「おばさんになれば“なるほど”」、第七回がアップされています。

サイゾーウーマンに連載中のエッセイ、今回のテーマは「和な人」です。


「きもの」は、おばさんのなけなしのナルシシズムを慰める――「和」にハマる中年女性


一昔前まで、きもので出歩いている人と言えば、お茶や日舞のお稽古の人か、歌舞伎のお客か、小料理屋の女将か、お仕事に向かうホステスさんなど、それぞれTPOの定まっている人ばかりでしたが、「和」流行りの昨今、ちょっとしたおでかけ着としてカジュアルな感じできものを着ている人をたまに見かけます。
若い人へのPRに一役買ったと思われる雑誌が、『七緒』(プレジデント社)。最近着始めた私も、気になるバックナンバーを集めています。『美しいキモノ』ハースト婦人画報社)は、美容院での目の保養用です。


きものを着るようになると、なぜか自然ときもの関係の話題を耳にするもので、「実は私も中年になって着始めた」「母のお下がりからスタートした」といった話をあちらこちらで聞いたりします。若い頃はやっぱり洋服が楽しくてきものには見向きもしなかった人が、ある時親族や知人から譲り受け、ちょっと着てみたのをきっかけに傾倒していく。わりとよくあるパターンらしいです。
中年女がきものにはまっていく心理について、考察しました(半分以上、自分のことですが)。どうぞよろしくお願い致します。



ここから個人的な話をだらだらと。


きもの好きに夏は辛い季節だ。絽や紗の夏きもの、亜熱帯と化した日本ではどれだけ涼しく着ようと工夫しても、やはり暑い。
肌襦袢長襦袢(または「うそつき」という身頃だけ木綿の肌襦袢を兼ねた長襦袢)の上に絹のきものを着て名古屋帯締めて、暑さに耐えながら、汗染みを心配しながら、涼しそうな顔で歩くという苦行。私には無理。ついバタバタとせわしく扇子で煽いでしまいそうになるのも、客観的に見て全然エレガントじゃない。
洗えるポリの着物なら汗を気にしなくていいが、お茶を習っているわけでもないしそこまで無理して着て行かねばならないところもない。
でも、きものは着たいのですよ。なので、夏は麻か浴衣に限定する。帯もほぼ半幅。


浴衣の女性をちょくちょく見かけるこの季節、私も頻繁に着るつもりでコーディネートを考えた。
昔数回着た大柄の菖蒲模様も義母の形見の派手な絞りも、今いち似合わない。40〜50代は華やかな方がいいと言うが、なかなかそっちに踏み出せず、素敵だなぁと思った藍染めの浴衣は7万円以上!(元々バスローブの浴衣に7万円も出せる生活などしてない。せいぜい出しても3万まで)なので結果、なんか地味系に。



(ババアの寝間着に見えないようにしなければ‥‥)
この三枚を着回す予定だったが、男性用の浴衣を柄に惹かれて買ってしまい、無理矢理女ものに改造。具体的には、身八つ口と袖の振りを開き、身幅を詰め、繰り越しのない襟が詰まってこないように、背縫いの帯で隠れるところに衣紋抜きの紐を通す布を縫い付けた。



ガラスの帯留めにはヤモリの絵(蝙蝠の餌だから)。自分では気に入っているが、世間的にこれはアリだろうか。蝙蝠の帯留めは見たことがあるけど、女性のきものの柄では‥‥?と調べてみると、浮世絵にあるらしい。縁起の良い動物とされていたようだ。じゃあ現代のおばさんが着てもいいよね。いいことにしよう。
調子に乗って、普段なら絶対に手を出さない配色の浴衣を購入。



市松模様帯留めでアールデコっぽい雰囲気にしたつもり‥‥‥。大年増に合う「華やか」ってたぶんこういう方向ではないと思うけど、好きで着るんだからいいよね。いいことにしよう。


最近の発見。胸のボリュームを抑えるにはさらしを巻くか和装ブラだが、男装のためのいわゆる「ナベシャツ」がなかなかいい仕事をしてくれる。「ナベシャツ」で検索するとたくさん出てきます。チューブトップタイプか首の後ろのくりの深いものがおすすめ。


愛読している個人のきものブログ。
ツバキ庵のキモノ日記:着付教室の講師&カラーコンサルタントモリタマミさん。オリジナリティ溢れるキュートでスタイリッシュな着こなし。御本人も50歳目前とは思えない若々しさ。茶目っ気のある文章が楽しい。
着物日記:日本料理店の若女将の方の日常コーディネート。お仕事柄、落ち着いた組み合わせが多い。着回しの工夫などいろいろと参考になる記述も多し。週2、3回、淡々と更新されている。
色のあるくらし:きものを普段着にしていらっしゃるバッグデザイナーの方のブログ。色の使い方が素敵。文章も簡潔で読みやすく、きものが生活に溶け込んでいる感じが伝わってくる。