身体、それは最後の抵抗の場・・・『バービー』

「映画は世界を映してる」第3回は、アカデミー賞の賞レースにはあまり噛めなかったものの、話題性では昨年の洋画を代表すると言っても過言ではない『バービー』グレタ・ガーウィグ監督)を取り上げています。

forbesjapan.com

 

ネット上でも様々な観点からのレビューが出ていましたが、作品の一筋縄ではいかない構造と多様な読みの可能性から、「フェミニズム映画」と見る人、「アンチ・フェミニズム映画」と見る人に分かれていたのが非常に興味深かったです。

それらの反応を踏まえつつ、もう一歩深く踏み込んで書いてみました。ぜひお読み下さい!

 

以下、本文より抜粋。

 

1959年の定番バービー発売以降、この約65年間に、西側先進諸国を中心として女性の地位は向上してきた。あらゆる分野に女性労働者が進出し、女性の起業が奨励され、「女性が輝く社会」といった言葉が流通し、さまざまなジャンルに成功した女性が数多く登場した。

こうした中で先にも触れたように、マテル社は20年ほど前から、現代の多様で個性的な女性像というフェミニズム的なニーズを察知し、「何にだってなれる」という夢と共にあらゆる職業のバービーを世に送ってきた。「さまざまな個性」を基盤とした「多様性」は、現代社会の金科玉条である。

[中略]

現代社会では、人々は「生産する主体」以前に「消費する主体」に位置付けられる。少女たちも”多様”なバービーを消費し、”多様”な夢を見せられる。しかしそもそも、大統領や医師や売れっ子作家から道路工事の作業員まであらゆる職業のバービーをつくったところで、実際には誰が道路工事の作業員として「輝ける」と積極的に思うだろうか。