『生きものの記録』と『太陽を盗んだ男』の間にいるわれわれ

映画コラム更新されました。

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以下、本文からの抜粋でご紹介に変えさせていただきます。ぜひお読み下さい!

 

1月に亡くなった長谷川和彦監督の『太陽を盗んだ男』(1979)は、原発からプルトニウムを盗んで個人で原子爆弾を作ってしまった高校教師・城戸誠(沢田研二)が主人公だ。国家しか保有できない核兵器を個人が持つ、それによって名もない一人の人間が国家を脅かす存在になるという意表を突いた設定の本作は、今なおカルト的人気を誇っている。

 

核兵器という脅威ほどあらゆる物事に影響を与え、人を動かす力を持ったものはない。この観点から今回『太陽を盗んだ男』と比較してみたいのは、黒澤明監督の『生きものの記録』(1955)だ。原水爆の放射能汚染の恐怖に取り憑かれ、私財を投げ打ってブラジル移住を画策する鋳物工場主・中島喜一(三船敏郎)が登場する。彼は、「加害者」然としている城戸とは反対に、強い「被害者」意識に突き動かされている。


この二作品の間には、1950年代半ばから1970年代末までの核や原子力を巡る社会情勢の変化のみならず、戦争を体験した世代と戦後世代の相違がくっきりと浮かび上がっている。ただ、いずれもそれぞれにとっての闘いを描いているという点では変わらない。それは、反核や反原発といった平和運動、社会運動からすれば”邪道”な、世界から孤立した個人の闘いだ。

 

恋もしてないのに心臓キュッとなるおばさん早く病院に行け



飼い犬タロになっているつもりで詠む「犬短歌」、2025年下半期の歌です。
気に入ってる歌の最後には*マークをつけてます(/サキコとあるのは私名義の歌)。
タロは今月で12歳になりました。人間だと還暦です。最近胃腸が弱くなったのかたまにお腹を壊しますが、それ以外はとても元気。タイトルの歌ですが、その後私は病院で狭心症と診断され、心臓の冠動脈にステントを入れました。タロと一緒に走るのは、なるべく控えねば。

では、来年もどうぞよろしくお願い致します。


◆ 七月

七夕の願い事なら暑過ぎる夏はやめての一択だろう

犬なのに水の嫌いな俺だけど天の川なら泳げそうだよ

犬(けん)議員選挙の告示はいつですか まだ立候補間に合いますか

アゲハチョウ翅失ってニッポンの二番目に長い夏の始まり

畑から帰る農夫をUFOの光が照らす夏の夕暮れ  *


◆ 八月

遠くから眺める花火諦めてパソコン画面を見る君寂し

スズムシに鳴くの上手になったねと話しかけてる老母の背中/サキコ

死者たちの魂抱いて三百万匹の蝙蝠舞う盆の夜  *

そんな歳には見えないと褒められたのは飼い犬で君じゃないのだ

 

◆ 九月

重陽の日の積乱雲 この夏に後足で砂かけてやるのさ

恋もしてないのに心臓キュッとなるおばさん早く病院に行け  *

飼い主が知っているのはタロという犬だけ 俺のことは知らない

 

◆ 十月

コスモスのように優しい花じゃないポンポンダリアはきみに似ている  *

俺の詠む短歌は俺のものなのに著作権だけ飼い主のもの

山へ行きお腹の空いたクマさんにおれのおやつを分けてあげよう

 

◆ 十一月

心臓が強いくせして弱い人 俺はいつでもドキがムネムネ

寒い朝 空に点々浮かぶのは 昨夜おまえが丸めたティッシュ  *

あのひとにブラックジャックが施術した鉄の心臓おくれ俺にも

葉の上にセキレイ一羽止まらせて冬大根の茎は健やか

 

◆ 十二月

犬たちが服着始めて自分だけ裸に見える初冬の散歩

あのひとをツイ廃人にしないため午後は三回外に連れ出す

赤ちゃんや犬にサンタの服着せてどうしたいのか人間どもよ  *

昔のSF映画で考える「人の愛しているものは何か?」

今年最後の連載映画コラム、モチーフはAIです。

 

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数年後にはさまざまな産業で人型ロボットが爆発的に普及するとの予測もある中、癒し用人型ロボットが登場するのも時間の問題かもしれない。

おそらくそこで、「人間が同じ人間に向ける愛と、人間そっくりの対象に向ける愛とは、まったく同じなのか?」という問いが浮上してくるだろう。

 

