ドブネズミがネズミに因縁つけた(?)件についての諸反応

現代美術作家の村上隆が、作品のキャラクターである「DOB君」にそっくりのデザインを子ども服メーカーのナルミヤが無断で使用したとして訴え、和解金数千万円(4千万とかいう話)を獲得したというニュースが6日ほど前あった。

(前略)私が生きている現代アートの世界はオリジナルであることが絶対的な生命線です。一つひとつコンセプトを考え抜き、心血を注いで造形した、私の子供のように愛し育ててきた作品達。(中略)日本ではアートの社会的評価や理解度は低いままです。功利主義で、文化発展への尊敬の念乏しき、文化の民意が著しく低い国。それが日本です。しかしこうした状況に甘んじることなく、オリジナルアートの価値を社会に認識してもらうことが重要です(後略)
http://www.kaikaikiki.co.jp/news/list/murakamis_lawsuit/村上隆のHPに掲載されたコメントより)

あの、これポップアート以前の、いやデュシャン以前の認識なんですけど‥‥DOB君の元ネタがミッキーマウスなのは周知の事実なんですけど‥‥とツッコむのもタルい。どうせ営業トークだから。
一方で「俺のガソリンは金だ」と豪語しながら、一方ではこういうどこかの美術館館長か芸大学長みたいなこと(後半部)もしゃあしゃあと言っちゃうのが、村上隆というアーティストだということは、その業界にいた人なら知っている。
やることも言うこともムラカミだな‥‥という感想以上のものはないが、今回の件につきいろいろちゃんと書いている人がいらっしゃるのでご紹介。


まず、町山智浩東浩紀
町山智浩はずっと前から村上に批判的なので、言ってることは明快。このニュースを聞いた時の私の第一印象に近い。
東"スーパーフラット"浩紀は、村上を随分リスペクトしてきたから、歯切れは良くない。読んでいてやや気の毒になってくるような失望ぶり。しかしなんで今頃失望する?
村上隆を「コンセプチュアル・アーティスト」としてのみ見ていれば、これは残念かもしれないが、「すごく"握力"の強い人」として見ていれば別に不思議ではない。ホリエモンを「IT業界の風雲児」としてのみ見ていれば、逮捕は意外かもしれないが、「金が何より好きな人」として見ていればそうでない、それと同じである。
東浩紀はナイーブ過ぎるのに加えて、あまりにも対象に接近し過ぎていたので、見えてなかったのではないかと思われる。


さて、上記の両氏の意見を足して深めた感じなのが、こちらの丁寧な分析。批判的な意見としては、私が見たところでは一番読み応えがあった。
面白かったのが、こちら。確信犯で芸があってそのままアート批評(として私は読んだ)。
笑ったのは、ナルミヤの「マウスくん」をバナーにしてしまったこちら。村上のやってることより、よほどポップ&スーパーフラットである。
日本を代表する国際作家にそういう精神が感じられなくなっても、ネットの中でそのようなものが見つかるこの状況。アートへの「社会的評価」はどうか知らないが、「理解度は低いまま」でもないような。