同じヌードでも‥‥

あちこちで話題になっていた、例の岩手県蘇民祭の「胸毛男性写真ポスターがセクハラ」問題。
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20080108k0000m040136000c.html 
それについてのこちらの記事の批判は的を得ていてほぼ同意だが、別の角度から考察してみる。


この件は、外で友人達と飲んでいる時に、店のテレビのニュースで知った。街角でインタビューされた女性達が一様に「やっぱりちょっと厭ですね」「抵抗がある」といったことを答えていた(そういう答えだけ、後でセレクトされたのかもしれないが)。
かなりワイルドな迫力で、人目を引きつけるポスター。幾分ユーモラスな感じさえ受けた。私の周囲にいた人々は「なんであれがセクハラなの?」「過剰反応だろ」「臨場感があっていいじゃんね」と言っていた。


私はふと、あの中心の被写体になった男性は、ちょっと傷ついてないかなと思った。胸毛が立派な、ラッシャー木村がやや太ったみたいなヒゲのおっちゃん。その大写しが「人々に不快感を与える」とされている。
あれがもし若いイケメンで、ananのセックス特集の表紙を飾って話題を撒いたダルビッシュみたいなヌードだったらどうか。ここまで言われまい。ポスター、盗まれたかもしれない。
ヒゲのおっさんであること。太っていること*1。胸毛があること。確かに一般の女性ウケはしないだろうが、祭りの迫力と興奮を伝えるための被写体に選ばれただけ*2なのに、「不快」「セクハラ」と言われるのも気の毒な気がする。


たとえばこれが、リオのカーニバルを真似たどこかの街のポスターだったとしてですよ、でっぷり太ったおばさんが派手なビキニで陽気に踊っている姿が大写しされていて、それに「見苦しい」「不快だ」などの男性の声が上がったら。ポスター撤去されたら。
そのおばさん初め、女性の多くは傷つくだろう。「そんなこと言うなんて酷い。セクハラだ!」と言われるかもしれません。
いや、女性の中からも「こんなデブのおばさんをわざわざ写さなくてもいいのに」「これはセクハラに感じる」とかいう声が出るだろうか。‥‥出そうな気がしてきた。


いずれにしても世間的に需要があるのは、あくまで若くて美しいヌードである。男でも女でも、そうではないヌードは「見たくないもの」「堂々と晒してはいけないもの」。
正直私だって、どうせ見るなら胸毛の太った男性やおばさんの肥満体より、きれいな裸がいいなと思う。そうした嗜好、志向は、文化の中で刷り込まれている。


女性ヌードの氾濫も居心地が悪いと言えば悪いが、男女の非対称性と同じくらい根深いところで私達を支配するのは、美醜の問題である。

*1:マッチョという見方もある

*2:実は昨年の「チャンピオン」だったそうです。コメント欄参照。