父には『家族を想うとき』なんかなかった(連載更新しました)

「シネマの男 父なき時代のファーザーシップ」第21回は、ケン・ローチ監督の『家族を想うとき』(2019)を取り上げてます。

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原題は「Sorry We Missed You」(ご不在につき失礼します)。邦題からは思いもよらない”宅配の地獄”が描かれています。
しかしこの邦題、もうちょっと何とかならなかったのか?と思います。確かに、主人公には「家族を想う」気持ちがあって過酷な労働に駆り出されていくのですが、働き始めたらそんなことを想ってるような余裕がない。とにかく余裕がないことで軋みが生まれ、悲劇の引き金になっていくのです。

 

実際に起こった事故をヒントに作られたドラマです。淡々と事実を積み上げていく無駄のない演出もいいですが、役者がみんなハマってます。特に、長男セブを演じるリス・ストーンがすごくいいんですよね。イギリスの労働者階級の少し屈折した少年の感じがリアルです。
イラストは、主演の父親リッキー役のクリス・ヒッチェンの顔。公式サイトによれば「配管工として20年以上働いたのち、40歳を過ぎてから演技の道」に入った人だそう。

 

次回は、古田新太松坂桃李が共演した『空白』(𠮷田恵輔監督、2021)を取り上げます。ForbesJapanにて10月21日(土)18:00の公開です。