彼女に何か言えることがあるとしたら

昔、恋人のいる人をすごく好きになってしまったことがあった。毎日その人のことを考え、どうしてもその人と付き合いたい、抱きしめられたい、キスがしたい、セックスしたいと思った。彼女がいてもいい、一回セックスできたらそれで満足とまで思い詰めた。
そしてついにその人に好きだということを打ち明けたら、あっさり付き合えることになった。でも恋人とは別れないという前提付き。
私はそれでもいいと言った。その時は本当にそう思っていた。そして、その人に自分が性的に承認されたことに有頂天になっていた。


何度か一緒に食事をしセックスをした。一緒にいる時、その人はとても優しかった。増々その人のことが好きになった。
だがそのうち、私は苦しくなってきた。彼女からこの人を奪いたい。この人のたった一人の人になりたい。私以外の人とはセックスしてほしくない。最初に「それでもいい」と思った前提はみるみるうちに崩れた。よくある話だと思う。


なんとかして、自分の方を振り向かせようと頑張った。苦しくて毎日のように泣いた。みっともないとは思ったが、何かにつけて泣けてくる。
つらいという気持ちが相手に伝わったのだろう。最初からその約束のはずだったけどと言われた。‥‥そうですよね。わかりました。
そこで「やっぱりこういうのは私ダメです」と言って別れればよかったのに、未練があり過ぎてそれができなかった。もうこの人しかいない。どう考えていっても結論はそこに至る。既にプライドも何もない状態。


その後私はだんだんとおかしくなった。自分では気づかなかったが、やたらとその人のいろんなことに口を出し、必要以上に心配した。自分が相手にとっていかに重要な人間かを印象づけるのに必死になった。さぞ鬱陶しかっただろうと思う。
結局その人は私から去っていった。その人のセックスの対象にはなれてもそれ以上ではなかったという事実が、私を打ちのめした。


強い恋愛感情がなくてもセックスできる人はいる。セフレを作れる人もいる。でも私にはそれができないことがよくわかった。そういう人とつきあうこともできない。
だがその当時、まだ恋愛経験の浅かった私は、自分がどういう種類の人間かよくわかっていなかったので、闇雲に突き進んで傷を深くした。


セックスによって性的な承認を与えられることは一時的な自信にはなるが、それは相手を独占し独占されたいという燃えるような感情に簡単につながってしまう。若い時は特にそうだ。
セックスは大抵、誰にも公開しない二人だけの秘められた行為だからこそ、そこで相手と唯一の何かを共有できたと思うのだ。物理的な快感だけでなく、そう思えることがセックスの醍醐味なのだからそれは仕方がない。


誰でもいいから抱きしめてほしい。一度でいいからセックスしたい。「友達」じゃなくて「男」が欲しい。それはどうにも無視できない病のような欲求だ。
性欲だけを満たすのなら男を買ってもいいかもしれないが、自分の心情も背景も知らない人との金銭を介した性行為ではたぶん駄目なんだろう。求めているところは違うと思う。
でも一晩か二晩だけの夢を心の支えにして、その時の思い出だけで生きていくには、人生は長過ぎる。


私が彼女に何か言えることがあるとしたら、このくらいしかない。
あまり役には立たないのかもしれないけどね。


来年二人きりで会えませんか…?(OKなら三日以内にメールください)
メールが何通か来たんですが…できればブロガー希望です