連載「映画は世界を映してる」第二回は、『パラダイス・ナウ』(ハニ・アブ・アサド監督、2005)を取り上げています。
パレスチナの二人の若者が対イスラエルの自爆テロ要員に選ばれてからのまる二日を、彼らの日常を交えて描いた秀作。
途中からの何とも意外な展開については書いています(普通の作品紹介でも大体明かされている)が、具体的な結末には触れてません。是非お読み下さい!
画像の一番左が主役を演じたカイス・ナーシェフ、隣がその親友を演じたアリ・スリマンです。
テロリストには狂信的な人間像が当てはめられがちですが、ここでは普通の生活者である彼らの日常の延長線上に、テロという政治行動が位置付けられていることがだんだんわかってきます。同じパレスチナ人の自爆テロへの疑問や、彼ら自身の迷いも繊細に描かれます。
さまざまな賞を受賞した本作DVDに併録されている日本語吹替版には、作品に感銘を受けた井浦新と窪塚洋介が出演(ただアリ・スリマンの役に当てている窪塚洋介の声があまりに窪塚洋介で、アリ・スリマンが喋るたびに窪塚洋介の顔が思い浮かんでしまいました)。残念ながら配信はないようです。今こそどこかの劇場で上映してほしいものです。
ちなみに記事表題は最初「私たちはテロリストの素顔を知らない|(映画タイトル)」を提案したのですが、編集者によって変更されました。若干刺激が強いのと、「テロリストの素顔」と言うと、今は桐島聡氏が想起されてしまうからかなと思っています。
記事の終わりの方で、『テルアビブ・オン・ファイア』(サメフ・ゾアビ監督、2018)を短く紹介しています。主演は同じくカイス・ナーシェフ(←めちゃイイです!)。イスラエルによるパレスチナ支配の中で、両者の関係をこうしたコメディによく落とし込んだものだと感心します。今ではもう作れないかもしれません。
次回は、昨年もっとも話題になったあの作品を取り上げる予定です(提案が通りますように)。