「じゃよ」について考えてみたんじゃよ(もうやめれ!)

語尾を改変するのがあまり評判良くないので、通常に戻ります。まあお遊びだったんですけども。「じゃよ」と「ナリ」に集中してスターつけてる人が、約一名いました。ウケて下さったのでしょうか。


なんでお爺さんの言葉になったか?で、思い当たることがあった。
ジェンダー入門の授業で先々週と今週、『風の谷のナウシカ』を学生に見せた。なんでジェンダー論で「ナウシカ」? いやこれが、いろいろと分析しがいのあるとても使い勝手のいいお話なのです。
ナウシカクシャナジェンダー分析から始まって、戦闘美少女、ロリータコンプレックス、母性至上主義、メシア待望論、恋愛至上主義の行き詰まり、モダニズムと女性解放運動の夢と現実の話までもっていけるという(ほんとかね)。そんなわけで、もう5年連続で使っている。


学生達はアニメが出た頃はまだ生まれていないが、子供の頃に一回は見ている人が7〜8割いる。マンガの方になるとぐっと少なくて、一割に満たない(マンガとアニメは全然別ものと言っていいくらい違う)。
今までは授業が一限だけだったのが、昨年時間割編成が変わったせいで美術学部の受講生が数百人に膨れ上がってしまい、今年から二回に振り分けた授業となった。つまり私は、「ナウシカ」を前半部後半部それぞれ、一日に二度連続して観るわけです。さすがに疲れるので上映中はほとんど目を閉じているが、音声は入ってくる。


脇のキャラクターで、ナウシカの部下として活躍する風の谷の老人達がいる。彼らの喋りに出てくる「〜じゃよ」。これが、二回も聞いていると妙に無意識に沈殿してしまうのじゃよね。ナウシカでもクシャナでも大ババ様でもユパでもアステルでもなく、私の中に残るのは何故か、ミトをはじめとした愉快なお爺さん達の「〜じゃよ」。
実際に語尾に「じゃよ」のつくセリフはそう多くない。「〜じゃ」「〜だがな」「〜だわい」「〜じゃと」「〜じゃて」などの中に、たまに「〜じゃよ」が入る。なんかしみじみ優しい感じ。


サキコや、そう気張らんでもな、のんびりやりゃあいいのじゃよ。
どうやっても、おまえはおまえなんじゃよ。 
‥‥‥‥イイ! 泣ける! 癒される! 

 
あんた爺萌えか。


爺萌えと言えば、小津安二郎の映画でお馴染みの笠智衆である。だいぶ前に亡くなってしまったが、40過ぎにはもう60近い役を演じていたはずだ。おじいさん臭くない笠智衆てのを見たことがない。そのくらい、ニッポンのおじいさん(元はお父さん)の理想的イメージを体現する存在であった。
あの棒読み気味の、台詞回しが上手いんだか上手くないんだからわからないポソッ、ポソッとした喋りが、また枯れた朴訥なおじいさんの雰囲気を醸し出していた。本格的にじいさんキャラになってから若い女性に人気があったのは、どこか去勢された感じが安心できたんだろう。


もう一つ爺萌えで、川上弘美『センセイの鞄』。えらい売れましたね、ファザコン気味な女性と夢見るおじさんを中心に。若い男性ではなく現役引退した70代の元教師(妻は他界)という設定がウケたようだ。それに恋をするのが38歳の独身女。
ツボにはまる人には、すごくはまるだろう。それなりに面白くは読めるが、小説として好きかと言われるとちょっと。無害そうな年配の男性に負け犬女が癒される、みたいなのが安易に思える(って自分は「ナウシカ」の老人に癒されとるがな)。映画では柄本明小泉今日子が演じた。観てないのだが、ちょっとイメージ違う。長塚京三(枯れが足りないが)と夏川結衣あたりだよねえ。豊川悦司がずっと歳食ってたらできるだろうな。まあ別に観る気はないが。


私の中での「Best of 爺」は、石井桃子『ノンちゃん雲に乗る』に出てくる、雲のおじいさんだ。おじいさんというか仙人。
空に「落ちた」小学二年生のノンちゃんは、雲のおじいさんに助けられ、せがまれて家族の話をする。お母さんの話、お父さんの話、そしてノンちゃんに意地悪ばかりする、イタズラ者の兄ちゃんの話。おじいさんは、泰然自若としていて聞き上手でツッコミに茶目っ気があって、かなりいい感じのキャラ。そして「〜じゃよ」の大サービス。たまらんね。


ノンちゃんは、優等生で非のうちどころのない「いい子」である。自分でもそれを自覚している。一方、ノンちゃんから見た兄ちゃんはそれと反対。しかしおじいさんは、やたら兄ちゃんに肩入れするのだ。私の方が「いい子」なのに‥‥不満なノンちゃんに、おじいさんはピシリと言う。
「そういう子は、よくよく気をつけんと、しくじるぞ!」 
そんなことを人に言われたことがなかったノンちゃんはびっくり。そこでおじいさんは、謙虚な心を持てとノンちゃんを諭す。全体にはあまりに理想的な家族や人間像が描かれてるところがちょっとこそばゆいが、一つ一つのエピソードはとても面白い。

参照:松岡正剛の千夜千冊『ノンちゃん雲に乗る』石井桃子(極私的だがわかりやすい本の紹介)
   私のファンタジー:石井桃子「ノンちゃん雲にのる」(後半に批判も紹介されている)


しかし、雲のおじいさんの「〜じゃよ」が良かったのは、白い髭を生やしているというビジュアルイメージがあったからだろう。「ナウシカ」のおじいさん達も髭生やしてた。


髭さえあったらな‥‥。



※別の「じゃよ」
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://d.hatena.ne.jp/ohnosakiko/20071114%231195045815
神聖モテモテ王国なんて知らないもん。宇宙人なの?お髭ふさふさじゃなきゃイヤ。