マンガ・アニメ

ジェンダー平等社会のエロの位相、あるいは欲望と配慮の関係

男性向けポルノや少年誌のエロ表現関連の話題について、twitterでずっと呟いていましたが、今の時点での自分の考察(仮説)をざっとまとめました。昨日、連ツイしたものに大幅加筆しています。 ● 女性への暴力的な性行為が快楽的に描かれるヘテロ男性向けポ…

近代文学が終わった後の『文豪とアルケミスト』

文豪とアルケミストと小林多喜二と日本共産党 - Togetterまとめ 『文豪とアルケミスト』というオンラインゲームで、近代文学の小説家(が現代に転生したもの)がキャラとして多数登場している中に小林多喜二も含まれており、それについて新聞『赤旗』が好意…

教える者と教わる者は出会えない‥‥漫画『かくかくしかじか』を読んで

将来の夢は漫画家でやたら自己評価の高かった能天気な宮崎県の女子高生、林明子(作者、東村アキコ自身)は、美大受験のため友人に誘われて行った絵画教室で、ジャージ姿に竹刀を持った鬼のような日高先生に、肥大し過ぎた自意識を木っ端みじんに叩き潰され…

『アナと雪の女王』にかかったジェンダー観の砂糖衣

「過去、女性は素晴らしい能力があっても、それが”幸せな結婚”に結び付くものでなければ女として生きるのに余計なものであるとして、発揮する機会を奪われてきた。女性の生き方として賞揚されてきたのは、生まれて初めて出会った異性と恋に落ち、一生の愛を…

菜穂子の油絵と1920〜30年代の美術 - ジブリ『風立ちぬ』より

前記事のコメント欄のやりとりから。 >私は美術大学なので、友人もみな菜穂子の絵にばっちり注目して「めっちゃフォービズムだった」などと話しているものですから 私も、ちょっとだけ映った菜穂子の絵、かなりアヴァンギャルドで気になりました。ブラマン…

「『風立ちぬ』戦争と日本人 - 宮崎駿 × 半藤一利」雑感

菜穂子がキャンバスの上に喀血した時の妙に粘性の高い血液と、二郎が設計した飛行機に乗って浴びる逆噴射した黒いオイルは、同じものだ。いくら洗っても取れないよ‥‥。 4日前に観た『風立ちぬ』にいまだにモヤモヤして*1、仕事のレポート採点やるのがしんど…

「男の子」は高いところばかり見ている(あるいは昔、飛行機乗りだった父へ)‥‥『風立ちぬ』感想

”ほっこり感動系の泣けるイイ映画”ではない。もうやりたい放題。すさまじいエゴの嵐。それを「だって仕方ないでしょ、美しいものが好きなんだもん」でぐいぐい押していく。ワクワクするようなドラマの面白さもない。観ている間中、不快だった(いい意味で)…

学歴と絵の才能はあまり関係ない(けど少しはある)

最近一部で話題になっていた件について。 やはり有村悠さんは15年前に東大に現役合格したという頭脳が足枷になっている。やらおんくらいの低知能なら、黙々と絵を描き続け、絵心がないながらも線だけは綺麗に引けただろう。東大に入れたのだからついでに絵…

彼女の顔には細部がない・・・アニメの中の描写の落差について

(※長めの追記をしました) 『借りぐらしのアリエッティ』のDVDを借りてきて見ていた時のこと。 室内の描写が凝っている。その部屋の中に登場人物が入ってきたところで、覚えのある違和感が。写実的な背景と、非写実的な人物が、不釣り合いに感じる。まるで…

魔法の髪の処女 - 『塔の上のラプンツェル』

©Disney Enterprises,Inc. 公開中の『塔の上のラプンツェル』(原題:Tangled) を観てきた。(以下ネタばれあり) ディズニーアニメ50作目、初の3D作品。母親に束縛されていた女の子の自立の物語。 「母」を裏切ることへの罪悪感と、外の世界への強い憧れの間…

中村翫右衛門はルパン三世

山中貞雄(1909〜1938)の残存する三本のフィルムのうちの二本、『河内山宗俊』(1936)と先日取り上げた『人情紙風船』(1937)に、河原崎長十郎と中村翫右衛門のコンビが出演しているのだが、先日からDVDを見直していて思うのは、中村翫右衛門がルパン三世に似て…

『オートマミー』(2000、SVAT THEATER)再見

■ストーリー 子育てを面倒に思った両親は通信販売で購入した育児ロボット「オートマミー」で わが子を隔離して育てていた。 ある日両親がモニターでチェックしてみると...。 ■スタッフ 監督・脚本・撮影 / 中田秀人 造型技術 / 松尾憲樹、細井浩和、藤原純子…

罪悪感と復讐心

毎年、ジェンダー入門の授業で『風の谷のナウシカ』を見せて感想や意見を書かせている。7割くらいの学生がアニメは見たことがあるが、そのうちの半分以上は子供の頃であまりしっかり覚えておらず、漫画も読んだという学生は非常に少ない。そういう中で、今…

股間を描け(前記事の続き)

三次元ヌードへの拒否反応について、アニメ云々に限らず、初めて女性ヌードを描くという状況に(若さゆえに)緊張して気分が悪くなったのでは?という意見が散見された。 そういうことは確かにあると思う。私の経験でもコースを問わず、始まるまでは騒いだり…

三次元ヌードへの拒否反応

今日のデザイン専門学校のデッサンの授業は、ヌードクロッキーだった。私の行っている学校では、全コースの一年生が一度はヌードクロッキーをすることになっている。美術系のヌードモデルをしているベテランのモデルさんが、毎年来る。彼女から、アニメ専門…

「じゃよ」について考えてみたんじゃよ(もうやめれ!)

語尾を改変するのがあまり評判良くないので、通常に戻ります。まあお遊びだったんですけども。「じゃよ」と「ナリ」に集中してスターつけてる人が、約一名いました。ウケて下さったのでしょうか。 なんでお爺さんの言葉になったか?で、思い当たることがあっ…

『美しき町』の美しき諦観

恋愛結婚とお見合い結婚 天才マンガ家高野文子の作品集『棒がいっぽん』には、『美しき町』という短編が収録されている。棒がいっぽん (MAG COMICS)作者:高野 文子マガジンハウスAmazon 時代はおそらく、昭和三十年代の終わりか四十年代の始め頃。工場労働者…

日本の純愛史 9 純愛の挫折 -70年代(2)

七十年代のテレビドラマではホームドラマと学園青春ものが全盛となり、いわゆる純愛ものは映画でもドラマでも次第に廃れていく。 二人だけの世界から、おうちや学校に復帰しよう。純愛ってちょっと重過ぎるし、雪山で心中なんて暗過ぎるし‥‥。まだテレビが一…

飛ぶ少女 - 天使達と「戦闘美少女」

宮崎駿のアニメーション作品においては、これまで頻繁に「空を飛ぶ少女の身体」が物語の核となって登場してきた。80年代以降、日本のアニメにあまた現れる空を飛び闘う美少女の原形、元祖は、宮崎駿監督作品『風の谷のナウシカ』(1984)のヒロイン、ナウシ…