2020年の在名古屋米国領事館前ビラ撒き事件から始まったある救援活動をまとめた『自称・救援ノート』発売中です。

『自称・救援ノート 救援される前に読んどく本』が刊行されました。私は執筆と編集で関わっています。BOOTHで冊子概要と目次を公開していますので、是非ご覧ください。https://jisyokyuennote.booth.pm/items/5270402

 

 

「自称」とは「自称・救援会」から来ており、「自称・救援会」は当時救援対象だった「自称・室伏良平」に倣っています。
活動家のハンドブックとして歴史の長い冊子『救援ノート』と似たタイトル・外見にしたのは、パロディではありません。当該本が担ってきた役割を評価しつつも、それが基盤としている左派の運動の構えとは距離を置き、別の視点を提示しようとする我々のスタンスを示すものです。
今回、初公開の情報が多いので、一連の事件や救援活動についてTwitterなどで概略は知っていたという方も、是非「はじめに」から順を追って読まれることをお勧めします。


【参照】発売中の雑誌『情況』2023秋号に掲載の拙テキスト『「ヒステリーの言説」を超えてーある救援活動の総括』内で、「はじめに」の全文公開をしています。

 

『自称・救援ノート』を出す目的は以下です。
1. これまでいろいろな事情で伏せざるを得なかった(そのために自称・救援会は様々な誤解を受けてきた)情報をすべて公にし、そこにあった問題を問う。
2. 左派系の救援、ひいては運動の”常識”というものから距離を置いている我々の姿勢、考え方を示す。

自称・救援会メンバーの立場は右から左まで様々でしたが、当冊子の執筆者も同様に様々です。我々はあるポリティカルな問題意識のみで繋がっています。そして、左右を超えてオルタナティブな活動と思想に関心のある人々に、この冊子が広く読まれることを願っております。どうぞよろしくお願い致します!


【委託書店】 
模索舎(新宿)  
Bar&イベントスペース ミズサー(新宿)
タコシェ(中野)
特殊書店Bibliomania(栄)
人文書籍ウニタ書店(今池) ※名古屋の書店には29日頃から並ぶ予定です。
【詳細】
408ページ・1500円(税込)

https://twitter.com/zisyokyuen2023

 

『赤ちゃんに乾杯!』の赤ちゃんの位相とは(連載更新されました)

「シネマの男 父なき時代のファーザーシップ」第23回は、独身の男三人が降って湧いた育児にドタバタする『赤ちゃんに乾杯!』(コリーヌ・セロー監督、1985)を取り上げてます。二年後にアメリカで『スリーメン&ベイビー』としてリメイクされたヒット・コメディ。

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冒頭はパーティ・シーンですが、幼児の横顔が描かれた絵画が映されている(それを見ている人はいない)ところから始まるのが、なかなか意味深です。
大きな家なのかなと思って見ていると、三人の男性が広いアパルトマンをシェアして住んでいる、ということがわかります。ここで、後々の展開に大きな影響を及ぼす重要な契機がさりげなく描かれるので、要注意。
それにしても、欧米の自宅パーティの場面、いろんな映画でよく見ますが、たくさんの人がリビングやテラスや廊下で飲みながら立ち話してるかと思えば、誰かをくどいていたり、たまに二階のベッドルームでセックスしてたり、カオスだなぁといつも感心します。日本でも六本木ヒルズとかの超高層マンションでは、そういうことが毎晩行われているんでしょうかね‥‥(←想像力が貧困)。

作品に戻ります。ジワジワと助走をつけるように面白くなっていき、お約束だなと思うところもありながらも、麻薬が絡んできてからはサスペンスフルな展開に。いろいろなエピソードをうまく捌いて見せているところは、同監督のこれも大ヒット作『女はみんな生きている』(2001)を思い起こさせます。

マリーという名の赤ちゃんがすごくカワイイ。赤ちゃん俳優は2、3人いる模様。テキスト後半では、ドラマにおける赤ちゃんとは?という考察をしています。

 

さて、連載最終回になります次回は、往年の名作『素晴らしき哉、人生!』(フランク・キャプラ監督、1946)を取り上げます。お楽しみに!

古田新太×松坂桃李『空白』における「暴力」(連載更新)

「シネマの男 父なき時代のファーザーシップ」第22回は、古田新太松坂桃李が共演した『空白』を取り上げています。

 

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突然の交通事故で娘を失い、タガの外れていく父親。もともと横暴な面のある彼の目につきやすい「暴力」性はやがて、周囲で起こってくるより厄介で根の深いさまざまな「暴力」の中で、むしろ小さな嵐のように見えてきます。

古田新太、なかなか迫力のあるブチギレ親父を熱演していますが、何というか古田さん自身の元々の人の良さみたいなものが、たまーに台詞の端っこに出ている。それに気づくと、キレててもあまり怖くない(笑)。

少し不器用で鬱屈を抱えていて、しかし真面目に頑張ろうとはしている、どこにでもいそうな普通の青年を見事に演じ切った松坂桃李は、改めて優れた俳優さんだなと思いました。
寺島しのぶの演じるやたら元気なおばさんが、じわじわと面倒臭い感じを表に出してくるのがまたリアルです。いますね‥‥こういう人。

ドラマとしてはあまりにツラい展開で、取り返しのつかない感は強いのだけど、最後にほんの少しの救いが示されています。おすすめ。

 

