女の園(『ミネハハ』『白い肌の異常な夜』)

先日書いたように『エコール』には乗れなかったので、その後に制作された同じ原作の『ミネハハ 秘密の森の少女たち』を見てみた。『エコール』が現実味のない童話の世界だとすると、こちらは三流女学園ものといった感じ。
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ポスターが『エコール』に似過ぎだ(しかも『エコール』より絵的に劣る)。物語はかなり改変されていた。
まず少女達の年齢が高く(15〜17歳くらい)、同性愛や残酷シーンがあからさまに描かれている。全体に『エコール』のような妙に謎めいたところのないのはエピソードにいちいちオチがついているからだが、凡作。主役の少女がどう見ても「その他大勢」の顔をしているのも残念。ストーリー展開は、少女達の悲惨な運命を大した工夫もなくベタに描いた芸のないものなので、せめて美少女を出してほしかった。


印象に残るのはまたしても先生で、金と地位に執着する冷酷な校長をジャクリーン・ビセットが好演していた。実はキャストにジャクリーン・ビセットの名前があったので、「おや、懐かしい」と思い見る気になったのだった。私の中ではシャーロット・ランプリングの次に好きなイギリスの女優さん。陰りのあるグレーの瞳とほっそりした体つきは昔のままで、もう60過ぎなのに雰囲気があって大変良い。もっといろんな映画に出てほしいものだ。
それにしても、若い女優より年老いた女優につい目が行ってしまうのは、私も歳をとったということだな。


歳の問題と言えば、ハリウッドの女優達にインタビューした『デブラ・ウィンガーを探して』(2001)というドキュメンタリー映画で、40歳を過ぎたとたんに仕事が来なくなるといった悩みを、有名女優達が語っていた。
スクリーンで若い美人女優を見たいという観客の欲望と、中年女優がヒロインでは興行収入が望めないという制作者側の思惑。娯楽大作の多いハリウッドではそれが顕著だろう。だから多くの女優が美容整形で見かけの若さを保とうとする。それがますます「美しさ=若さ」の法則を強化する。
もちろん歳をとって若い頃より容姿が衰えても主役を張れる女優さんはいるわけで、最近だと『恋愛適齢期』(2003)のダイアン・キートンはその成功例だ。ただ中年になって味が出てきたと言われる人は、圧倒的に男性の俳優。女優ではやはり少ないだろう。


ところで女学園ものというと女同士のドロドロが描かれるのが定番だが、異色中の異色はドン・シーゲル監督の『白い肌の異常な夜』(1971)である。最初、なんだその日活ロマンポルノみたいなタイトルは?と思ったら、原題は『THE BEGUILED』(欺かれた者)という。
南北戦争中の南部の女学校に北軍の負傷兵が辿り着く。敵兵を匿うともちろん罪になるが、先生達は男手欲しさや同情心や好奇心から、彼をこっそりと看病し学園内に住まわせる。ハンサムだがいささか道徳心に欠けたその兵士は、先生達も女生徒達も魅了してしまい一種のハーレム状態になるのだが、嫉妬や憎しみが水面下で渦巻くようになり、ついに恐ろしいことが‥‥というサスペンス。傑作。
一人の男を巡る女達のなまなましい心理が徐々に浮かび上がってくるところが、怖い。後半結構エグい展開ゆえ、好き嫌いは分かれるかもしれない。兵士役は、40そこそこのクリント・イーストウッド。興行的には失敗したようで、私も20数年前にテレビの深夜映画枠でたまたま見るまで、知らなかった。現在ビデオしか出てないのが残念だ。
ちなみにドン・シーゲルは『白い肌の異常な夜』を自身の最高傑作としているらしい。最大ヒットの『ダーティ・ハリー』(1971)じゃないってところが良い。