夫の言動

昨日の晩、
「コンビニにタバコ買いに行ってくるけど、何か買うものあるか」
と夫に聞かれたので
「ない」
と答えた。するとややあって、
「もう帰ってきません」
と夫は言った。
別にその時喧嘩をしていたわけではない。よくそういう冗談を言うのである(私は冗談でなく、言ったことがあるが)。冗談でも受けてやろうと思い、一応
「帰ってこないでどうすんの」
と聞くと、
「ホームレスになる」
タバコ買いに出かけたままふっつり消息不明‥‥というのをやりたいと。
「仕事も家のローンも何もかも投げ出してな。気持ちいいだろうなあ!じゃ、さようなら」
と言って、夫は出て行った。私も
「ハイさようなら」
と言った。何という会話だ。


ずっと前、ドライブに出かけた時のことを思い出した。そろそろ帰路につく頃なのに、どんどん家とは反対方向に車を走らせていく。不審に思い、
「どこまで行くの」
と尋ねると、
「どこまででも行く」
見ると、なんとなく目が据わっていた。
「どしたの」
「もう帰りたくない」
「帰りたくないって」
「このままどっか遠くに行きたい」
はあ? 純愛物語のセリフならいいが、条件と状況が違い過ぎる。
「どっかってどこ」
「わからん」
「ここどこ」
「知らん」
もちろん1時間後くらいに帰ってきたのであるが。


で、昨晩も帰ってきた。おそらく行きつけのバーかスナック。直接聞いてはいないが、そのくらいしか行くところがない。そのくらいしかなくて惨め、と言うべきか。そのくらいでもあればいい、と言うべきか。
「ホームレスになれなかったね」
と言うと、夫は
「さようなら」
と言って二階に上がっていった。