絵を描く人々 第13回 「欲しい絵」と「なりたい絵」- WEBスナイパー*1
人の基本的な欲求の中に、「◯◯が欲しい」と「◯◯に(のように)なりたい」というものがあります。
過去、あらゆる対象が描かれてきた絵画の世界は、人の「◯◯が欲しい」と「◯◯に(のように)なりたい」を刺激するジャンルでした。今その役割は広告が担っています。広告の美しく斬新なビジュアルを目にして、私たちは「アレが欲しい」とか「こんなふうになりたい」とか思う。
子どもの絵の中にも、素朴な「◯◯が欲しい」と「◯◯に(のように)なりたい」がしばしば現れます。
今回は、エリノア・エスティーズ作・石井桃子訳の子ども向けのお話『百まいのきもの』(現在は『百まいのドレス』というタイトルで発行)を、この二つの欲望から読み解くという試みです。
子どもの頃、何度読み返してもスッキリとした読後感にならなかった、その理由を大分前にこのブログで書いたことがあり、それに加筆しました。
基本的には「貧しい子をいじめちゃダメ」という教訓が導き出される物語であり、絵を通じたコミュニケーションも賞揚されていますが、本エッセイではそこから逸れて、登場するワンダ・ペトロンスキーという孤独な少女の心の動きについて、私の中で広がった想像に重心を置いて書いています(たぶん、一般的な読みとはかなり違います)。
今回のイラストは、季節柄、庭の草花です。植物の観察画など何十年ぶりという感じですが、描いていると、雑草とそうでないものの境目がなくなっていきます。
『無くならない アートとデザインの間』で著者の佐藤直樹さんが、描いている時の気持ちを「植物になりたい」と表現していましたが、私もそうでした。この感覚を思い出しただけで描いて良かった。
私の持っている本は親に買ってもらってから半世紀経っているので、何度も読んでいるうちカバーが破れて取れてしまっている。
最後の「岩波子どもの本 三・四年向」の本紹介と奥付のページ。「昭和41年8月30日 第6刷発行」「¥200」の表記。訳者の名前はこの版には出ていない。
- 作者: エレナエスティス,ルイススロボドキン,Eleanor Estes,Louis Slobodkin,石井桃子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2006/11/10
- メディア: 単行本
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