現実よりも心的現実に真実が宿る『ブラック・スワン』(連載更新されています)

「シネマの女は最後に微笑む」第59回は、「自粛要請」の二律背反を枕に、ナタリー・ポートマン主演の『ブラック・スワン』(2010)を取り上げています。

 

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現実と心的現実(幻覚)が交錯して描かれるこの作品、後者に焦点を当てて振り返ってみました。なぜなら、この作品が伝えたかったことは、心的現実において読み取るべきだと思うからです。

現実に起こった出来事の方を見れば悲劇的なラストですが、ニナの心的現実においてはそうではないのです。連載タイトルではないですが、彼女が「最後に微笑む」のもそのためです。

 

今回改めてDVDで観直しましたが、この時期のナタリー・ポートマンでなければ演じられなかっただろうと思うくらい、ハマっていますね。

 

ところでこの連載は、冒頭に時事ネタか季節ネタを入れることになっており、編集部からは「いつもネタ振りから映画への導入が見事」とお褒めの言葉を頂いているのですが、ここのところニュースはコロナ一色なので、どう繋げるかで苦心しています。

今回は実はちょっと無理しました。

 

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「偶然」に翻弄される女の過酷な運命『題名のない子守唄』(連載、更新されました)

「シネマの女は最後に微笑む」第58回は、ニュー・シネマ・パラダイス』や『海の上のピアニスト』で有名なジュゼッペ・トルナトーレ監督の、『題名のない子守唄』(2006)を取り上げています。

 

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2007年のヨーロッパ映画賞とイタリア・アカデミー賞において数々の賞を受賞した佳作。強制売春や子供の売買を行う闇組織から逃げ出した女性のヒューマン・ミステリーです。

性暴力シーンなど残酷な場面があるので日本ではR-15指定ですが、最後まで少しずつ予想を裏切っていく展開に引き込まれます。過去と現在が行き来する脚本も素晴らしい。

 

ヒロインがすがった希望が皮肉にもまったくの偶然であり、偶然によって彼女の行動が決定され運命が翻弄されていくところ、そして喪失の後に思いがけない贈与があるところは、以前取り上げた邦画『よこがお』とも似ています。

ミステリーですので最後の方はボカして書いています。ラストで私は泣きました。

 

 

パンデミック映画にして女性映画『コンテイジョン』(連載、更新されました)

お知らせ遅くなりました! 「シネマの女は最後に微笑む」第57回は、新型コロナウイルスの感染拡大を前フリに、『コンテイジョン』(スティーブン・ソダーバーグ監督、2011)を取り上げています。

 

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コンテイジョンとは接触感染という意味。先月からネットの一部では話題になっていました。

パンデミックを主題にした映画としては若干地味かもしれませんが、その分リアルです。特に「今」こそリアルに感じられる作品だと思うので、おうちにこもりがちの皆さんは是非どうぞ。

 

俳優陣がびっくりするほど豪華です。グウィネス・パルトロウマリオン・コティヤールマット・デイモンジュード・ロウケイト・ウィンスレットも、主役級の俳優が群像劇の一人として登場します。

興味深いのは、良い面でも悪い面でも女性が重要な役を担わされているということです。

パンドラの箱よろしく意図せずに災厄を振りまいてしまうのも女、戦うのも女、犠牲になるのも守られるのも女。男性は「正義の人」か「悪党」。

これは明らかに意図された「女性映画」でしょうね。

 

 

イタい女のイタい話と言えばまずこれ『ヤング≒アダルト』(連載更新しました)

「シネマの女は最後に微笑む」第56回は、シャーリーズ・セロンが主演した『ヤング≒アダルト』を取り上げています。

2011年の作品、結構話題になったのでご覧になった方は多いのではないでしょうか。是非、無料会員に登録してどうぞ。

 

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途中で、ジュリア・ロバーツ主演の『ベスト・フレンズ・ウェディング』と比較してます。

ベスト・フレンズ・ウェディング』については以前こちらで書きました。自筆イラスト付きです。

https://www.cyzowoman.com/2016/06/post_20652_1.html

 

 

毎回、時事ネタや季節ネタなど前振りを書くことになっているのですが、今回はちょっと厳しかったですね。かなりこじつけてますので。

正直に言うと、ストック原稿です。前振りのネタに関わらず、いつでも出せる原稿を用意しています。そこに無理して最近の話題を乗せました。

今ならどう考えても話題は新型コロナウイルスで、パンデミックを主題にしてなおかつ女性が活躍する映画を取り上げるべきでしょうが、今回の締め切りは17日だったのでちょっと出しそびれたのです。。

 

次回の連載は3月14日。もう感染拡大は終息に向かっているでしょうか。それともまだでしょうか‥‥。

いずれにしても次は、パンデミック映画を取り上げます。『コンテイジョン』(スティーブン・ソダーバーグ監督、2011)です。今こそ再見したい作品として、ツイッターの一部で話題になってますね。

ほぼネタバレありで書きますので、未見の方はDVDをチェックしておいてくださいませ。

 

