web村の入り口で

招待状来たる

数日前、mixiに加入しているある方からのメッセージが、mixi事務局から届いた。
mixiミクシィ)とは、日記を公開したり、様々なコミュニティで情報交換したりする巨大サイトで、加入者の「招待」を通してのみ登録可能。つまり一種の閉域であるわけだが、いわゆる「信頼できる人だけの集まり」みたいな雰囲気を作っており、大変流行っているらしい、ということだけは私も知っていた。


そのメールには、
「○○さんがあなたをソーシャルネットワーキングサイトmixi(ミクシィ)へ招待しています。」
とあった。人から招待されるということは、あまりない私である。人を招待することもあまりない。
そういう私に、この「○○さんがあなたを招待しています」という字面、響きは、大変快かった。
「日記をスタートするのでよかったらコメントなどを」というその方からメッセージが、その後に添えられていた。それで私を「招待」して下さったのである。
そのページに行ってみると、自己紹介が載っていた。横に「彼のミクシィ」として、何人かの人々のページにリンクが張られている。「友達の輪」みたいなもののようである。メールの後半には、mixi事務局からの、mixiに参加しませんかというメッセージがあった。
つまり、このメールは噂には聞いていたがまだ見たことはなかったmixiへの招待状で、スタジオアルタの「笑っていいとも」からかかってきた電話なのであった。
とうとう私のところにもスタジオアルタから、いやmixiから「友達の輪に入りませんか」という御呼びが。


なんてふうに思うくらい、その時、私はかなりお酒が入っていた。それで気軽な気持ちで、登録のページにアクセスし、プロフィールの欄にしゃかしゃかと記入していった。
なんとニックネームを書く欄まであった。私の本名は大野左紀子というが、ニックネームは特にない。高校時代につけられた渾名はあるが、それを今でも呼ぶのは同級生数人だけで、一般公開はしたくない。
それでちょっと考えて「さきえもん」と入力した(繰り返すが、その時かなりお酒が入っていた)。
名前とニックネームと住んでる地域を書き入れ、自己紹介の欄にすごく簡単な2、3行の自己紹介文と、自分のブログのアドレスを書いた(それ以外にも生年月日、自分の写真、職種、趣味などの欄があったがパスした)。
mixiで日記を書くつもりはないが、ここを覗きに来てくれる人が増えればいいなくらいの気持ちだった。


登録を済ませるとすぐに、事務局から確認と登録完了のメールがきた。そこには、
「登録時に記入された情報だけでは、あなたのパーソナリティを表現することはできないはずです。まずは既知の友人やお知り合いに改めて自己紹介をおこないましょう。mixiトップページの「プロフィール変更」より追加項目を記入してください。」
とあった。
が、面倒なのでそのままにして寝てしまった。酔っぱらってたし。


次の日、メールボックスを開けてみると、またmixiからのメールが来ていた。
大野左紀子さん。こんにちは。mixiからのお知らせです。左紀子さんのコミュニティを広げるきっかけ作りになる情報をお届けします」
こういうメールがその後毎日のように届くとは知らない私は、なんだか親切なところだなあと思い見ていくと、
「左紀子さんのトップページアクセス数/今日までのアクセス数:0 アクセス/以下のURLより足あとページにアクセスして、どんな方が訪問したか確かめて見ましょう。」
とあった。そしてそれは次の日、3アクセスになっていた。

自己アピール下手

私のページ(といっても先のような個人情報しかない)にアクセスされたのは、招待して下さった方ともう一人は全然知らない人だった(当たり前だが)。その人はなぜ私のページに来たのだろうか、などと思いながら自分のページを見直していて、私はだんだん恥ずかしくなってきた。
「さきえもん」。これを消去したい。あんまり人が見ないうちに。


「プロフィール変更」をクリックして、ニックネームを消し、変更ボタンをクリック。
!マークと共に出たのは「ニックネーム、生年月日、趣味を入れて下さい」。
げ。消されるどころか増やせと言っているではないか。
先日の「登録時に記入された情報だけでは、あなたのパーソナリティを表現することはできないはずです。(中略)追加項目を記入してください。」を思い出した。ここは、まずパーソナリティを自己アピールしないといけないところなのであった。
そんなことも知らずに、「招待」に喜んで登録した自分。


困ってしまった。
自己紹介は苦手である。普通はこんなところで自意識過剰になってないで、「じゃ、サッキーにしよっかな」などと決めて、さっさとエントリーするのだろう。でも私は悩む。生年月日や趣味はまあいい(書き込んだ)が、ニックネームはちょっと。
いろんなコミュニティに参加して「今のさきえもんさんの意見は」とか「サッキーさん、おひさしぶりです」とか言われるのは厭だ。何気取ってんだと言われても、それだけは厭だ。
悩んだ末、「サキ」にした。「サキ」なんて呼ばれたことないけど。芸のないニックネームだ。


たくさんのコミュニティがジャンル別になっている一覧を見た。みんなここに参加していろいろな人と意見交換したり、議論したりして、お友達を増やしているのである。
私も早くそういうことをせねばならないのであるが、あまりに数が多くて、どれに参加していいのかわからない。時間のある時ゆっくり回覧することにしよう。
日記の公開もすごい数らしい。mixiに参加しているある人の話では、若い女性の日記は「ポエム」が多いと言う。実際に現代詩などを発表しているのではなく、書き方がポエムっぽいということらしい。
そういうものを見て回って、「若い女性のweb日記の傾向」みたいなテーマで何か書いてみようかと思ったが、入ったばかりでいろんな人の癖を採取、分析して面白がるのも、なんだかタチが悪いような気がしてやめた。


mixiに加入して今日で4日め。
ぶっきらぼうな自己紹介をしただけで、まだ何もしてない。
有り難く推薦を受けて学校に入れたのに、自己アピールもせず、友達作りもせず、部活(コミュニティ)もやらず、かといって毎日こつこつ勉強(日記)するわけでもなく、ブラブラしている落ちこぼれのような気分に早くもなってきた。
先生(mixi事務局)からは、「まだ友達できないの?もっと積極的にならないと」と言われている(みたい)。なんだかいたたまれない。


せっかく入ったのにすぐ退学するのはもったいないので、もう少し観察してみることにした。
紹介くださった方の「マイミク」から、顔写真の美しかったある女性のページに行ってみた。ふむふむそういう人なのね。
そこからまた顔写真の魅力的な別の女性のページに。
そこからまた顔写真の‥‥。
全然終わらない。
行けども行けども「友達の輪」が。加入者が複数の人を招待するのだから当然だ。
そうかmixiとはこういうモノだったのかと、今頃気づく。


ここでの自己アピールのポイントは、まず顔写真である。それと年齢も少しはあろう。そして自己紹介。
皆さんとてもオープンな感じで、丁寧になさっている。コミュニケーション意欲に燃えていらっしゃる。こういう積極的な態度で臨まねば、楽しくないところなのである、この巨大なweb村は。
顔写真なしの無口な46歳の女に、友達作りはかなり困難であることがわかった。