なぜ中学生で子供を作ってはいけないのか

セックス可能なからだ

「男子にはなれない」第8回の最後の方で、「(避妊なしのセックス)→妊娠→中絶間に合わない→高校中途退学&できちゃった婚→生活苦」ということを書いた。セーフセックスを若者に勧めるのに、そういうイメージを与えるのも効果的であろうと。
しかし考えてみると、別に子どもができたからと言って高校を退学したり、結婚しなければならないことはない。「妊娠、出産した者は退学処分とする」などという校則を掲げている高校はあるのだろうか? あるとしたら問題だ。


たとえば、中学しか出てない大人が高校で勉強したいと思って入学してきて、在学中に妊娠、出産したとして、その人を退学処分にできるかと言ったらできないはずである。
大学だったら在学中に出産したという話はあるだろう(私も在学中、下級生(既婚)の一人がそうだった)から、高校ではダメということはない。
そして、中学でもダメということは原理的にないはずである。


男子は中学に入る頃には、ほぼみんな精通を経験している。女子の多くも生理が始まる。そして性欲もちゃんとある。私など、自分の性欲をはっきり自覚したのは、小学校4年くらいのことだった(遅い方かもしれない)。
つまり、13〜4歳では、男女とも多くの子供が心身ともに、セックス可能な状態になっているということである。だから自然のままにしておいたら、したい相手とセックスして女子が妊娠することもあり得る。
昔はそのくらいで妊娠、出産した女の子も結構いただろうし、今でも避妊の知識が行き届いていない発展途上国や子供の自立が早い地域では、14歳くらいで子どもを産んでいる女の子は普通にいるだろう(望まない妊娠も多いだろうが)。


では、なぜ中学生はセックスしてはいけないのか。セックスというものを知り、そのことで頭が一杯なようでは、勉強に差し支えるから? でも知らなくても、頭いっぱいだと思う。知らないから余計に頭いっぱいになるということもある(私はそうだった)。
学生という立場を根拠にして、「セックスするな」ということは、たとえ中学生に対してでも言えないはずである。セックスした結果がどうなるのか、そのことをちゃんと知っていて、お互いにしたい意思を確認すれば、中学生でもセックスしていいのでは。


大人だったらセックスとその他のことを両立できて、中学生だったらできないというのは、大人の一方的な思い込みではないか。
中学生は経済的に自立できないのがネックだが、心身ともに、もう半分は大人だ。赤ちゃんがどうやったらできるのかも知っているし、セックスというのはなんかすごく気持ち良さそうなことだということも、なんとなく知っている。
セックスした相手との個人的関係に埋没して、社会性が育成できないというのも、大人の思い上がりではないか。大人だって、家庭や狭い共同体だけに引きこもって社会性のない者は、いくらでもいよう。


妊娠したら困るから、もし産んでも自分たちで育てられないから、すべきではない? 回りの人が助ければ、育てられるのではないか。
中学生では結婚できない? だからと言って、子供を産んでいけないということはない。もし結婚したければ、男子が18歳、女子が16歳になるまで待って結婚すればいい。


本人が(今はまだ)産みたくないと思っていたら、セーフセックスの知識をきちんと教えなくてはならない。でも、相手の男の子とずっと一緒にいたいと思っていて、二人とも子供が欲しく二人で育てたいと思ったら、中学生で作っていけないという決まりはない。
相手と愛し合って、しかも二人の子供も欲しいと思う大人の気持ちと、中2の男子女子のそういう気持ちと、根本的なところでそう変わりはないと思う。

中学生の父と母

仮に、中2の男子と女子が相思相愛の仲になり、セックスもするようになり、二人の子どもが欲しいと思ったとする。そして女子は妊娠し、出産したとする。
出産時とその後しばらく(数週間)は、女子は学校には行けないだろう。だから、男子や学校の友達が、勉強を教えに女子の家に来る。
赤ちゃんはあまり環境を変えると良くないから、とりあえず女子の家で親と女子で面倒を見る。もちろん相手の男子も(できれば男子の親も)、育児を手伝う。男子が女子の家に住めれば、一緒に住んだ方がいいかもしれない。昼間の育児に関しては、0歳児保育というのもある。


親が共稼ぎで0歳児保育も近くになく、誰にも育児を頼むことができない場合、赤ちゃんの首が座るようになったら、女子と男子は学校に子供を連れていってもいい。
もちろんいつ泣き出すかわからない赤子を背負ったまま、授業を受けることはできないので、授業中は保健室に預ける。保健の先生はじめ、育児経験のある教師がかわりばんこに面倒を見てあげる。
登校時も下校時も親が車などで送り迎えできない時は、男子はじめ友達が女子と赤ちゃんを守って登下校する。


それでも、女子だけが赤ちゃんと一緒に暮らしていた場合、彼女の方が育児に時間をとられて、勉強もクラブ活動もやっている暇がなくなるのは当然だろう。男子は頑張って勉強して進学できたとしても、女子は中学卒業がやっとかもしれない。
もし二人で平等にと考えるなら、二人とも高校進学は一時諦めて、協力して育児に専念するという考え方もある。高校の卒業資格は、通信教育や夜学でも取れる。
中学の卒業資格を取る(登校拒否や様々な理由で、校長が卒業証書を出さないケースは結構あるらしい)、中学卒業検定試験もある。また、高校に行けなくても後で大学に進学したいと思えば、大検がある。


そういうことを、親をはじめとして学校や周囲の人々が、二人を信頼し応援し協力を惜しまないことが大事だ。二人が経済的に自立できるまでは。それをみんなで本当にやろうと思ったら、できるのではないだろうか。


セックスは楽しみたいが、子どもは欲しくないという人の気持ちは尊重されるべきだ。そして子どもが欲しいという人の気持ちも、尊重されるべきだ。たとえそれが中学生であっても。
中学生であっても、人を真剣に愛したり、その人とのことすべてを引き受けたいと思う気持ちはもてるはずだ。というか、そういう気持ちを育てるのが教育だ。「高校生以下の性行為は認めない」(中教審)というのは間違っている。


中学生だってセックスしていい。セーフセックスだったら。
そして中学生だって子どもを作っていい。「その後」に二人で責任を負っていきたいと考えているのなら。
もちろんそこまで考えられる中学生は、希少だろう。自分はまだ子どものつもりで、「まだ遊びたいのに、子どもなんかとんでもないや」というのが、多くの中学生の実感かもしれない(それは大人も同じだ)。
しかし、変わったやつがいないとも限らない。それが大人から見たら幼い考えであっても、一刀両断に否定してはいけないと思う。


●07/11/24追記
私は中学生のセックスも出産も否定しない(できない)。そこにつけられる社会的条件の中身について考えることで、子どもの閉塞的な状況や社会の性規範や秩序について再考できないかと思って書いたのだが、セックスと出産・育児とをごっちゃにして書いている点や、単にポジティブな仮説で終わっている点や周囲の環境のみで社会に言及してない点、中学生の援助交際のケースに触れてない点など、結果的にはかなり中途半端で問題を残した記事だったと思っている。前のOhnoblogでアップした当時はかなり異論、批判のコメントがあった(こちらにコメの移動はできなかった)。