「ヨン様」ブーム

いつまでニコニコしているの

テレビをつけたら、NHKの特番にペ・ヨンジュンが出ていた。ファンをスタジオに集めてのインタビュー番組みたいだった。ファンはもちろん全員女性。
NHKのキャスター男女二人もファンも、もちろん本人も、全員終始一貫ニコニコニコニコしていて、なんかムズ痒いような雰囲気がスタジオ全体に立ち込めていた。


その後ニュース23の冒頭でも出演していて、筑紫哲也はサイン用の色紙を差し出してヤニ下がっていた。そんなものカメラが回ってないところでこっそりもらえばよかろうに、インタビュアーの特権を全国のヨンジュン・ファンに見せつけたいと。
ますます筑紫が嫌いになったお陰で、ぺ・ヨンジュンが余計「さわやか」に見えてしまった。


冬のソナタ』は ちらっと見ただけである。こんなに話題なのだから、ジェンダーに関するリサーチと研究を兼ねて見ておくべきかと思うが、そこまで努力できないのが私のダメなところだ(好き嫌い言ってないで見なさいと宮田さんに忠告された)。


週刊誌に「初恋に敗れてヒロインが30まで処女でいるのも不自然だし、出て来る男もみんな童貞みたいな奴ばかり」と誰かが書いていた。でも、だからこそウケてるんでないの。そういう身も蓋もないリアルなことを言って、盛り上がった主婦のファンタジーに水を差しても無駄である。

ツルサラの魅力

そんな中で異常なまでに過熱しているヨン様人気。そんなにいいですかあの人。なんか見たとこ、脱臭剤みたいなデンタルリンスみたいな男じゃないですか。ツルツルサラサラしているばかりで、オーラもエロスも感じない。『冬ソナ』に乗り遅れたんで、わからないのかもしれない。


女性週刊誌の表紙はゴールデンウィーク前、軒並みあのツルサラ顔に独占されていた。
ぺ・ヨンジュンの恋人の女性が紹介されていたが、最近その仲がどうもうまくいっていないようだと嬉しそうに書かれてあった。嬉しそうにってところがファンの心理を読んでいる。ほんとに嬉しくなる人いるんだろうなあ、ああいうふうに書かれているってことは。


おそらく、眼鏡が人気のポイントだ。 眼鏡の上品な好青年というのは、今までなかったポジションである。
眼鏡は今もてアイテムだから、地味顔の目の小さい俳優は眼鏡込みで売ればいいという前例を作ったと言える。ただしメタルフレームは人を少し冷たく見せるので、いつもさわやかに笑ってないといけない。
笑顔にしろ眼鏡にしろ髪型からファッションから立ち振る舞いに至るまで、来日中は23人もの付き人チームがいて、ツルサライメージから外れないよう逐一チェックしていたとのことである。日本の皇族並。


しかし『冬ソナ』ブームの去った韓国ではぺ・ヨンジュンの人気も下降気味で、「笑ってばかりいてヘン」とまで言われているらしい。そろそろ日本でも「ヘン」と言い出す人が出てくるはずだ(と思っていたけど、遂にヨン様カツラまで販売されてしまったよ。一方でしっかりお笑いのネタになっているし。‥‥追記6月)。

赤の他人の理想像

NHKの番組では、「好きな女性のタイプは?」という質問にぺ・ヨンジュンが答えるのを、ファンが喰い入るように聞いていた。御丁寧にもキャスターの男がここぞとばかりに「皆さん、いいですか? しっかり聞いておいてください」などと言うのだ。
こういう言い方に一瞬とても猥褻なものを感じるのは、私だけだろうか。で、そんなんしっかり聞いてどうしようってのと普通に思うが、ファンとはそういうものらしい。
だからぺも市場価値があるうちに、「日本の熟女に萌え萌えです」くらいは日本語でさわやかに言ってあげるのが、主婦のアイドルとしてのリップサービスというものだろう。まあ「ヨンジュン・チーム」がそこまでは許さないであろうが。


しかし女優に対して、いい歳した男性ファンがスタジオに詰めかけて、彼女の「好きな男性のタイプ」を真剣に聞きたいと思うだろうか? 思わないよ絶対。女だけが「赤の他人の理想像」を気にしているんじゃないかと思う。女だけがファンタジーに溺れている。というかそれをせっせと育てている。
それしかもうないから? この莫大なエネルギーを、そのまま何かに有効利用できないものかと思う。