アート

芸術と政治と言葉についての短い考察

あいちトリエンナーレ2019開催中、朝日新聞東海版朝刊(2019年9月23日)に掲載された拙文です。半年以上経ってますが、芸術と政治について触れたテキストとして上げておきます。 タイトルは編集者がつけています。テキスト内容は、政治や社会について「芸術…

対話が隠蔽する「加害」としての芸術

「さいたま国際芸術祭2020」https://art-sightama.jp/jp/の中の「市民プロジェクト」の一環として作られた批評誌に、拙文を寄せております。 芸術祭は新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、開催を延期したまま当初予定されていた会期が昨日終わってい…

加害の引き受けと陥没のエレガンス/藤井健仁展テキスト

鉄を素材に彫刻を作り続けている藤井健仁の個展「ABJECTION X」が、来週から日本橋高島屋S.C.本館6階美術画廊Xにて開催されます。DMに掲載された拙文を、作家の了承を得てこちらに転載します。 ● 加害の引き受けと陥没のエレガンス 労働 アートと呼ばれるも…

80年代の名古屋に「アートシーン」はあったのか

以下は3年ほど前、「80年代のオルタナティヴなアートシーンについての資料集を編纂するので、当時の名古屋の状況について書いてほしい」という、知り合いの東京の美術関係者の求めに応じて書いたものです。結果的にその企画は頓挫し、私の原稿は宙に浮いた…

トークライブ登壇のお知らせ

みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ2018に関連して、東北芸術工科大学で行われる展覧会の関連企画トークライブに登壇します。 AGAIN-STという彫刻を考える集団の一人で、学芸員の石崎尚さんからオファーを頂きました。今回は「カフェと彫刻」がテーマだそ…

絵を描く老女‥‥「丸木スマ展」を観て

人は大人になってから、どんなきっかけで絵を描き始めるのだろうか。 子どもの頃からずっと描いていた人が、社会人になって多忙で休み、仕事から解放されてから再開するという話は時々聞く。見る方専門だった人が、ある時趣味の手習いで始めたというケースも…

『抽象の力』と『描かれた大正モダン・キッズ』を観て

(※Twitterでの呟きに大幅加筆・編集しています) 先週末、会期があと一週間となった『岡崎乾二郎の認識 抽象の力──現実(concrete)展開する、抽象芸術の系譜』展*1を観に、豊田市美術館へ。チラシデザインがカッコいいので追加。 表題文字の線、サム・フラ…

人はなぜ女の子の絵を描くのか・・・『絵を描く人々』更新

絵を描く人々 第12回 日本・お絵描き・女の子 - WEBスナイパー(18禁サイト) マンガ・アニメやイラストから現代絵画に至るまで、今ほど女の子の絵が盛んに描かれ、見られている時代はないのではないか‥‥‥この十年近くずっと抱いているそんな印象から書き起…

前衛、野グソ、「先験的廃業」

またセルフTogetterです。7日から一週間ほど、集中的にアート関連のtweetをしたので、抜粋の上まとめておきます。(※参照)はここで追記。 3月7日 本来は(いい意味での)アート未満のものやことが、アートとして位置付けられたとたんにつまらなく見えてくる現…

美術をインストールされた受動体としての作家/梅津庸一「未遂の花粉」とシンポジウム「前衛、近代、コミュニティの再設定」感想

昨日、愛知県立美術館で開催中の梅津庸一展と、関連して行われたシンポジウムに行ってきた。その時感じたことなどをつらつらと。長いし結論はない。 梅津庸一については、黒田清輝の大作『智・感・情』を自らのヌードに置き換えて点描画法で描いた作品で話題…

永遠のうさこちゃん

ディック・ブルーナさん死去 89歳「ミッフィー」作家 1959年生まれの私は「うさこちゃん」世代です。シリーズで初めて読んだ絵本は「うさこちゃんとうみ」。今は「ミッフィー」世代の姪のところにあります。 タオルケースはいつも講義の時、手を拭くハンドタ…

ちくさ正文館と喫茶モノコト

昨日、久しぶりに、ちくさ正文館に行った。 名古屋では有名な人文系老舗書店。昔、近くの河合塾美術研究所で働いていた頃、しょっちゅう通っていた。歴史・思想・哲学・芸術系が充実していて、棚を眺めているだけで楽しく、長時間入り浸っていた。知的刺激を…

朝日新聞のコラム「百聞より一見」

東海ローカルな話です。 一昨年の5月から、朝日新聞東海版文化面のコラム「百聞より一見」(毎水曜朝刊)に、一ヶ月か一ヶ月半に一回の割合で展覧会コラムを書いています。 今日の紙面では、名古屋市美術館常設展示室3で開催中の、河村るみ「介(かい)- …

アヒルと非常事態・・・“I will fly” 竹内孝和展を観て

間口の狭いガラス越しに、奥の白い壁にカラフルな色彩が糸を引いているのが目を捉える。中に入ると、8畳ほどの小さな縦長の空間の床には緑の人工芝が敷き詰められ、人の通れるくらいの通路を残して三分の二ほどが低い柵で囲われている。画廊の人の座ってい…

トークセッションのお知らせ

今月17日(土)、静岡でトークセッションに参加します。静岡県芸術祭の関連イベントです(なんか最近、静岡づいています)。 以下は、チラシ文面の書き起こし。 第56回静岡県芸術祭 ふじのくに芸術祭2016 大野左紀子 × 大岡淳 トークセッション 「誰でも表現…

