熟女キャバクラ

家から車で十分くらいのところに、沖縄料理の店があった。外装は南国風というか何というかやや中途半端な感じで、試しに一度行ってみたが特別に美味しいということもなく、普通の居酒屋に近い特徴のない感じだった。あまり賑わってもいなかった。夫と「この店、たぶん流行らないね」と言いながら帰ってきた。
それが4年くらい前。


この間通りかかったら、店の外観はそのままで「熟女キャバクラ」というでっかい看板が出ていた。前の店はそのうち潰れるとは思っていたが、次が熟女キャバクラとは。って、よくあるパターンなのかもしれない。
周辺は住宅街やスーパーがあり、飲食店は点々としかない。だからその黒地にピンクの文字がエロエロしい看板は、かなり場違いな感じに目立っていた。店の前は小学校の通学路になっているらしく、よく集団登下校しているのを見る。きっと小学生の間で話題に上っていると思う。「なにあれ」「なんて読むの」「じゅくじょ?」「じゅくじょ、きゃばくらってなんだ?」「知らねー」「なんかやらしー」とか。


「仕事が少ないし、私、あの熟女キャバクラで働こうかな」
「面接で落とされる」
「熟女って何歳から何歳まで?」
「わからん」
「25から40くらいかな」
「全然ダメじゃないか」
「50代美魔女は?」
「お前、美魔女なの?」
「いや」
「‥‥で、何が言いたかったんだ」
「うーん。なんか知らないけど最近追いつめられてるということが言いたかった」
「それ、年中言ってるな」


という、景気の悪い会話を夫とした年の暮れ。
あの店はいつ頃までもつだろう。



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