紋の着物で登場。とても自然で楽そうで板に着いた着姿、密かに目標にしたいです。

希林さんの普段の着物はまた個性的で全然違っていたのを、雑誌などで時々拝見しました。来月出る『樹木希林のきもの』が楽しみ。