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撒いてしまった種をどのように引き受けるか ‥‥『よこがお』(「シネマの女は最後に微笑む」更新)

いつものように、お知らせ遅くなりました‥‥。

 

連載「シネマの女は最後に微笑む」第55回は、筒井真理子主演『よこがお』(深田晃司監督、2019)を取り上げてます。

観た後いつまでも胸がざわざわする傑作ですね。映画の途中でわかるネタバレについては直接触れないように書いていますが、普通に読んでいくと何となくわかります。でもわかっても、観る価値はあります。ストーリーは大切ですが、それは映画の一要素に過ぎないということを改めて感じる作品です。

「無料会員」登録で全文読める形式となっています。どうぞよろしく。

 

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タイトルの「「無実の加害者」にされた女の絶望と復讐、そして昇華」はあまり捻りがないですが、判りやすさ優先でつけました。「昇華」はかなり踏み込んだ解釈なので、意見が分かれるかもしれません。

同監督の『淵に立つ』(2016)も似たモチーフを扱っており、テーマは「撒いてしまった種をどのように引き受けるか」です。

 

共演は市川実日子。『シン・ゴジラ』を彷彿とさせる化粧気のなさで、難しい役を演じています。

池松壮亮は、中年女の誘惑に易々と乗る内面の見えにくい青年を好演して、宮沢りえと共演した『紙の月』の役柄を思い出させます。

しかし何と言っても主演の筒井真理子がいい。素晴らしいの一言。

 

人生を奪われたという重すぎる事実と比べると、市子(筒井)の復讐があまりにもささやかではないか?という印象もあります。

しかし考えてみれば、彼女の立場ではこれくらいしかやりようがないのですよね。そういう意味ではむしろ悲しいものがあって、そのあたりが狙いなのかもしれないとも。

 

一点気になったところは、最後の方で市子が甥の辰夫と共に大石家を訪ねる場面。これは相手方の心情を考えると、いきなり行ってはいけないですね。もちろん会えないことは前提の上で、辰夫の気持ちを慮ってのことだったのかもしれません。それは市子の優しさなのでしょう。

 

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答えに人より早く辿り着く元・天才児が人間関係の答えで右往左往(「シネマの女は最後に微笑む」更新されています)

連載「シネマの女は最後に微笑む」第54回は、『マイ・プレシャス・リスト』(スーザン・ジョンソン監督、2016)を取り上げています。『Gifted/ギフテッド』(マーク・ウェブ監督、2017)も同じく天才児を扱った作品でしたが、こちらはその天才児の行く末としてより当人に焦点を当てたもの。頭が良すぎるために周囲と軋轢を起こす少女の成長物語。

 

 

 

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主人公を演じるベル・パウリーがキュート。所詮は、そこそこお金持ちのお嬢さんで自分の頭脳の使い途がわからなかった人の自分探しだよね‥‥という見方ができなくもない設定を、本人の少し天然の入った三枚目なキャラでうまくカバーしています。

 

彼女を取り巻く大人たちもそれぞれの問題を抱えているというわかりやすい構図ですが、この作品から読み取れる個人的に最大のポイントは、「室内で男と向かい合っていても何も始まらない。それより窓の外で何かやってるうるさい奴に注目せよ」です。

 

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ダイアン・キートンいいよねぇ、安定の良さです、作品も上質です(「シネマの女は最後に微笑む」更新されてます)

いやー忘れてた忘れてた。すみません。あけましておめでとうございます。先週末に更新された連載のお知らせです。

 

「シネマの女は最後に微笑む」第53回は、ダイアン・キートンモーガン・フリーマンが共演した『ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります』(2014)。アパートの住まいを売りに出した初老夫婦のコメディです。比較的小粒な作品ですが、主演二人の安定感に加え、風刺も効いていてなかなかの佳作。

 

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まだ売り手が住んでいる最中から、内覧会で買い手候補に家の隅々まで見せる場面がありますが、これは欧米特有のものでしょうか。

日本では、持ち主が出て行った後の家具も何もないガランとした家を見学するケースの方が、多いのではないかと思います。プライベートな状況をいきなり他人に見られたくない人が多そう。

 

実は私も、引っ越し前に住んでいた古い家と土地を売りに出しています。まあ家の価値はもうないので土地だけですが、田舎町なので売れないですねぇ。1年待ちましたが、問い合わせはあってもなかなか。

そろそろ家を壊して更地にし、それでもダメなら格安で不動産屋さんに買い取ってもらうしかないと考え中。

 

しかしダイアン・キートン、『アニー・ホール』の頃から好きですが、息の長い女優さんになったなぁとつくづく嬉しいです。いつも伸び伸びした自由な雰囲気をまとっているところが素敵です。

昔、インテリア雑誌でダイアン・キートンの私邸が紹介されていたのを見ました。広いのは当たり前として、飾り気のないミニマルアートみたいな四角いテーブルがゆったりおおらかな空気を醸し出していて、本人のコメントが「なんでも四角くて大きくて気持ちいい」とあったのが、とても”らしい”と思いました。

 

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