「間違ったバスに乗っても正しいところに着く」(「シネマの女は最後に微笑む」更新されました)

映画から現代女性の姿をpickupする「シネマの女は最後に微笑む」第37回は、『めぐり逢わせのお弁当』(リテーシュ・バトラ監督、2013)。


「弁当」をめぐる手違いが妻に与えた不安と勇気 | ForbesJAPAN

 

めぐり逢わせのお弁当 DVD

めぐり逢わせのお弁当 DVD

 

 
ほっこり系の邦題にちょっと引く人もいるかもしれませんが、内容にはマッチしています。ミュージカルシーンも大団円もない、しみじみくるインド映画。バトラ監督の初長編作。
インドの都市の弁当配達システムが、なかなか興味深いです。これはうまくできているなと感心。そこである日起きた誤配が、やがて一人の主婦に「正しいところ」を指し示してゆく。
ロマコメかなと思っていると、ユーモアの中にほろ苦い展開が待っています。


インドのポピュラーなお弁当箱でしょうか、大きな水筒のような円筒形で、四段重ねになっているのに惹かれます。
カレーとご飯と煮物やサラダなどのおかずにナン。スパイシーな香りが漂ってきそうで、観ていると絶対カレーが食べたくなります。


女性に焦点を当てているこの連載ですが、内気な中年男サージャンを演じたイルファン・カーンが素敵です。この人が主役と言ってもいいくらい。最初は陰気だけれども、あれ?こんなチャーミングな人だったんだ‥‥と魅力が徐々に開示されていくさまが見どころです。「現役感」が強いので、老いを意識する役としてはもう少し老人っぽくても良かったかな。

本文では触れていませんが、途中で垣間見える主婦イラの母親の人生と、サージャンの部下の青年シャイクのサイドストーリーも、この大人の物語に陰影を与えています。未見の方は是非。