A.I.』(スティーブン・スピルバーグ監督、2001)は、今見直すと公開当時より現実味を帯びたディストピア感が強まっていると感じます。スピルバーグのヒューマンな味付けでそのあたりが中和されてますが。
惑星ソラリス』(アンドレイ・タルコフスキー監督、1972)は大好きな作品です。観るたびに発見があります。今回は、ソラリスの海を人工知能に重ねて解釈してみました。
是非お読み下さい。

 

今年の漢字は「熊」ということでクマ映画2本

バタバタしていて、ここでの告知をすっかり忘れておりました。。。
今年の漢字は案の定「熊」でしたね。それを見越して(?)書いた今回では、二つのクマ映画を取り上げてます。

 

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ハリウッドのクマ映画はパニックもの、ホラーものが多いですが、邦画は一味違います。
『リメインズ 美しき勇者(つわもの)たち』(千葉真一監督、1990)は、大正末期の「三毛別羆事件」をモデルにした女しか食わない人喰いグマとマタギたちの死闘、『デンデラ』(天願大介監督、2011)は、姥捨山で生き延びた老婆と母グマの駆け引きがクライマックスにあります。
共通する「女」というタームから、二作品を読み解いてみました。どうぞお読みください。

 

次回は、生成AIの著しい浸透を前振りに、『A.I.』(スティーブン・スピルバーグ監督、2001)と『惑星ソラリス』(アンドレイ・タルコフスキー監督、1972)を取り上げます。
ちょっと昔のSF映画を、今の視点から見直してみたいと思います。

 

外山恒一氏の件についての全ツイート2

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上の続き。外山氏は、アキノリが自ら切断し外山氏に押し付けたホルマリン漬けの小指を、警察署に持って行った。その後、アキノリ氏、続いて775リス氏が警察から事情聴取されている。外山氏との公開討論について、775リス氏はまだ返事をしていない(おそらく断るものと思われる)。

前の記事に続いてこの記事は、自分のツイート、及び外山氏とのやりとりを後から読み返し、論点を整理するために書いている。

 

 

 

 

 

 

高市早苗は日本のサッチャーになれるのか?(連載更新)

連載コラム「映画は世界を映してる」、更新されております。
今回は時局的にこれだろうと思いました。 

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以下、冒頭から引用しておきます。

近年、世界中で女性の政治リーダーが数多く誕生している中、先進国ではイタリアのジョルジャ・メローニ首相やフランス「国民連合」のマリーヌ・ルペン党首のような保守や右派が目立ってきている。その先駆は言うまでもなく、1979年から1990年まで11年半に亘ってイギリスの首相を務めたマーガレット・サッチャーだろう。

サッチャーを信奉しているという高市早苗議員が自民党総裁に就任した時、イギリスの主要メディアは早速、彼女を”Japan’s Iron Lady”と紹介した。総裁選の党開票日の、目を射るようなブルーのスーツにパールのネックレスという装いは、明らかに往年のサッチャーを意識していたと思われる。

 

原題は”The Iron Lady"。邦題の「鉄の女の涙」は、説明っぽくてあまり好きではありません。首相時代に泣く場面もないし。
政治家サッチャー認知症になった老女サッチャーを交互に描きながら、歩みを辿る試み。ちょっと皮肉な視線も感じさせつつ、かなりうまくバランスを取ってます。
老いたサッチャーにしか見えない亡き夫デニスが登場し過ぎなのが、個人的にはちとウザいのですが、とにかくメリル・ストリープの演技というか憑依っぷりが見ものです。

米騒動に明け暮れた今年、再見したい映画『ごはん』

連載コラム、更新されております。
お米問題に振り回された今年。今回は、『ごはん』(安田淳一監督、2017)を取り上げてます。あの話題作『侍タイムトリッパー』(2024)の監督です。

 

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父の死で米農家の実家に一時帰省した若い女性が、渋々稲作に関わるようになる。相次ぐ試練にささやかな助け。彼女と亡き父との確執も徐々に明らかになる‥‥という展開。
ともかく田んぼのさまざまな表情を捉えた映像が美しく、最後は炊き立てのご飯が食べたくなります。知ってるようで知らない米作りの細部や出荷までの過程も、丁寧にドラマに盛り込まれてます。

農家を巡る問題は深刻ですが、隅々まで清々しく端正に作られた作品です。

ぜひご覧ください。