久米宏は幾つになっても久米宏だ

28日にテレビ東京で放映された『久米宏 経済SP新ニッポン人現る2 - 1秒でも早く結婚したい女たち』という番組について。
以下はテレビ東京の番組紹介サイトから引用。

自由恋愛、核家族化、男女雇用機会均等法・・・
ライフスタイルの選択肢が広がった女性たちは、
"結婚"から解放された。その結果、晩婚化は進んだ。
そんな先輩女性が反面教師に見えたのか・・・あるいは、
先のない将来に不安を募らせたのか・・・。
今、2008年、日本で結婚に走る20代女性が増えている!?


なぜ時代は彼女たちに結婚に走らせるのか?そして彼女たち
が描く"理想の結婚の形”とは!久米宏が経済の視点で、
2008年版結婚の価値観を切り取ります!


ゲストは小池百合子衆議院議員、山極寿一(京都大学大学院理学研究科教授)、小倉優子


結婚を渇望している女性たちがVTRでいろいろ紹介される。
最初は、縁結びに御利益があると言われる東京大神宮に列をなしてお参りしている女性たち。インタビューに答えた一人の女性は、「今すぐにでも結婚したい」と言う。たまたまそこで神前結婚式が行われており、その行列をじっと女性たちが眺めている。
集団お見合いパーティの現場。テーブルを挟んで男女がズラリと並び、5分経つと司会者が鐘を鳴らして、男性に隣の席への移動を促す。一人当たり5分の「お見合い」を次々十数人とこなすわけである。最近登録する人は女性の方がずっと多く、お見合いの男女比がアンバランスになってきていることが、業者から示される。
キャバクラに久米宏が取材に行く。あるキャバ嬢曰く、「この仕事は結婚相手を捜すのに俄然有利」。結婚相手の条件は、年齢は問わないが年収一千万。最低でも700万は欲しいと。久米が「あなたを結婚相手として見ないのでは?」とつっこむと、「でも男性を見抜く目はある」と自信満々に答えていた。
40歳を前にした独身女性の取材。彼女はバリキャリに憧れて仕事に邁進してきたが過労で体を壊し、今はお見合いパーティに参加の毎日で、拠り所となる確固たるかたちとして家庭が欲しいと語っていた。
後は、ネットで相手を捜す女性、ABCクッキングスクールに来ている女性の結婚願望、「婚活」の白河桃子氏インタビュー、いろいろな結婚式の模様、女子高校生の結婚観と、1時間番組にしてはあれこれ詰め込み過ぎで散漫。特にあの派手派手しい若いカップルの結婚式のVTRは、何のために流していたのか。スタジオに呼んだ独身女性たちへの嫌がらせに思える。


スタジオの観覧席のひな壇は二手に分かれており、一方は20代の女性たちで半分が新婚らしく、なんとウェディングドレス姿!、もう一方はアラフォー世代の女性たち。ここまであざとく非対称な並ばせ方をするなら、双方の意見をきちんと訊くのだろうと思っていたら、それぞれ一言ずつ(つまり二人)しかなかった。アラフォーの方の女性の一人が「別に結婚しなくてもいいと思ってきた」(記憶で書いているので正確ではないが)との発言をしたが、流されてしまった。
一方男性については、二人の独身男性が取材されていた。一人は30歳の一人暮らしのサラリーマン。年収400万。昨今の雇用状況を考えると自分の生活の防衛だけで精一杯で、結婚まで考えられないということである。
もう一人は20代のオタク。女性との付き合いは50:50でふるまわないとならないし、一過性のもので終わる。その点フィギュアは違うし、一年経っても対象が変化しないのでいいそうだ(ここでスタジオがちょっとざわめく)。


こうしたVの合間に、でき婚のデータや、バブル以降の日本の経済状況や、課長以上の女性の割合は3%であることや、「三高から三手(手を繋ぐ、手伝う、手を取り合う)へ」という女性の結婚条件の変化や、「草食系男子」などの話題が散りばめられる。文字通り散りばめられてるだけ。
久米宏小池百合子にどうでもいい政界ネタなど振って、二人で笑い合っている。なんでここで昔のニュース・ステーションのノリなのか不明な上、番組内容に関係ない。「草食系男子」については、「最近の若い男の子は肉を食べないんですよ。野菜や魚ばかり」とズレたコメントをして山極氏に振り、「草を食べるってことは、霊長類の猿に近いということです」などと、更にトンチンカンなコメントをさせている。ゆうこりんに至っては‥‥優良銘柄の株をもっているということはわかった(それも久米が芸能ネタっぽく振った結果)。
結局番組としては、あれこれ表層的な細切れ映像と細切れ情報を繋げながら、「男女雇用均等法に乗せられて「負け犬」となったバブル世代の女性も、彼女たちの轍を踏みたくない20代の女性も結婚を急いでいるけど、男性の方はやる気なさげです。それもこれも経済状況が変化したせいです」と言っているだけであった。
それだけの内容なのだが、番組全体から私が受けた印象は、いわゆる婚期を逃しつつある女性たちに対する「冷笑」である。微妙にバランスを取りながら、彼女たちを「ちょっとイタい存在」として扱っている。ほとんど芸能週刊誌のレベル(そもそもタイトルからして)。


そう感じさせる原因は、久米宏にある。久米宏がこの問題に関して、芸能週刊誌レベルの関心しかないのである。いくら最後に、とってつけたような真面目な顔を作って締めくくってみても、それは番組中の態度でバレる。
久米宏が小器用で頭の回転の早いさまざまな意味で「軽い」人だということは、『ザ・ベストテン』で黒柳徹子と司会をしていた時から皆知っていることである。その軽さは『ニュース・ステーション』にも生かされた。ニュース番組を「バラエティ」にした人だった。その時より劣化したノリで、この『久米宏 経済SP 新ニッポン人現る』をやっている(一回目は半年前)。
なぜ劣化と感じるかというと、あの頃はまだ通用した「軽さ」が、どうにも時代遅れにしか見えないからだ。それをいまだに「自分らしさ」として誇示したがっているのだ、この人は。「結婚したい女たち」も「したがらない男たち」も、久米宏の中ではちょっとつまみ食いしてみたネタの一つでしかないだろう。


スタジオのひな段の片方に座らされて、久米のつまらない冗談にもウケてやっていたアラフォー女性たちは、どういう気持ちだっただろうか。
「もうおまえは私たちの問題に首を突っ込んでくるな」と言いたかったのではないだろうか。