「理想」と「欲望」は切り分けできないし、「萌え絵」は「日本美術」ですよね(どっちかというと)

「萌え絵」が批判されるのは歴史がないからじゃない - 最終防衛ライン3 結論が最初の方に書かれている。 「萌え絵」も「理想」のひとつであろう。「萌え絵」が批判されるのは、誇張表現だからだし、誰かにとっては「理想」ではなく「欲望」にしか見えないからだ。現在「芸術…

地面に絵を描き、そこに入ること

数日前にTwitterで見た一枚の写真が、頭から離れない。RT@lostdope: 孤児院にて、イラク人芸術家によって撮影された写真。戦争で母を失い、寂しさのあまり母の姿を地面に描き、その中で眠りに落ちた女の子。。胸が切り裂かれる思いです。 pic.twitter.com/wP…

花を踏む

開催期間も残り少なくなったあいちトリエンナーレ。8月に一度新聞の取材で回っているが、今日は友人たちと。 愛知県美術館10Fに展示の大巻伸嗣のインスタレーション。カラフルな顔料(鉱物の粉末)を用い、ステンシルの方法で作られた万華鏡のような花や鳥…

連載更新のお知らせ二つ

後期の始まり第一講目から、授業の時間を間違えるという大ポカをして落ち込んでいる大野です。初対面の100人の学生さんに平身低頭‥‥。おまいさん何十年この仕事してんだよ。 webの二つの連載が更新されていますので、お知らせします。 大人の女の「友だち地…

虹色ポンチョのワルツ、文鳥のお宅訪問––––あいちトリエンナーレ2016

昨日、開幕して一週間のあいちトリエンナーレに某新聞の取材で行ってきた。幾つかの作品の見どころをガイドするという記事。 本当は一度全部観ておいてから行く方がよかったのだが、お盆の間はプライベートな用事で動きが取れなかったので、公式ガイドブック…

魔女の秘密展

魔女の秘密展 Secret Witches Exhibition 2月19日から3月13日まで原宿ラフォーレミュージアムで開催される模様。 去年の夏、名古屋市博物館で見た。展示に工夫が凝らされており、特に処刑関係のブツは生々しかった。 最後には安野モヨコを始めとして漫画家や…

『超絶技巧!明治工芸の粋』に肝を潰す

先日、岐阜県立現代陶芸美術館で開催中の『超絶技巧!明治工芸の粋』を観に行った。 明治工芸と聞いてもあまりイメージの浮ばない方は、下のリンク先を。 岐阜県立現代陶芸美術館 展覧会情報01 左上の「パイナップル、バナナ」、中段中の「竹の子、梅」は実…

『ソフィ・カル –––– 最後のとき/最初のとき』を見て

ソフィ・カルがまた豊田市美術館で見られると知った時から、ずっと楽しみにしていた。 前回見たのは12年前の2003年。カルが一年に渡って23人の盲目の人たちにインタビューを行った上で制作した、<盲目の人々>という写真とテキストを組み合わせたシリーズ作…

「盗作さん」と言われた話

(※この記事は五輪エンブレム問題における佐野氏の責任に言及するものではありません) ohnosakiko デザイン, 社会 佐野氏の人柄とかこれまでの仕事などにあまり関心はないが、今回この件で「クリエイト」ということにたくさんの人が強い期待を抱いていてオ…

『ボルネオ人をしめ殺すオラン・ウータン』の衝撃

「生きものが苦しむところを観察したい」という残虐な欲望が、子どもの頃にあった。と書くと不穏だが、人間や身近な動物は厭で、あまり大きくなくて自分の好きではない生きもの、たとえば虫なら、平気でもがき苦しむところを見ることができた、というわりと…

アートは騙しの手口の百貨店‥‥『だまし絵2』展

昨年の振り込め詐欺の認知件数は、前年に比べて約二割も増加したという。人は騙されまいと思っていてもうっかり騙され、被害者になってしまう。特にお年寄りを狙ったオレオレ詐欺は「困っているなら助けてやらねば」という身内感情につけこんだ卑劣な犯罪だ…

「芸術鑑賞法」と「既知の器」

「好き」「嫌い」を越えた芸術鑑賞法があるとしたら - (チェコ好き)の日記 自分のブコメ。 [アート]「自分の人生に真摯に向き合って」「生涯をかけて」「あなただけのために作られた作品」を見つけ出せって。修行して心眼を鍛えろみたいな。コツコツ美術史勉…

美大生の関心、山脈地形図、砂漠のオアシス

最近Twitter上で気になった、美大生に関する呟き。 そういや、先週末のゲンロンカフェのあとのバータイムで、美大生の関心の幅が狭くなってきていて、マンガなどのサブカルチャーに関心を示さないひとが目立つ的な話をきいた。— 伊藤 剛 (@GoITO) 2014, 11月…

好きなアーティスト、嫌いなアーティスト2

昨年に引き続いて、地方の某私立芸大で持っている講義の中で、「好きなアーティスト、嫌いなアーティスト」のアンケートを取ってみた。 美術学部18人、デザイン学部38人。男女比は女子が8割強を占める(大学全体でも女子割合は7割くらいか)。 「美術、あ…

藤城清治の影絵

この間の日曜日、NHK「日曜美術館」で影絵作家の藤城清治を特集していた。『「光と影の”又三郎”」藤城清治 89歳の挑戦・完結編』(前編の方は見ていない)。 昭和30年代生まれの私にとって、藤城清治の絵は幼少の頃の記憶と強く結び付いている。NHKの「みん…