次回は『赤ちゃんに乾杯!』(コリーヌ・セロー監督、1985)を取り上げます。独身の三人の男が突然現れた赤ん坊の世話にてんてこまいとなるコメディで、ハリウッドでリメイクもされているヒット作。11月18日(土)更新です。

 

綿野恵太×大野左紀子「Twitterから考えるアンチ○○の未来」オンライン対談、まだ視聴できます

ここでの告知を忘れてましたが!
先週土曜に綿野恵太さんとのオンライン対談がありました。

綿野さんの『「逆張り」の研究』についての私の感想と質問、それに対するお答えから始まり、震災以後のTwitterの雰囲気、現象、そこに見られたものとは何か?について伺っていく、という展開です。かつてのはてなダイアリーの頃の「非モテ論壇」にも少しだけ言及しています。

いろんな意味で”終焉”が囁かれるTwitter(今はXと言うそうですが)のこの10年余りを振り返りつつ、リベラル/アンチリベラル、フェミニスト/アンチフェミの二項対立から抜け出す道について語り合っています。

アーカイブの購入、視聴は、10月7日まで可能です。

どうぞよろしくお願い致します!

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youtubeで冒頭20分が無料です!(最初私の凡ミスでトラブってますが)

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父には『家族を想うとき』なんかなかった(連載更新しました)

「シネマの男 父なき時代のファーザーシップ」第21回は、ケン・ローチ監督の『家族を想うとき』(2019)を取り上げてます。

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原題は「Sorry We Missed You」(ご不在につき失礼します)。邦題からは思いもよらない”宅配の地獄”が描かれています。
しかしこの邦題、もうちょっと何とかならなかったのか?と思います。確かに、主人公には「家族を想う」気持ちがあって過酷な労働に駆り出されていくのですが、働き始めたらそんなことを想ってるような余裕がない。とにかく余裕がないことで軋みが生まれ、悲劇の引き金になっていくのです。

 

実際に起こった事故をヒントに作られたドラマです。淡々と事実を積み上げていく無駄のない演出もいいですが、役者がみんなハマってます。特に、長男セブを演じるリス・ストーンがすごくいいんですよね。イギリスの労働者階級の少し屈折した少年の感じがリアルです。
イラストは、主演の父親リッキー役のクリス・ヒッチェンの顔。公式サイトによれば「配管工として20年以上働いたのち、40歳を過ぎてから演技の道」に入った人だそう。

 

次回は、古田新太松坂桃李が共演した『空白』(𠮷田恵輔監督、2021)を取り上げます。ForbesJapanにて10月21日(土)18:00の公開です。

 

父親未満の青年と母を失った少女・・・『アマンダと僕』

告知がまた遅れましたね、スミマセン。

「シネマの男 父なき時代のファーザーシップ」第20回は、フランス映画『アマンダと僕』(ミカエル・アース監督、2018)を取り上げています。

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パリが舞台。初夏のパリの街の雰囲気が画面いっぱいに伝わってきて、見ていて心地よいです。
「僕」であるダヴィッドを演じるヴァンサン・ラコストも、優しくてごく普通の青年を好演。そしてアマンダ役の少女が、じわじわと来る良さ。以下、本文より抜粋します。

 

特筆すべきは、監督に見出され本作でスクリーンデビューしたイゾール・ミュルトリエの演じる、アマンダの存在感だ。あどけなさとやや大人びたところが混じる表情、日に焼けてはちきれそうに健康そのものの体躯。ハリウッド映画なら人形みたいに可愛く華奢な子役を持ってきそうなところだが、ベタついた愛らしさが希薄なアマンダには、ごく普通の小学生のリアリティが漂っている。
主な登場人物はダヴィッドを始めとして痩せ型のひょろひょろした大人が多い中、アマンダは小さいながらもどっしりとした存在感を放つ。事件以降、決定的な「重さ」としてダヴィッドの心と生活にのしかかってくるアマンダの主体の強さを際立たせるためにも、生命力溢れる体型の少女が選ばれたのではないだろうか。


後半は、二人のズレの描写に注目してみました。テニスの観戦シーン、本当に秀逸です。未見の方は是非。

次回は、ケン・ローチ監督の『家族を想うとき』(2019)を取り上げます。9月16日(土)午後6時の更新です。お楽しみに。

 

「シネマの男」第12回は、シェフが息子と旅する美味しい映画

あまりの暑さにこちらの更新を忘れていました。。
「シネマの男」第19回は、ジョン・ファブローが監督、脚本、主演を務めたコメディドラマ『シェフ 三つ星フードトラック始めました』(2014)を取り上げています。

 

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配役、役者の名はテキスト内に全部記していませんが、なにげに豪華です。中でもコロンビア出身の個性派ジョン・レグィザモが好演。

SNSが重要なモチーフの一つで、画面にツイートが飛び交ったりと「今風」の作りになっていますが、親子のテーマは極めて古典的と言えるでしょう。
そして、全編を彩る中南米ソウルフードとラテンミュージック! ダイキリマルガリータが飲みたくなります。お腹が空くのでおつまみも用意してどうぞ。


次回は『アマンダと僕』(ミカエル・アース監督、2018)を取り上げます。パリで起きた無差別殺傷事件を背景に、事件で姉を亡くした青年と、母を失った幼い姪の関係を描いた作品。8月第三土曜日午後6時の更新です。